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【2♬ シークはまだ闇に愛を囁く】 我の愛したオアシス

いつでもどこでも、頭がアラビアンナイト


 我の名は、ヴァイ・ツェイビー=ルノアーク・レイエ=シャルルージュ。



 シャルルージュ魔王国にて、魔国の神の祝福を額に受けて生まれた。

 魔国の神の祝福を受けた魔人が王族に生まれるのは50年ぶりの事であった。

 額の小さな割れ目から見えるは、我の瞳と同じく青みがかった紫の魔石。我が黒い衣服を好むのは母上が青紫に似合う色として、我に選んでくれたからだ。

 我が、魔石を露わに生まれたことによって、寵姫であった母上と我の運命も変わっていったのだろうか。


 あぁ、母上……。


 そして、我の愛しい女達……




 ……そう、あれは50年前……。


 我は22歳。


 我の容姿は、さらに美貌が増し、口髭を綺麗に蓄える事によって、男の色香が溢れ出していた。

 口髭にはこだわりがある。艶やかな唇の上は細過ぎず太過ぎず、頬のラインはやや太く、顎の部分は細く、下唇の下は逆三角形に。洗礼された口髭の形は、王族の威厳と気品を。その間にある芸術品の唇から漏れる愛の囁きに、幸せにならない女はいなかった。


 今日も、女を幸せにすべく目を瞑る。


 我の魔石の力は世界に干渉出来るほど、大きな魔力を扱える。

 我が王家は代々、予言者としての力を持ち、魔国の者達を導いてきた。我が王家が得意とする魔力の使い方は[物見の力]を発動させる事。ある者は、夢を見る、ある者は炎に浮かんだ未来を見る、ある者は遠くの場所の様子を見る。先祖は見えた情景を解釈し、より良い結果へと行動した。

 我はその力を魔石に込めて世界を伺う、[千里眼]を発動させる。

 千里眼で探すは、我の愛を待つ女。


 そう、我は全力をかけて、女を探すために世界に干渉した。


 城を見上げて涙を流す女、隣国で夫に虐げられていた女、旅芸人の妖艶な踊り子、我が足を運べる所へは、すべて駆けつけ、愛を囁いた。

 時には、遠い国々の女達も眺めた、いつか会いに行く、そう誓って、我と出逢えるまでの女達の運命を祈った。あの、幾度か見る美しいハーフエルフの女にも、祈りを捧げた。


 そうして、深く深く目を瞑り、女を探す。


 ふと、2人の女が目に留まった。


 場所は、我が国を出てしばらく行った所。


 そんな所にあるはずがない景色が魔石を通して見えた。


 我は慌てて駆けつける。


 急がねば、消えてしまいそうな光景であったからだ。



 そうして、たどり着いたのは、砂漠に現れたオアシス……美しい小さな世界。


 以前は砂しかなかった場所に、緑の絨毯が広がり、端々には植物が豊かに生えわたり、その中を澄んだ泉が満たす。泉の中心部には2本の木が泉から湧き出るようにして生えている……その木を見ると心に温かいものを感じた……。


「あれが大樹……直接目で見るのは初めてだな」


 大樹の偉大さに感動していると、大樹の後ろから2人の女が現れ、月明かりの下で水浴びを楽しんでいる様子を見せた。


「なんと……幻想的な」


 儚い夢の様な光景だった。


 深い緑の長い髪、緑の瞳、尖った耳の女。

 淡い青の長い髪、青の瞳、ヒレのような耳の女。


 どちらも人では無いだろう……女神か、精霊か、その幻のような女達は裸に近い姿で、水上に漂っていた。


 光を纏う体は、触れると消えてしまいそうな感じがした。しかし、我はその光に惹かれて女達に近づいて行く。


 女達が我に気付いて、こちらを見る。おびえる様子は無く、クスクスと笑う仕草を見せた。


「女神よ、近づいて良いだろうか?」


 女達は我の言葉に驚いた様子を見せ、そしてまたクスクスと笑い合う。

 しばらく女達は目配せをし合い、それから我に向き直って、手招きをした。

 言葉が話せないのだろうか、だが、我の言葉は通じる様子だった。

 我は泉に近づき、泉のそばに腰を降ろす。


 女達が我の額を指さし、次いで自分達を指差す。


「そうだ。千里眼によって、貴女達を見つけた」


 女達はクスクスと笑い合う。つられて、我も笑みを浮かべる。


 我が言葉、女達が笑みでの会話であったが、夢のような夜が続いた――朝日が差し込み、我が目を瞬いた瞬間、オアシスが夢であったかのように消えるまで。



 ……あれは夢であったのだろうか。


 ……いや、あの夜、確かにオアシスには愛があった。


 愛に溢れた夜であった。


 また逢いたいと願っていたのに、それは叶わないのだろうか……。


 深い闇の中、我は愛した女達への愛を囁く。



オアシスの女達の会話(念話)


「え?何々?人?魔人?」

「あれ?彼、超イケメンじゃない?」

「マジ!超イケメンなんですけど~!ウケる!」

「え?女神?」

「何それ!ウケる!」

「ウケる!確かに~女神に植えられたけど~」

「あんな腐女神と同じにされちゃあね~」

「男同士の何が良いんだか~」

「ね~!あ、魔人だわ、イケメン君」

「あ、魔石!?あーだからココ見つけれたの?」

「千里眼?ヤバくね?覗きじゃね?」

「ヤバい~!変態~!覗き魔~!」

「イケメン君、ちょっと遊んであげようか?」

「え~、何、浮気~!?」

「違う~!ちょっと、からかうだけ~」

「ほんとに~?」

「私が愛してるのはアンタだけ!」

「もうっ!バカ!恥ずかしいじゃん!」

「愛してるよ」

「だから~!イケメン君が見てるって!」

「イケメン君!私はコイツを愛してるんだ!」

「何その宣言!イケメン君、笑ってるじゃん!」

「ウケる!」

「ウケる!」


「あ~、読んでくれて~」

「ありがとう~とか?」

「プッ、ウケる!」

「ウケる!」

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