7 将軍一家
畳に布団を敷いてもらい、ダリアと隣に並んで眠りにつく。
こうして誰かと並んで寝るなんて小さい頃以来だとはしゃいでいたダリアは、緊張の糸が切れたのか間もなく寝息を立てだした。
「イベリス姫」
微かな声が聞こえて、そっと布団から体を起こす。
障子の向こうに影が映った。
ダリアを起こさないようにそろりとその場を離れる。
部屋の外に出ると、うっすら雨戸が開けられていて外の風が吹き込んでいた。
冬らしくなってきた風に身を縮こませると、アルがどこからか持ってきたらしい半纏を肩にかけてくれた。
どこから持ってきたのかは……まあいいか。
アルなら上手くやるだろう。
「誰も居ない?」
「大丈夫です。夜間には近づかないようきつく言い聞かせてあります」
「……やっぱりアルのせいなのね。この屋敷の人達が委縮してるの」
「危険があるよりマシでしょう?」
「そうだけど……」
何の罪もない人々が怖がっているのは可哀想だ。
「権力者の相手をするんです。いくらか気を揉むのは当然のこと。委縮されることには慣れておいた方がいいですよ。貴女は一国の王女なのですから」
「……そうだけど……いや、そうね」
アルの言う通りなのかもしれない。
私は結局ほとんど身内の中で生きてきた。
王女としての振る舞いは今改めて勉強中なわけで、こうして過度に委縮したりへりくだる相手との接し方も今後学んでいかないといけないんだろう。
そう決意を新たにしていると、アルが物憂げな顔で庭を眺めているのに気が付いた。
部屋の外は内庭に面していて、椿の生垣や灯篭が並ぶ景色を楽しむことができる。
この庭が、何かアルには気に入らないのだろうか。
「懐かしいんですか?」
「え?」
「イベリス姫の前世は……竜胆国と文化が似ている。違いますか?」
息を呑んだ。
まさか気付かれているとは。
「あれだけ嬉しそうにしていれば分かりますよ。僕には異質に見えるこの国の文化も風景も、イベリス姫にとっては落ち着くものなんですね」
何故か落ち込んだような声色だ。
そっとアルの髪をなでると、驚いたように翡翠が丸くなった。
「……何です?」
「落ち込んでるみたいだったから」
そう答えると、アルはしばらく視線を彷徨わせた後、頭を私の胸に預けてもたれかかってきた。
「アル?」
「そうですね。少し……イベリス姫が僕とは遠い存在なんだと思い知った気がして」
「前世が全く違う人間だったのは、今更じゃない」
「そうなんですが……」
「前世の文化が違っても、今こうして一緒にいるのは変わらないわよ」
珍しく感傷的になっているらしいと判断して頭を撫でながらそう言い聞かせる。
特に何か異常の報告があるわけでも無いようだし、どうやらただ甘えたくて声をかけてきたようだ。
たまにこういう可愛いところを見せてくるのがたまらない。
私の胸に顔をうずめたまま、アルが上目遣いで私を見つめてきた。
……だから、それ破壊力高いんだってば。
私が動きを止めた隙に、下からそっと唇を奪われる。
「どこにも行かないでください。イベリス」
「……行かないよ」
子供がぐずるような懇願に、心臓がじくじく痛む。
こんな時、アルは本当に私が好きなんだなって……そんなことを実感してどうしようもない衝動に襲われるんだ。
それを抑え込むようにアルをぎゅっと抱きしめると、抗議するように背中を叩かれた。
「……貴女の胸に包まれるのはやぶさかではありませんが、流石に苦しいです」
「ご、ごめん」
「こんなにぎゅうぎゅう押し付けておきながら、僕が今触ったら怒るんでしょう?とんだ悪女です」
