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犯人の仮面

あのあと、石井刑事達と別れて、若女将の部屋に向かった。

――野本さんの部屋から、あれが見つかったってことは、若女将の部屋でも見つかるはず。ありさは靴箱を開けた。

――こ、これは?!

靴箱から見つかった物を手にした。

――なんでこれがあるの?

ありさにはよくわからないでいた。

「ありささん」

背後から若い女性の声で呼ばれ振り向いたありさ。

「美沙ちゃんじゃない。どうしたの?」

「なんか、ありささんの手伝いしたいなと思って…」

「ありがとう。ここじゃなんだから外行こう」

靴箱を閉め、美沙を部屋の外へと出した。



二人が向かったところは、美沙の部屋だった。

宿から歩いて五分のところに、福山家の家がある。

美沙の部屋は、とても女の子らしくてシンプルな部屋だ。

ありさは美沙が入れてくれた紅茶を飲みながら、事件のことを話すことにした。

「うん。若女将と野本さん、仲良かったで。野本さん、年に一度は泊まりに来てたかな」

「そうなんだ」

「一度、野本さんの店のケ―キ食べたことあるで。若女将が買って持ってきてくれてん」

「そういえば、野本さん、店持ってたんだっけ」

ありさは智の証言を思い出していた。

「でも、私のお母さんが若女将だったなんて…」

美沙は母親が若女将だとはまだ信じられないでいる。

「ビックリだよね」

「うん。お父さんも若女将も好きやで」

「美沙ちゃんて、素直だね」

「いや、そんな…」

顔を赤くする美沙。

「それにしても、昨日の夕方に“警察に証言しろ”という指示したのが、納得出来ないな」

頭をかきながら呟くありさ。

「え? 昨日の夕方…?」

「うん。今日、福山さんが言ってた」

「お父さん、嘘言ってる」

美沙は指摘する。

「どういうこと?」

「昨日じゃなくて一昨日。一昨日の夕方に電話があった」

「一昨日の夕方…?」

「私、お父さんに話があって、宿の調理場に行ってん。私が行った時、お父さんケ―タイで誰かと話しててん。切った後、様子がおかしかったよ」

一昨日の健一の様子を見たとおりに話す美沙。

「誰からとか言ってなかった?」

「市場の人からやって。でも、市場の人からやったら、宿の電話にかかってくるから変やなって…」

美沙の答えを聞くと、考え込むありさ。

――昨日じゃなく一昨日の夕方に電話があった。様子がおかしいって言ってるから、その時だわ。脅迫されてたのは…。本人が言ってたから、少しも疑わなかったけど、今になってなんで嘘なんかつくの?

「福山さんは嘘を言ったりしたんだろ?」

「私のこと心配してるからじゃない?」

「心配…?」

ありさは首をかしげる。

「実は私、家出したことあるねん」

「え? 家出?」

「今の生活が嫌やなって思って…。私がお父さんとお義母さん、毎日のようにケンカばっかりで嫌になって、中学の時に何度か家出しちゃった。今はケンカなんてないけどね」

美沙は舌をペロッと出す。

「へぇ…」

――美沙ちゃんて、意外と不良っぽいとこあるんだぁ…。

ありさは意外な美沙の一面を見た。

「それで嘘ついたのかも知れへんね」

「そうかもね」

「今は二人共、大好きやで」

「そりゃぁ、いいことだ」

笑いながらのありさ。

「あのさ…さっきの話なんだけど、若女将が本当のお母さんだってこと…」

ありさは聞いてはいけないと思いながらも聞いてみた。

「聞いた時はホンマに驚いたのは事実。お父さんと若女将の間に、私が産まれたんやと思うと変な感じになっちゃって…。若女将は若女将として優しい女性として、お義母さんとは別なんやと思って見てた。若女将が話しかけてくれる度に、“私のお母さんやったらどんなに良かったらいいのに…”って思ってた。こんな風に思うのって、やっぱり私は変かなぁ…?」

美沙は不安そうな目をありさに向けた。

「ううん。変じゃないよ。変だなんて思っちゃダメよ」

「そうやね。変なことないよね。ありがとう。なんか、ありささんと話してると安心しちゃった」

美沙はマグカップを両手で持ち、笑顔になる美沙。

「それより、事件はどう?」

「なんとも言えないな。けど、心配って…」

急にありさは何か思い出しそうな顔をする。

「心配がどうかした?」

「なんでもない」

慌てて首を横に振り、ありさは立ち上がった。

「そろそろ、宿に戻るね」



「新聞…ですか?」

宿のフロント係りの女性は、嫌な顔をする。

ありさは美沙の家から戻ってきたついでに、宿のフロントに寄った。事件について新聞はどう報道しているのか知りたかったのだ。それと同時に、事件の手掛かりも知りたかったというのもある。

