朝の東雲家
そして翌日。
「お兄ちゃん起きて」
朝起こしに来てくれる立夏の声で目が覚める。
「ご飯だから早くきてね」
「おう……」
重い腰を上げリビングへとむかった。
「おはよう夏樹、これ持っていって」
「はいよ」
いかにも日本の朝御飯というメニューが並んでいた。
「起きたか息子よ……」
新聞紙を持った父親が目を合わせずにそう言ってくる。
「なんで、そんなに厳格そうな雰囲気出してるんだよ」
「世の中の朝の父親活動ってこうじゃない?」
「たぶん、かすりもしてないな」
「はい、お兄ちゃんご飯」
奥から白米を持って立夏が出てきた。
「ありがとう立夏」
「あれ、立夏たんパパのご飯は?」
「はい、ご飯だよ」
そう言って立夏が置いた茶碗の中には……
「の、海苔一枚……」
そう言って立夏の顔を見てみると親父にすごく怒っているようだった。
「立夏たん、先程の見苦しい一面は反省いたしますのでどうかご機嫌を……」
「何をしたんだ親父は……」
俺が一人で呟くと横から母親が出てきた。
「いえ、実はね……」
20分前――
「ほら、あなたご飯よ」
「ワン!」
「お座り」
「ワン!ワン!」
「さあ、お食べなさい」
「ワン!」
「何してるの……?」
「はっ……!」
回想終了――
「ってことがあったの」
「あったの……じゃないよ!そら立夏もああなるよ!」
「朝の日課だったのに」
「日課だったの!?」
立夏があきれた顔でご飯を食べながら口を開く。
「そんなことする時間があるならランチの準備してよ……」
「ほんとごめんって!パパ謝るから!」
「ごちそうさま」
「立夏ちゃぁぁぁん!」
今日も賑やかな我が家であった。
学校へと向かう準備を終え家を出る。
「行ってくる」
「行ってきまーす」
「夏樹、帰りに野菜買ってきて」
「わかった」
学校へと向かう道へは海未達と話をしていた灯台の横を通り海沿いの道を真っ直ぐ進む。
「もうすぐ夏休みだね」
「そうだな、今年も手伝いずくめだろうな」
「年々人気になってるもんねうちのレストラン」
「ありがたいことだけどな」
海沿いを歩きながら立夏と話すのはどこか心地のいいものがある。
「だから、俺はシスコンなんだと思うのであった……」
「だからなんで心を読めるの!?あと、変に付け足さないで!?」
「本当にお兄ちゃんはシスコンなんだから」
「そんなこと言ってないってば……」
そんなやり取りをしていると。
「おーい、おはよー」
海未が手を振って待っていた。
「今日も待っててくれたんだな」
「一緒にいきたいからね~」
そんな照れるようなことを平気で言う海未。
「積極的……」
「負けないよ~」
立夏と海未がなぜか火花を散らしているように見えた。
「そういえば渚は?」
「生徒会だよ~夏休みに向けて忙しいみたい」
「さすがだな」
「家のことも手伝ってくれるしありがたいよー」
渚は一年生ながら生徒会で活動しながら家の料亭も手伝っている働き者だ。
「そういえば二人も今年もコーラルの手伝い?」
コーラルというのはレストランの名前だ。
「まあ、そうなるだろうな」
「私もかな、お兄ちゃんの監視もしないとだし」
お兄ちゃんの信用皆無である。
「おーい、おっはよー!」
三人で歩いていると後ろから元気なショートカットの女の子が走ってきたのであった……