恨みがましい目で見られた。
酷い言い草だ。
だけど確かに今この場でそういう行為に及ぶのは無理だ。
人の屋敷だし、隣にはダリアもいることだし。
逃げ腰になる私を見て、アルは溜息をつく。
「明日の夜には将軍の城につくでしょう。ダリアとは別の部屋を用意させてありますから」
余計な一言を聞かされて、私はその晩寝つきが悪かった。
◆
翌日も牛車に揺られて街を出た後、しばらく森を切り開いたような道を進んでいった。
昼を過ぎるころにはまた街を取り囲む防壁が見えてきて、少し遠くに小高い山とお城らしき影も見える。
手前に広がる街はいわゆる城下町にあたるようで、初日に立ち寄ったところよりも奥行きは狭いものの、かなり横に長い街になっているようだった。
まっすぐ城下を通り抜けていくと、次第に建物が途切れて農地が広がる。
稲刈りの終わった田んぼらしき区画が見えると、これもまた懐かしかった。
しばらく同じ景色が続き、三十分もすると遠くにあった城がすぐそこというところまで来ていた。
あの区画が全部お城か……グラジオラスの城に比べると小さいけれど、そもそも国土に大きな差があるのだから当然かもしれない。
わずか百年の間にこれほどまで竜胆国に染まり、立派なお城が建造されているんだから十分凄い。
ちょうど城は切り立った崖に背を向けるような位置取りとなっている。
反対側は見晴らしのいい田園、周囲を取り巻く広い水堀と、高い石垣。
襲撃を想定した城塞が物々しい。
竜胆国がこの地に来た当時、周囲は敵だらけだったのだから戦を前提とした城なのは当然だろう。
むしろ敵だらけの状況でこんなお城をよく建てられたなと感心する。
よほど東大陸の援助が大きかったのだろうか。
虎口を抜けた後も、牛車はしばらく蛇行した坂道を登っていった。
徒歩だと結構大変そうな道のりだ。
鎧を着こんだ兵士がこちらを見張るようにして立っている。
この地に築城してから初めてのこの大陸の客なのだろうから、向こうだって緊張しているのだろう。
アルがいろいろやらかしたせいもあるかもしれない。
ピリピリした空気に息を呑んだ。
坂道が終わり、大きな門が見えてくる。
そこをくぐるとようやく建物が見え始めた。
手前に建っているものはおそらく兵士や使用人たちが使うような建物ばかりだろう。
城の主がこんな門の近くに住んでいるとは思えない。
左奥には一段高い場所にそびえる建物が見える。
天守閣っていうやつだろうか、観光地でよく見る奴だ。
しかし目的地はそこではなく、その手前にあるひと際大きなお屋敷だったらしい。
本丸御殿と呼ばれるそこが将軍たちの居城であり、私たちが招かれている場所なのだそうだ。
最初に『この国の正装を』と言われて着物に着替えさせられ、戸惑うダリアを引き連れていよいよ将軍との謁見に臨む。
見事な襖絵をいくつも隔てた一番奥で、大柄な壮年男性がこちらを見ていた。
ああ、こういう広間も時代劇とかで見たことがある。
お殿様が家臣を集めたりする場所でしょ、多分。
ということは一番奥に座っている人が将軍。
よく見ると、額に十字傷がある。
……あれか、アルがつけたやつ。
左右にずらりと並んだ人々は家臣達だろう。
険しい視線が私とダリアに向けられていた。
最も将軍に近い場所で、ただ一人座ることも無くその場に気だるげに立っている美男子がいる。
真っ黒な着流しを身にまとうその姿は、侍でもお殿様でもなくどっちかっていうと忍者っぽい。
もちろんこれがアルベルトだ。
たぶん将軍が勧めても頑なに正装を嫌がったんだろうなぁ。
