どうしましょう
母、エレーナ視点です。
此処が森の奥側なのは分かったけれど、入口はどっちかしら。
もう月明かりしかないから余計に分からないわ。
それに不穏な気配が濃くなっている。
このままではきっと魔獣が出てくるわね。困ったわ。
今の持ち物は、鞄に採取した薬草が少し、動物避けの香、護身用の短剣一本ね。
すぐに帰るつもりだったから軽食もないわ。
動き易いワンピースだけれど、複数に襲われたら流石に汚れてしまう。
せめて向かう方角が分かれば良いのだけれど。
あの子は無事に村に戻ったかしら。もしまだこの森に居るようならすぐに見付けないと。
出てくる魔獣にもよるけれど、弱いものから狩るのは同じだものね。
あの子にもしものことがあったら私立ち直れないわ。
でもどうやって探そうかしら。この森意外と広くて大変なのよね。
あら、森の気配が変わってしまったわ。
魔獣が出てきたんだわ。どうしましょう。
もし、あの子が森にいるならあの子の元へ行くはずね。
決めたわ。魔獣の様子を見てあの子が森にいるか確認しましょう。それに、どんな魔獣でどれだけ出てきたか確かめておかないとね。
村に被害が出てしまったら大変だもの。
折角手に入れた平穏な暮らしに水を刺されたら堪ったものではないわ。
幸いと言うべきかは分からないけれど此処は森の奥側。
魔獣の発生地からそう遠くないわ。気配を探知し易い。
居たわね。数は5、いえ、6体ね。動きからして狼のような魔獣かしら。あら、こっちに向かってきているわ。
目的が私なのか、それとも移動しているだけなのか分からないわ。木の上でやり過ごしてみようかしら。
むっ。さすがにワンピースで木登りは辛いわね。誰かに見られたらはしたなくて恥ずかしいもの。
今度からすぐ帰るつもりでもズボンにした方がいいわね。
「……」
今誰かの声が聞こえた気がするわ。何処からかしら。
あ、魔獣が反応しているわ。誰か森に入ったのね。
あの子が村の騎士達を呼んだのかしら。もしそうなら、あの騎士達ではこの暗さで6体の魔獣とやり合うのは酷かしらね。騎士達が怪我をするのも困るわ。
でもどこに居るか検討がつかないから気配で探れないわ。
本当にどうしましょう。
魔獣達が気配を消して木の上にいる私を素通りして、一直線に向かっていくわ。つまり、この先に居るのね。やった、おおよそでも方向が分かれば誰が森に入ったのか気配を探れるわ。
旦那では無い気配が3人。やはり騎士達だわ。
大変、騎士達はまだ魔獣に気付いていないわ。このままだとすぐに魔獣達と遭遇してしまいそう。
後ろから数体間引くしかなさそうね。
仕方ないわ。短剣だから少し不安だけれどなんとかなるでしょう。
さ、騎士達と合流する為にも行きますか。
下を走るより木々を飛び移る方が早そうね。上からなら不意をつけるし、良いことだらけね。
私頭いいわ〜。
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