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青い夏3

1回表、林ノ宮の守備。先発投手尾上は先頭打者を4球で危なげなく内野ゴロに仕留めると続く2番、3番打者も左腕から繰り出される変化球で翻弄し無難に打ち取り、3者凡退で初回の守備を終えた。

そして1回裏、林ノ宮の攻撃、1番打者は3年生中堅手で左打ちの倉橋。

相手投手の1球目は外角低めへのストレート、ストライクゾーンに入っていると倉橋は判断しつつも初球は見送った。

1球目だけでは完全に判断できないが、真っ直ぐの球速、伸びは脅威になる程では無いようだと感じた。

続く2球目はスライダーと思われる沈む変化球に空振り。

3球目も同じ球が来た、倉橋はバットに当てたものの、ボールの上を叩いてしまい、打球は一塁へのゴロに、倉橋は脚力に自信があるが流石に一塁への到達は間に合わず凡退となった。

2番打者、3年生の遊撃手の坂倉。坂倉は両打で、相手投手が右腕なので左打席に入る。

初球は内角高めへのストレート、坂倉はカットし1ストライク。

次も同じく内角へのストレート、バットを振り抜き、痛烈なゴロが一塁線へ転がったが僅かにファールゾーンへ切れた。

3球目は外角へのスライダー、ボール球だったが手が出てしまいショートゴロに。

ツーアウトとなり打席には2年生三塁手の左打者高橋。林ノ宮は1番から3番まで左打者を並べて右投手を攻めるオーダーになっている。

ネクストバッターズサークルで待機している灯は真剣な眼差しで高橋の打席を見つめる。

灯は高橋の実力は林ノ宮のメンバーの中でも上位だと思っており、打撃に関しては自分の次に長打が期待できる打者であるので、チャンスで自分に打席を回してくれるだろうと期待をしている。

初球はやや真ん中めのスライダーを見送った。

凡退した倉橋と坂倉からスライダーに注意するように助言を受けていたのでそのスライダーを初球から見れた事は幸運だった。

正直打てない球ではないと高橋は感じた。

続く2球目は外角へ外れたストレートを見送り1ストライク1ボールになった。

次の球はスライダー狙いで打ちにいこうと決めた高橋の読み通り相手バッテリーはスライダーを選択した。

外角へのボールぎみの球だったが、高橋はスライダーが来たと反応し手を出した。

ライナー性の打球が三塁手の頭上を越え、レフト前ヒットになった。


「ナイス高橋ー!」


「さぁ、いよいよ林ノ宮の秘密兵器のお披露目だー!」


林ノ宮ベンチから歓喜の声が上がった。

灯が打席に入る、捕手からの指示で相手の守備は先程より後退したシフトになっている。




「あれが沢井だな」


「すごいな、1年なのに長打警戒されてるのか」


近くの席からそんな会話が聞こえ、嗣弓は姉から野球部に入ると聞いた日の事を思い出した。



「いや~、野球辞めるなんて言ってたのも束の間だったね。やっぱりお姉ちゃんは野球が好きなんだね」


「野球続けるつもりは本当に無かったんだけどね。」


「じゃあどうして野球部に入るの?」


「凄く野球が上手い子がいてさ、その子は私なんかより全然才能あるのにわざわざウチみたいな弱小校に入ってさ」


「それはお姉ちゃんも同じじゃん」


「うん、でもその子は私と違って野球への熱意に満ちあふれててね、そんな人から熱心に...強引に野球部に勧誘されちゃって」


「へえ~、不思議な人だね。」


「ほんと、滅茶苦茶な奴だよ」


一弓はウンザリしたような表情だったが、声のトーンには嬉しさが混じっている様に嗣弓は感じた。


「でも何だかんだ野球部に入ったってことは満更でもなかったんじゃない?」


「いや、だから私は本当に野球に対する未練も無かったんだって...多分」


「ふーん?でも私的にはその人に感謝だね」


「は?なんで嗣弓が感謝するのさ」


「だって私はお姉ちゃんが野球続けてくれるの嬉しいもん。野球してるお姉ちゃんはかっこよくて私の自慢で、憧れのお姉ちゃんだからね」


満面の笑みの嗣弓のその言葉に一弓は照れくさくなり視線を逸らして「そっか」とだけ呟いた。


「まぁかっこいいのは野球やってる時だけだけどね。普段は卑屈で無気力みたいな雰囲気で全然かっこよくないし」


「は?なにそれ」


「ふふん、残念だけどそれが事実だもんね」


「ほんと余計な事しか言わないよねあんたは」



今打席に入っている選手があの時姉が言っていた姉を野球の道に連れ戻してくれた人かもしれない、嗣弓の姿勢が思わず前屈みになり、一層集中して打席を見つめる。

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