「よくぞお越しいただきました。グラジオラス王国の王女殿下。城主、風月雪之丞と申します」
将軍がそう言って深々と頭を下げた。
まさかの態度に面食らう。
「殿!隣国の客人相手とはいえそのような弱腰では……」
「黙れ!ルアー様の大切なお客人である、控えよ!」
嗜めようとした家臣に向かって、それ以上の剣幕で将軍は言い返した。
その様子に、アルが満足げに頷く。
私とダリアは遠い場所で硬直したままだ。
ちなみにルアーというのは、アルベルトがこの国で名乗ったらしい偽名である。
アルベルトと名乗るといろいろ面倒そうだったから適当につけたとのことで、アルを逆にしただけの安直かつ、魚が食いつきそうなネーミングになっている。
何を釣り上げるつもりなんだろうか。
そしてなおも物腰の低い将軍から促されて、将軍の向かいに用意された座布団に座る。
家臣たちに挟まれるような場所なのでとても居心地が悪い。
グラジオラス王国の謁見の間も大臣や家臣がこうして左右に居並ぶ中、国王と対峙したりするけれど、この城の広間はそれよりずっと狭くて人同士の距離が近いので圧迫感がすごい。
ダリアはそれに加えて、未だに椅子のない場所に座るのが落ち着かないようでモゾモゾしていた。
もしかしてダリアの食が進まないのはそのあたりも関係しているのだろうか。
私たちが座って改めて自己紹介をすると、一区切りついたところで将軍は広間を見渡した。
「この場を借りて皆に改めて宣言する。儂は将軍の地位をルアー様にお譲りした。しかし!ルアー様のご意向を汲み、後継者の指名権のみお渡しし、しばらくは表に儂が立ち続けることとなった」
そうやって聞くとかなり無茶な話に思える。
家臣達もそう思ったようで、『そんな前例はない』とか『誰が将軍なのかわからない』だとか、ごもっともな意見が飛び出した。
ていうか、仮にも隣国から客が来ているのに、挨拶もそこそこに目の前でお家騒動繰り広げるのはどうなんだろうか。
ダリアが戸惑ったように何度もアイコンタクトを送ってくる。
ごめん、私にはどうしようも無いわ……
とりあえず黙っておくしかないと首を振った。
「静まれ!全てにおいて儂の上位にルアー様があると心得よ!ただし、ルアー様は将軍と呼ばれるのを嫌う。王子殿下とお呼びするように!」
「ですから以前も申しましたが、王子というのは何なのですか!」
本当に家臣のツッコミが尤もすぎてね……
全ての混乱の原因が私の恋人だと思うと申し訳ない気持ちになってくる。
「まあそうカリカリせずに」
そう言ったのは渦中のアルだ。
お前が言うなという視線が集中するけれど、アルはどこ吹く風。
「ご安心を。僕はこの座に長くついているつもりはありません。先代将軍の望み通り、後継者を指名するまでの暫定的な立場です」
「……して、後継者はどの者をお考えに?」
そして、みんなの視線が三人の人々に向けられる。
将軍の近くに座っていたその三人こそが候補者なのだろうとすぐにわかった。
まずは将軍の右前に居る人。
明らかにこの場に居る人々の中でも特に大柄な男性だった。
年は三十を超えているのだろうか。
肌は浅黒く、猛々しい顔つき。
立派な髭も生えていて、なんだか山賊みたい。
おそらくこの人が武力自慢の日野晴様。
ちなみにこの国にちょんまげ文化は無いようで、日野晴様の髪は普通の短髪だった。
将軍の左隣に座っているのが、長い髪を一つにまとめた細身の男性だ。
本当に兄弟なのか疑いたくなるほど顔立ちも体格も違う。
もしかしたら腹違いなのかもしれない。
