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勇者の幼馴染み

作者: けいと

昔書いた短編です。


続きそうな感じで終わっております。

「死なないで。死なないで。……お願い」


必死に私に回復魔法をかける幼なじみの顔はその綺麗な面を泣きそうに歪ませながら必死に手をかざしてくれる。


まだ幼い幼なじみに悲しい思いをさせているのに胸が痛む。


しかし、私の命はどんどん体からぬけていくのだと感覚でわかる。


魔力を盛大に使う幼なじみが心配でもう止めてと止めたくても私の腕はぴくりとも動かない。声を出したくとも掠れた吐息しか出なかった。



やがて、幼なじみも私がもう助からないと諦めたのだろう翳していた手をだらりと下げる。

しかし、次の瞬間には何か呪文を唱え始めた。


生命魔法全般を簡単に使える聖なる勇者の幼なじみが長文の呪文で繰り出す魔法…それで思い至ったのは聖なる勇者最大の魔法である転生の魔法。


これを使えばいかな勇者といえども魔力はすっからかんになる。


こんな敵地のど真ん中で魔力無しは自殺行為だ。先ほど以上に幼なじみを止めようと頑張るがこのぽんこつの体は一切動かない。


そして徐々に意識を失う直前、眩い光りに包まれたのを最期に意識はぷつりと途切れた。



―――――----

―――-----

-----



14歳になった私はパレードを眺めていた。

視線の先には5人の勇者。その中にかつての幼なじみの姿もあった。


当時は金髪碧眼の愛らしい姿は聖なる勇者の称号も相まって天使と称えられていた。それが23歳になった今は当時の面影も残しつつも精悍な顔立ちに変わっており、前方にいる本物の王子より王子様らしい。


私の審美眼を証明するように私の周りにいる年頃の女性たちは幼なじみの名前を呼びながらキャーキャー言っている。


しかし、私はそれよりも彼の目の下の濃い隈とこの世の絶望を全て背負いこんだような雰囲気にとても心配になる。

もう、当時と違って私の方が年下なのに。やっぱり私にとっては心配になる幼なじみのままだ。


ふと、幼なじみがこちらに目を向けた。一瞬目が合ったような気がしてドキリとしたが、さすがにこの人混みなんだから気のせいだろう。


しかし、幼なじみは突然パレードから抜けるとずんずんとこちらに向かって歩いてくる。


異様な雰囲気の幼なじみに民衆は自然と行く手を開けていく。そして、元幼なじみで聖なる勇者は私の対面にやってきた。


「……ロザリー。やっと会えた」


感極まったような声音を聞いた直後私をぎゅうぎゅうと抱き締める。


なんで、私だと気付いたんだろうとか私の近くにいる両親とか知り合いが私のことを違う名前で呼びながら抱き締める勇者にビックリしているのをどう言い訳しようとか思うことは色々あったが私は最優先するべきことを告げた。


「ごめんね。ありがとう。グレイス」



END

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