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MEMORYS

天の川

 ねえ、織姫に彦星。

 あなた達は一年に一度しか逢うことが出来なくて、寂しくない?

 私は……淋しくて、辛いよ……。



 私には、約二年前から片想いの人がいる。

 その人は他県に住む同じ歳の人で、うちの民宿の常連さんだ。まあ正確に言うと、うちの近所に巨大なテニスコートがあって、彼の入っているテニス部がそこで合宿をする為にうちを毎年使っているってだけなんだけど。


 一年に一度、二週間だけ逢える私の彦星様――


 こんな風に表現すると、柄じゃないとか自分はどれだけ恥ずかしい人間なんだとか思ってしまうけど、これしか思いつかない。

 それ程に私にとって彼と逢えることは大切で、彼が大好きなのだと思う。

 それと同時に、もう逢えないのかもしれないという不安が押し寄せてくる。

 二年。

 それは私が彼に片想いをしている期間であると同時に、初めて会った高一の夏から流れた年月でもある。


 そう。高三の彼が来年合宿に来ることはない。


 もちろん、この合宿はレギュラーと準レギュラーのみの参加らしいから毎年必ず来る保証なんてない。だけど彼や彼の友人兼仲間の人達は必ず来ると約束してくれて……実行してくれているからそこに不安なんてなかった。


 だから、今年も来てくれるって信じているよ。


 住所もケータイの番号も知らない私には、そう信じて待つことしか出来ないけれど。

「……早く、逢いたいな……」

 早く逢って、色々なことを話したい。

 この街であった出来事、彼らの練習を見学して興味を持って始めたテニスのこと、そして……



 最後かもしれないから、胸にあるこの温かい気持ちを……。



「誰に、逢いたいんだ?」

 不意に後ろから投げ掛けられた言葉と、何よりその声に驚いて振り向く。

「ど……して……?」

 だってまだ、合宿日まで日がある。ここに彼がいるわけがない。

「そんなに驚くことはないだろ?」

「だって……」

 けれどそこにいるのは、紛れもなく彼だ。見間違えるわけない。

 私のそんな様子に、彼は浮かべていた苦笑を優しい微笑みに変えた。

「……やっと逢えたな。……待たせて、ごめん」

 その言葉に、首を振って駆け出した。




 私は今日という日を決して忘れない。

 そして、彼の背中を押してくれた彼の友人達のことも。





 もう、約束は要らないね―――







最後の「もう約束は要らない」を書きたいがために生まれた作品です。そしてこのテニス部は、『聖バレンタインデー』のテニス部と同じです(←)

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