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七薔薇物語

七薔薇物語 ―桃薔薇―

作者: 矢玉

これは 七つの薔薇にまつわる 物語


七色の薔薇をモチーフにした短編集です。

色々な文章、字体に挑戦してみました。

七つの薔薇にまつわる物語




 ゐまさらな気がするのですよ ゐまさら何を嘆くとゐふのです

 せっかく貴方に来て頂ゐたというのに

 何も言うことが無ゐ

 だってさうでさう?


 貴方のやうな人をけふの日に遣すなんて しかもこんな異教徒の娘に

 まったくみな 何を考へているのやら


 わたくしは罪など 犯した気はなひのですから

 罪など わたくしは告白する罪など 犯した気はなひのですから


 ゐままでの御人とはかつてがちがう相手で ごめんなさひね


 こんなことゐってはあれだけど

 わたくしに悔いすらなゐのですよ


 いつそあのみなさんには 申し訳なひくらひに


 あすのことも

 千年前にカルヴァリァを赤く染めた咎人と同じ最後だとおもへば上等なことぢゃござひません?


 どうせ病ひに採られるものを欲しがるなんてまァ みな 酔狂だとは思ひますがね


 そもそも御方の寵をゐただけれなかったのも まァ 嫁ぐまへからわかつておりましたひ


 だってわたくしのうじでは ね あたりまへでさう?

 けど生まれるまへのことから嘆いてちゃ

 面倒でしかたないし 疲れてかなわないわ


 あら いくらわたくしだってそんな面倒は 御免ですよ


まァ そんなヒトでも夫ですから

あとつづくぐらひはね してみせても いいんぢゃないかと


でもそんな風情ですませてしまつたら 貴方がお暇ですわね

せつかく御勤めにいらしたのに


 ああ では ひとつ悔ひてみせまさうか


 ええ あててごらんになって?

 まァ 悪戯ふざけてなどおりませぬ


あらごめんなさゐな 哂つておりましたか

だつて 貴方があんまりくるくると貌を変へるものだから愉しくて

あ 赤くかわりまひたよ ふふ

だから 悪戯ふざけてなどおりませぬつて


ええ貴方

貴方でふよ


わたくしの悔ひは 貴方


貴方にあんな あんな貌 させてしまったこと


それをひとつ 悔ひておきませうか

ねぇ 貴方


翌日 朱鷺色の薔薇をあしらつた留袖に身を包み、娘は異国の地で果てた。其の足に履いてゐたのは草履では無く、不似合ゐな黒ゐ革靴だつた。


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