悩む少年
二話です。よろしく。
夜。俺は、笑っていた。小さく笑っていた。
確かにひとけは、ある。でも、安全な寝床じゃないよね?
俺は、二つの松明が揺れる盗賊のアジトを見ていた。
なんてこった……………………。
盗賊のアジトなんて「お邪魔しまーす」みたいなノリで行けるようなところじゃない!良くて、捕まって奴隷として売られるか、最悪…………殺されるか。
俺は、頭を抱え込んだ。
ここに二つの究極の選択がある。
一つは、盗賊のアジトを壊滅して、寝床を確保すること。
もう一つは、暗い夜の森の中、人里を探して歩き続けること。
この選択肢に俺は、頭を悩ませた。
盗賊のアジトの壊滅なんて、ただの普通の旅人少年に出来るわけないじゃないか。
聞いた話では、アジトを壊滅して、そこを寝床にしようとする豪気な冒険者や旅人がいるらしいが、俺には一人倒せるかどうかも怪しいのに、そんなことは、出来るわけがない。
大体、対人の実戦経験もほとんどない単なる15歳の少年には、んな無謀は無理だ!
前門の魔の野宿、後門の奴隷人生。
運命の神様!なんでこんな過酷な不幸を旅人少年である俺に与えるのですかッ!
理不尽過ぎませんか!少しくらい幸運を恵んでくださいよ!
束の間の祈りは敢えなく失墜し、俺は運命を恨んだ。
運命の神様のバカぁぁぁぁーー!!!
俺はこの世にいる運命の神様ディステニアへと心の中で愚痴を叫んだのだった。
しかし、現実問題。どうやってこの絶望を乗りきろう?
はっきり言って、明日を切り開くには、このろくでもない運命をどうにかしないことには、進まない。
どうする?食料のストックだっていつまでも持つとは限らない。
メリットだけを見れば…………盗賊のアジト壊滅の方がいい。
食料タダだし、貴重品とかありそうだし。
……………………考えてることが盗賊と一緒、だと!?
しかし、冒険者の中では案外一般論的なことだと思っていたのだが…………。
ま、まあ、そんなことはいいんだ。とにかく、生き残るには、危険だが確実性の高いメリットのあるアジトを狙うか…。はたまたは、リスクは少ないがメリットも少ない人里探しに出るか…。
主にこの二つだな…………さて、どうする、か。
そんなときだった。あの少女に出会ったのは。
本当にそこに居合わせたのは偶然だった。そのときの俺はまさか、こいつと一緒に旅に出ることになるとは全く思わなかったんだ。
その少女は三人の盗賊に捕まっていた。
服はボロボロで、体は傷だらけで痩せこけていた。赤い瞳に輝きはなく、元は綺麗だったであろう赤い灼髪も土だらけで、汚れていた。肌は少し白く、頭には小さいが角らしきものが見えていた。
死にかけていたと言っても間違いではない。
現に全てを諦めていたようなそんな死んだ魚のような眼をしていたのだから。
俺は、そのときはただ黙って見ていただけだった。
別に、正義の心とかが無いわけではない。
俺にだってあの子を助けてあげたいという感情くらいはある。
しかし、今の俺には力がない。
あの子を助ける余裕もなければ、義理もない。
薄情だと思う。でも、助けられる側の弱いただの人間に何が出来るって言うんだ?対人の実戦経験がないから、無理に突っ込めない。
そうして、情けない俺は少女がアジトの中に入っていくのを黙って見送っていたのだった。
まだまだ書きますよ。