「そうです。二十一日と二十二日の二日分の新聞でいいので…」

ありさはフロント係りの女性の嫌な顔を気にせず頼む。

「はぁ…」

渋々、フロント係りの女性は奥から、二日分の新聞を持ってきてくれた。

「ありがとうございます。すぐに返しますから…」

そう言うと、ありさは少し離れた場所で新聞を広げた。

――えっと…二十一日からの新聞からね。若女将と野本さんの二つの事件をきちんと調べておかないとね。

そう思いながら、新聞を読んでみたが、詳しいことは書いていない。

――詳しいことがあまり書いてない。どうしよう…。

途方に暮れるありさ。

「ありささん!」

「あ、山元刑事。どうしたのよ?」

「宿に確認したいことがあって…」

山元刑事は息が上がったまま言う。

「そうなんだ。で、それは…?」

ありさは山元刑事が持っていた袋に目をやった。

「若女将が私物を返しに来たんです。直接、宿の人に取りに来てもらっても良かったんですが、確認したいことがあるついでに持ってきたんです」

山元刑事は若女将の私物が入った袋を、ありさに見せながら言った。

「若女将には家族はいないの?」

「福山さんと離婚後、再婚することもなく、住み込みでこの宿に働いていたらしいんです」

「なんか意外だな。美人でいかにも日本の女性って感じなのに、再婚しないなんてもったいない。袋に大きな字で若女将の私物って書いてあるんだね」

ありさは袋に書いてある大きな文字を見て、苦笑しながら言う。

「僕が書いたもんで…」

「そっか」

「じゃあ、僕はこれで…」

「あ、うん」

ありさは山元刑事を見届けた後、フロントに戻り、新聞を返した。



――一体、どういうトリックで、誰が何の目的で、若女将と野本さんを殺害したっていうの? あの血文字の意味は、若女将と福山さんっていうのが大きい。だけど、それじゃ簡単すぎる。若女将は福山さん以外の男性と付き合っていたとしたら…? その男性が真犯人の可能性が高い。そうなると、野本さんが殺害された理由ってなんだろう? あれが見つかったってことは、二人を殺害した目的がどこかにあるハズ。

ありさは部屋の窓の景色を眺めながら思う。

「ありさ―、いつ帰るんだよ?」

突然、暢一がありさに聞いてくる。

ありさが部屋に戻ると、暢一とトリスタンも来ていた。

「そんなに帰りたければ、一人で帰れば?」

「嫌だね。オレはありさと帰るぞ」

勝手なことを言う暢一。

「暢一、オレと一緒に帰ろうか?」

「いいねぇ…。男二人旅ってか?」

笑いながらの暢一。

「バカじゃない?」

春佳はふざけているのかといわんばかりの口調で呆れる。

「ありさが事件解決するまで待つこと。いい?」

理恵子が指示する。

「ちぇっ…」

舌打ちをする暢一とトリスタン。

「二人で帰ってもいいのよ。私は二人がいなくたって事件は解決するし…」

「あ、います」

二人共、ペコペコしている。

なんだかんだ言って、ありさには弱い二人なのである。

「それにしても、犯人って誰だろうね?」

千恵が話題を変える。

「私は大川さんって人だと思うな」

理恵子は頬杖をして言った。

「大川さんてどんな人?」

トリスタンがありさに聞く。

「フリーライターなんだけど、黒い服にサングラスが似合いそうな人」

ありさはイメージで答える。

「ふ―ん…で、なんでその人が疑われてるわけ?」

「野本さんの知り合いらしくて、それでよ」

「ますます怪しいな」

春佳は腕組みをし、探偵っぽく言う。

「もしかしたら、福山さんってこともあるぜ」

「まさか。アリバイがあるのにどうするのよ?」

「あぁ…そうか…」

千恵の指摘に、頭をかく暢一。

――まったく、勝手なことば―っかり言っちゃって…。まだ犯人の目星なんてついてないっつ―の!!

「ありさはどう思う?」

「へ?」

「何とぼけた顔してんのよ?」

「別にとぼけた顔なんか…」

「ありさは誰が犯人だと思ってるわけ?」

五人はありさの発言に注目する。

「ん―、まだわかんない」

「マジで?」

「うん」

「ホントに事件解決出来るの?」

「大丈夫よ。私は切羽詰まった時に限って力を発揮するんだから…」

と、強気なことを言いつつ、内心は焦っていたありさ。

「確かにそれはそうよね。ありさの言ってることは当たってるよ」

千恵は納得している。

「とにかく、もう一度、若女将の部屋に行ってくるよ」

ありさは少し休んだところで立ち上がった。



若女将の部屋に着いたありさは、しばらくの間、部屋の中をウロウロして、証拠になりそうな物を探していた。

証拠が少ない今の現状じゃ、この人が犯人だとは言えないでいる。

明後日には事件の捜査が終わってしまうため、何がなんでも事件を解決したいという気持ちが、ありさの気持ちを駆り立てる。この気持ちは、ありさだけではない。警察は勿論、今事件に関わっている人物全ての人が同じ気持ちでいるのは確かだ。

――二人の部屋からあれが見つかったのに、なぜ犯人がわからない? あれは警察を欺けるためのものなの?

ありさは若女将の机の引き出しを開けてみる。

中には一冊のノ―トが入っていた。手に取ってみると、どうやら日記帳のようだ。

――毎日、マメに書いてたんだ。…ん? 八月八日の日記の内容は…。

ありさはしばし考えた後、ピンときた。

――二人の部屋で見つかったあれ。この部屋の靴箱から見つかった物。この日記帳に、二つの現場に書かれていた血文字。全てがつながった。犯人は…あの人だ!!


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