走る
僕は急いで森を抜けるために普段だと狭くて通らないような獣道を走った。
村に居る騎士のおじさん達は定期的に村の周辺を見回っているから、運が良ければ森を出た所で会えるかもしれないな。
あぁ、日が沈む。もう時期辺りも暗くて見えなくなってしまう。急がないと。
森を抜けた。
母さんが見つからなかった不安で、体感的には数十分走った気がする。
完全に暗くなる前に森を抜けた安堵で手足を怪我している事に気付いた。獣道の何処かで引っ掛けたのだろう。
でも、このくらい気にしていられない。
早くおじさん達を探さないと。
村に向かって走る。走る。松明の灯り、おじさん達だ!
「お〜い、こっち来てっ」
走りながら叫べば、気付いたおじさん達が寄ってきてくれた。
「お、レン坊じゃねぇか。こんな時間に森の方から出てくるなんて何があった」
「エレーナはどうした?」
「最近夜の森で不穏な気配がしたって注意喚起したろうが」
おじさん達が口々に言ってくるもんだから、説明する隙がないじゃないか。あぁ、エレーナは母さんの名前だ。でもその母さんが危ないのに。
「実は母さんがまた迷子になって、今日は日が暮れ始めた頃に気付いたから急いで探したんだけど、普段薬草採りする周辺には居なかったんだ!
多分奥の方に迷っていったんだと思う。それでおじさん達探しに森から先に出てきたんだ」
僕が切羽詰まって言うと、おじさん達が険しい表情に変わった。こんなに険しい顔してる所なんて初めて見てびびっちゃった。
「レン坊、村まで走って村長達にその事伝えろ。森の入り口で松明も焚くよう言うんだ、いいな」
ケインおじさんが険しい顔のまま言うが、僕だって母さんを探したい。その気持ちが顔に出たのかもしれない。
「エレーナは俺たちが必ず見つけて戻るから、その為にも松明焚くように村に伝令に行け。夜の森は昼の森とは別だ。何が起こっても不思議じゃないんだ。だからお守りをしながら行けねぇんだよ」
ジンおじさんにも言われ、その隣でヤッコフおじさんが頷いている。流石に子供の僕じゃ足手まといにしかならないか。
仕方ない。母さんの迷子にすぐ気付かなかった僕が悪い。
おじさん達に頷いて急いで村まで走る。
母さんが松明の灯りに気付いて奥から無事戻って来れるように。
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