中性的な顔立ちに眼鏡をかけた線の細いその男性が、頭がいいと言う春幸様だろう。
多分年齢は二十代くらいかな。
そしてその隣にいるたおやかな美人。
綺麗な黒髪を結い上げ、白いうなじが艶めかしい。
私よりは年上だろうけど、二十になるかどうかくらいじゃないだろうか。
彼女が雪音様なのだとしたら、求心力があるというのも納得だ。
見ているだけで守りたくなってしまうような不思議な魅力がある。
もちろん外見だけが理由では無いと思うけれど、女の私でこれなのだから、周囲の男性たちはなおさら彼女を支持する人も多いはず。
アルはどうなのだろうかとちょっと落ち着かなくなったけれど、彼の青い瞳はそもそも雪音様に向けられてすらいなかった。
「甲乙つけがたい候補者ばかりですからね。もう少し時間をいただきましょう。まずはイベリス姫を休ませてさしあげたいのでこの場は解散ということで」
スッとこちらに近付いて来たアルが私の手を取り立ち上がらせ、エスコートに入る。
ダリアも慌てて立ち上がった。
勝手に話を終わらせようとする王子様に、家臣達は大慌てだ。
「お待ちを、王子殿下!貴方様は一体何をもって後継者を選ばれるおつもりなのです!せめて最も重視することをお教えくだされ!」
誰かがそう叫んだ。
その声に、アルは顔だけで振り返ってこう言った。
「イベリス姫を敬うことですね」
馬鹿じゃないの。
あわやそう叫ぶところだった。
静まり返った部屋を背に、私は覚束ない足取りで手を引かれていく。
……もうダメ……この国での私の印象、絶対最悪だわ。
◆
「ダリア嬢はこちらの部屋をお使いください」
「あ、あの……イベリス王女様は……」
「イベリス姫にはあちらにある離れをご用意しています」
アルの言葉に、ダリアは何か言いたげだ。
こんな敵国にも等しい場所で、しかも訳のわからない事態を見せつけられて混乱しているに違いない。
できるだけ私と離れたく無いのだろう。
しかしこの得体の知れない王子相手に強く言うこともできないようだ。
「女中には丁重におもてなしするよう言いつけてありますので、無体な真似はありません。ご安心を」
部屋の傍に控えていた女中たちが神妙な顔で頷いた。
よーく言い含められているのだろう。
それを見て困った顔をしながら、ダリアは迷ったように視線を彷徨わせる。
言うべきことは言ったとばかりに私を連れてその場を離れようとするアルを見て、ダリアは慌てたように口を開いた。
「無礼を承知で一つお聞かせくださいませ!……アルベルトという少年をご存知ですか?」
……まあ、そうだよね。
あまりにも似てるもんね。
ていうか同一人物なんだけど。
「グラジオラスでよく聞く名前ですね」
にっこりそう返されて、ダリアは肩を落として黙った。
それ以上の問いかけが無いのを見て取って、アルは再度部屋に入るよう勧める。
「少しイベリス姫と話したいことがあります。しばらくお時間をください。その間、ダリア嬢もごゆっくりお過ごしを。女中はダリア嬢専属ですのでなんなりとご要望をお伝えください」
「はい……」
私のことを心配そうに見上げるダリアに、微笑んで『大丈夫』と小声で囁いた。
内心そんなに大丈夫じゃ無いけど、仕方ない。
可愛いダリアにこれ以上不安を与えるわけにはいかないんだから。
連れて行かれた離れは綺麗に整えられていて、けれど人払いでもされているのか誰もいなかった。
安心して文句を言うことができそうだ。
「どういうつもりなのよ……!私絶対反感買ってるじゃない!」
「大丈夫、僕ほどではありませんよ」
堂々と言うことか!
