彩、芽生える、夏
蝉が鳴き、照りつける光が肌を焼くような熱さになり始めた。
阿賀北高校女子野球部1年の堂前香は同学年の投手、一色彩夏のサウスポーから投じられた力強い直球をミットで受け止めると、手のひらに伝わるわずかな痛みとミットから響くピストルのような快音の余韻に浸るように、数秒間じっと捕球したままの体勢を保つ
彩夏も返球を急かすことなく、軽く一息つきつつ帽子のツバに軽く触れる
そんな彩夏の投球練習の様子にチームメイト達も興味津々で、自身のメニューをこなしながら横目でチラチラと彩夏の投球を伺い
「あれ140は出てるんじゃない?」
「あの長身からあの直球投げられちゃたまんないよね」
なんて話しをしている声がチラホラと2人の耳に届く
香も、そんなチームメイト達に彩夏の直球を見せつけるように続けてストレートを要求し、そしてピストルのような捕球音が響き渡る。
「なぁ、アタシ思うんだけど。やっぱり彩夏なら日本文教でもベンチ入り、いや、エースになれるんじゃないか」
投球練習を終えクールダウン中の彩夏にキャッチャー防具を抱えた香が声をかける
「大袈裟だよ、私なんて...」
スポーツドリンクを口にしながら彩夏が苦笑いをする
「大袈裟なんかじゃないって、彩夏がウチにいるのは本当に勿体無いと思うよ正直。きっと彩夏なら全国でも通用する」
「も~、何熱くなってんの?」
「中学に入ったばかりの頃はアタシと身長もほとんど変わらなかったのに、気付けばどんどん大きくなってさ、ピッチングだってそれと同時にどんどん成長してる。」
「いやいや、たしかに背丈は気が付けば自分でもビックリするくらい大きくなってきてるけどさ、野球の実力なんて全然だよ。スカウトとかもなかったしさ」
「いや、それは中学の頃の話で」
「それに、私は全国の舞台で野球をしたい訳じゃない。香と野球がしたいんだ」
彩夏の言葉を聞いて香は照れくさくなり、慌てて視線を逸らした
「そっか...ありがと...」
「そもそも私、強豪チームの練習の厳しさに耐えられる気がしないしね」
「おい、そっちが本音か?」
「違うよ~」
そんなやり取りをしながら2人は再びグラウンドへと戻る
「じゃあ彩夏が日本文教相手にどこまで通用するか見てみたいな」
「う~ん、今はまだ相手にならないと思うよ?あと2年は待ってほしいな」
「再来年になれば日本文教を倒せるか?」
「私と香とチームのみんながすごく成長してたらね」
「なんだそれ」
じゃあ、と彩夏は軽く手をあげ別れをつげるように2人は各々の練習へと戻っていった
かなり久しぶりの更新になってしまい申し訳ございません。
久しぶりに更新するにあたって、過去の投稿も少し改稿しましたので、もうストーリーを忘れたという方はプロローグから読み返していただけると幸いです




