花火に願いを込めて
ある夏の夜のことでした。
母の吐瀉物を川へ捨てに行ったのです。
そこで見た花火がとても綺麗だったのを覚えています。まだ、私にも綺麗と思える心があったのかとその時はびっくりしました。
この花火を、私の大切な人と心の底から楽しめたらどんなによかったでしょうか。
「花火に願いを」
呟いて、なんだか馬鹿らしくなったのと悲しくなったのとで涙が溢れました。
家に帰ろうか、それともこのままどこか名前も知らないようなところまで行ってしまおうか。いいえ、いいえ、答えは決まっているのです。私なぞ大きな事は出来ない性分ですから、家に帰る他ないのです。結局私の居場所はあの小さな小さな家にしかないのです。
こんなちっぽけで弱い自分が大嫌いです。
いつだったか、家を出たことがありました。結局母に泣きつかれ、その日のうちに帰ったのですけれど。
弱い母 共に倒れて 依存の海
空を見たら、なんにもありませんでした。私の心のようです。からっぽです。ビー玉を透かしたようなあの子のような綺麗な心ではないのです。
母は弱い人間です。私がいないとダメなのです。きっと母も同じことを思っているでしょうね。
なんて哀れな二人でしょう。
いつしか見た花火を思い出します。あなたはきっと忘れているでしょうね。心の底から楽しかったあの日々も、もう帰っては来ません。上辺だけで傷を舐め合う生活、これを一生続ける他はないのですよ。
一発書きですので多少のミスはご容赦ください