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その輪から覗くものは  作者: フグリ
一輪
4/4

蜂蜜漬けに浮かぶ輪

昨夜の出来事から明けて翌日_____



朝起きてみれば特に変わったこともなくいつも通りで、白い着物をきた小人もいなければあの頭に響く声も聞こえなかった。きっとあれは知らずに溜まっていた疲れからもたらされた幻覚や幻聴であろう。そう思うことにして、今日もいつも通りの帰宅路を歩いて家に帰る。お腹空いたな、さて今日の夕飯はなんだろうか…。


****************


「じゃ~ん!今日の夕飯は___。」

「いただきます。」


恒例の母の長話を聞き流しつつ(とばり)は夕食を食べ始める。昨日の出来事もあり、ついれんこんが入っていないか確認してしまったが杞憂だったようだ。





(よかった……。)


ほら、今日もいつも通りだ。もうすぐ終わる明日の予習が終わればあとは寝るだけ……そう思っていた時だ。コンコンと僕の部屋にノック音が響く。


(とばり)~、まだ起きてる?お勉強中ごめんね、疲れてる時はこれ飲んで」

「あー…ありがと、置いといて。」


母が気を利かせて何か飲み物を持ってきたようだ。健康志向の高い母はよく黒酢やら生姜湯、蜂蜜なんかを度々持ってきてくれる。今日のは色や匂いからして蜂蜜……………



《遅かったじゃないか、人間》

「は……………?」


また脳内に響いてきた声。机の上に母が置いていったコップを確認すると、『それ』は蜂蜜の中ぷかぷか浮いていたれんこんの“穴”から顔を出してこちらを見ていた。一瞬、時が静止したように固まる(とばり)。そして待ちくたびれたぞ、と頭の中に声が聞こえたかと思ったら『それ』はその“穴”から這いずり出てくる。


「よし、それじゃあ早速ツナギの役目について簡単に説明しよう」

「お前、普通に喋れんの?………てか、そのサイズ何?」

「………はー。」


えー…めんどい、と明らかに不服そうな表情を表に出す『それ』に対してまず疑問に思ったことを直に問う。“穴”から這い出てきた『それ』はするすると出てきたところから500円玉にちょうど乗るくらいの大きさになり言葉を発した。


「私はいわゆる神のようなものだ。」

「神ねぇ……。」

「信じてないだろ」

「……………。」


まさに図星、沈黙を選んだ僕を一瞥した『それ』はまあよい、と呟くとツナギとやらの説明を始める。おまえ達人間には分からないだろうから教えてやろうと前置きをして。



「ツナギ___それは多種多様に存在する穴を埋めるため繋ぎ合わせをする者を指す敬称だ。」「はぁ………、それで?」


「それで私はおまえをツナギにする」


間の抜けた返事をする(とばり)。そんな彼に『それ』はまるで決定事項のように言葉を綴る。



「なんで僕が……。」

「それは境界線に入ってきた自分自身にでも聞いてみろ。幸い“線引き(せんびき)”の素質はあるようだ、よかったな。」

淡々とそう述べる『それ』は、無表情ながらもどこかそれが大層誇り高いことであるかのように言う。


全然良くない、面倒事などごめんだ。

ツナギがどう言ったものなのかなんてあの説明を聞いたところで分かるはずも無かったが、第六感で今まさに何かに巻き込まれようとしている事だけは分かる。


「それでは人間、いきなりだが“線引き”をやってみようか………と思うがその前に自己紹介がまだだったな。」


「今それを言うか?」


いきなりなのは昨日も今日も既に体験済みだ。今更か、と思いつつもここは一先ず『それ』の支持に従うとしよう。そうして『それ』が言葉を放つのを待つ。



「__私は(つぶら)。ツナギに情報を与え、人間の感覚に基づく欲の根源を見つける手助けをすることが使命だ。……人間、おまえの名は何という。」


(とばり)………。」



『それ』__……いや、(つぶら)と名乗る小さな少女はふむ、と僕の名前を聞いてどこか納得したように頷くと小さな手を差し出す。


「では改めて、よろしく(とばり)。」

ツナギとしてこれから精進していこうな、そう言って(つぶら)は小さな手を差し出す。


「……よろしく。」


差し出された手を握り潰してしまわぬよう恐る恐る握り返す。


そうして、僕の日常の中にその不可思議は隣にやって来たのだ。

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