「アルはこの国をどうしたいのよ!?」
「いい質問ですね。僕も悩んでいます。どうしましょうか」
「悩んだ結果の行動があれならどうかしてるわ……」
「一応理由はあるんですよ。ここまですればどの派閥も何かしらの行動を起こすでしょう」
「そうね、たぶん私たちを排除しようとするんじゃないかしら」
後継者の条件を、自分のパートナーを敬うことなんて宣うトップは早々に引き摺り下ろした方が国のためだ。
私だってそう考える。
「ええ。その行動次第で後継者を決めようと思います」
「……どういうこと?」
「いくつかのケースが考えられますが……僕やイベリス姫の命を狙う、あるいは身柄の拘束を目論む輩について考えましょう」
しょっぱなから不穏だけれど、私もその行動をとる人はいる気がしている。
「これはひとまず実行者を全て始末します。イベリス姫が僕の大切な人だと言うことはしっかり明言しましたので、これに断固とした態度をとることは正当です。その反面、こういう強行策に出る輩は比較的扱いやすい。実行者は片づけるにしても、裏で糸を引くボスとは交渉の余地があるでしょう。暴力に物を言わせる人間はそれ以上の暴力に屈しますから。頭が悪いと再発の恐れがあるのですが、そこはそんなことを考えられないほどの恐怖を与え、こちらに従うのが得策だと体に覚えさせるしかありません。他に頼れる相手を見つけさせないことも重要ですね。そういうことがあれば簡単に寝返るので、孤立させないといけません」
笑顔で怖いことを言う。
「あるいは僕を懐柔しようとするケース。一番望ましいのはこれですね。交渉次第で互いに利益のある関係を築けるかもしれません。その陣営を取り立ててやる代わりに、イベリス姫の要求を呑んでもらいます。この選択をする場合はそれなりに頭の働く人間がいるはずですから、僕を敵に回せばどうなるかもきちんと理解しているでしょう。これで良い相手を見つけられるといいんですが」
「……色々考えてるのは分かったけど」
「ちなみにもう一つ、イベリス姫に取り入ろうとするケースもありますよ」
それは面倒……
確かにあの流れだと、後継者争いの鍵となるのが私だとみられる可能性は高い。
私と仲良くなって口添えしてもらいたいと考えるのは、まっとうな方法とも言える。
しかし、アルはそのケースへの対抗策を一言で片づけた。
「そいつらは殺します」
「えええ!?」
ある意味とても穏健派な気がするんですが!?
「僕の目を盗んでイベリス姫に接触しようとする輩は一番危険です。看過できません」
「接触しようとしただけで!?」
「どんな搦め手を使ってくるかわかりませんよ?暗器や毒を使った暗殺は防げますが、イベリス姫の油断を誘い、囲い込まれると僕は一番手を出しづらくなります」
アルは大真面目だ。
「……だとしても、すぐに殺すは無し!私に危険が及んだ時だけ!でないとそれは護衛じゃなくて暗殺者でしょ!」
「……事前に危険を払うのも護衛の役目で」
「殺すのは!やりすぎ!アルは暗殺者じゃなくて護衛!」
「今の僕は王子ですし」
「屁理屈言わないの!王子様にしろ護衛にしろ、簡単に人を殺さない!」
「……まあ、確かに線引きは必要ですか。護衛になると決めたのは僕ですしね」
自分に言い聞かせるようにそう口にしたアルは、渋々頷いた。
全く手のかかる……
「お疲れのようですね」
「誰のせいだと……」
「温泉がありますのでよければ使いますか?この国の人は好きなようですし、イベリス姫もお好きなのでは?」
「温泉っ!?」
昨晩もお風呂には浸かったけれど、それはただお湯を沸かしただけのもの。
もちろんそれでも十分だった。
しかし温泉という言葉に心惹かれるのは否めない。
「ええ、ただし浴場は外で、心許ない囲いがあるだけなんですが」
「露天風呂ってことね!?入りたいわ!」
「……他の人間は入れないようにはしますが……裸での入浴形式が一般的なんですよ?」
「分かってるわよ」
グラジオラスの人間の感覚からすれば、そんな環境で裸で入浴というのは有り得ないのだろう。
でも私にとっては慣れた入浴形式だ。
前世でもスーパー銭湯やら温泉やらは好きだった記憶がある。
しかし私の言葉を受けて、アルはため息をついた。
「まあ、イベリス姫が行きたいなら止めません。すぐに準備させます」
「やった!」
そして一人のんびり温泉に浸かっていた結果、私は早くも命を狙われ、あまつさえのぼせたわけで。
もちろん、その後布団にもぐりこもうとするどっかの王子様は全力でお帰りいただいた。
襖一枚隔てた先に誰が居るとも知れない環境では本当無理だから!
人払いしてあるっていっても庭を誰かが通りがかる可能性はゼロじゃないでしょ!
露店風呂は平気なくせにとかそういう問題じゃないの!
そして一話目の冒頭に繋がります。
護衛なのでイベリスが危険になるまで殺さなかったアルですが、褒めてもらえませんでした。
かわいそう。




