早く村へ、森の入り口へ
母さんはおじさん達が見付けてくれる。大丈夫。大丈夫。これは、汗で涙じゃ無い。怪我した右腕で乱暴に拭う。
村長の元まで走る。
村に着くと仕事終わりと思われる大人達が歩いてる。
みんな僕の怪我だらけの姿に驚いてる。でも構ってる暇なんてない。
村長に説明しに行かないといけないんだから。
「村長!母さんが森で迷子になっちゃった!今騎士のおじさん達が森に迎えに行った!森の入り口で松明焚いて待ってろって!」
村長の家に駆け込み早口言葉のように捲し立てる。
慌てた村長が、
「何っ、また迷子か!レンは傷洗って来い」
「おい、おまえさん、レンの親父のとこまで知らせに行ってくれ」
僕と奥さんにそう言って松明の用意を始めた。
僕は早る気持ちを抑えながら、言われた通り傷だらけの手足や顔を裏手の井戸まで綺麗に濯ぎに行った。
村長の家に戻ると準備を終えた村長が出てくるところだった。一緒に森の入り口まで急ぐ。
後ろから誰かが走ってきた。
「レン、お前は大丈夫か?エレーナなら問題ないさ。迷子は今に始まったことじゃ無い。灯りを見つけてひょっこり帰ってくるさ。」
そんな軽く言ったのは父さんだった。我が父ながら何故そんな楽観視出来るのか。それとも僕がこれ以上心配しないためなの?
でも、まるで母さんが無事であることを確信しているように感じるのは気のせいかな?
走りながら声を出す余力なんて、もうない。
父さんもそれを分かってるのか返事は求めなかった。
僕たちは森の入り口まで無言で走り続けた。
やっと、戻って来た。
村長が僕に松明を持たせ、火打ち石で火をつけた。
森の入り口に常に置いてある大きい松明に火を移していく。
油を良く染み込ませた布が巻いてあって、凄い勢いで燃えていく。
入り口の大きな松明が2本、僕が持っているのが1本。
母さん、早く気付いて。無事に戻ってきて。
お読み頂きありがとうございます。
予約投稿機能に気付いて、初めて使いました。
便利ですね〜♪
次は父、ユーグの視点で書こうと思います。