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私とアイリスの判断は




紅竜は確かに本や話の通り、とてつもない巨体だった。全身を黒がかった赤の鱗に覆われ、角が3本生えている。大きな2本は頭から、他の種には見られない小さめの角が額からひとつ。


紅竜は羽をたたむこともせず投げだしたままで、ぐったりと目を閉じている。


「ちょっとこれは…デカすぎる気がするんやけど」

「ですよね。こうして緑竜と並べると余計に…」


先輩2人が言っているように、従来体格としては二人乗りサイズの緑竜種二頭か三頭分くらいなのに対して、この紅竜はゆうに五頭分。頭から尾の先までで15mを超える異常な個体だったのだ。


『気を失ってるだけみたいだ』


アイリスがナチの隣に立った。


「……。へー」


それを睨みつけてナチはセリナのほうへ向かった。そんなに簡単に許してやるか。


「どうだ?」


紅竜の気が立つと危険だと竜たちを残して、グレッグが合流する。というかアイリスはいいのか。あいつも一応は竜だ。


そもそもデントやチェスのように竜の姿のままの竜のほうが一般的なのだ。竜も長時間人の姿をとるのは疲れるらしい。ただアイリスは寝る時でさえ、アイリスが寝ているところはあまり見たことがないが、人の姿で寝る。自分の人間姿が好きなのかと聞いた時には、心底馬鹿にした目で見られた覚えがある。だから本当のところどうなのかはわからないままだったり。


「近づいても反応がありません。…かなり衰弱しているようですね」


そろそろと紅竜に近づいてみる。アイリスがやめとけと言っているが、あいつの言うなんぞ聞くものか。ナチの身長と同じ大きさの紅竜の頭、閉じられた目を覗き込もうとするとアドルに呼び止められた。


「ナッちゃん、紅竜のそばは熱いですよ」

「うん?熱でもあるのか紅竜」

「いえ、紅竜種には火を吹く竜もいますし…先ほど牙の間から火の粉が飛んでました」


え。とナチは固まる。


「熱もあるんでしょうけどねぇ。ほら呼吸が荒いでしょ?」


あ、危なかった…。思いっきり触ろうとしてた。もし触って目を覚ましたら黒コゲだったかもしれない。


「それじゃ早く連れて帰らんとな。ほっといたら死んでしまうよ?」


セリナが言うとグレッグは渋い顔をして応じる。


「連れて帰りたいのは山々だがな」


彼は紅竜の巨体を見上げる。皆、ああ、と納得した。


「緑竜じゃ運べないだろう」

「やなぁ」

「緑竜は三頭いますけど…ちょっと無理でしょう。お手上げですね」


かといって放置することもできない。


なんでマリンガに墜ちたんだ紅竜。町中に墜ちて家を壊さなかったのは非常に偉いが、他の支部の管轄ならここより人も竜も多いからきっと運べる。丈夫な布に紅竜を乗せてその布を緑竜達が引っ張って飛ぶとか。


「起きてくれたらいんですけどね」


でも起きたら燃やされるやん?とセリナがアドルの肩にあごを乗せて頬を膨らませる。


「…あ」

「うん?どしたん、ナッちゃん?いい案あるんか?そうなんか?」

「あ、ダメだ、無理だった」


すぐさま撤回しても遅かった。ナチに注がれる先輩達の輝く視線、グレッグまでどことなく期待しているような。一般人がやって来て危険が及ぶ前に紅竜を退かさなければならないからだ。


視線に押し負けてナチは口を開いた。


「あの紅竜がデカイからいけないんだろ?じゃ、人の姿になってもらえばって思っただけで…でもあいつ気失ってるし」


交渉なんてできないぞ、そんな人柱みたいなこと私はしないからな!


「だが、それしか思いつかんな」


わっ、ちょっ、グレッグなんでこっち見てるんだ。最年長だろ、ここはグレッグが行くところだろ。


「最年長が行け!グレッグ、火吹かれても死ななそうだっ」

「なんだそりゃぁ!そりゃナチ、お前のことだろう」

「…え。せ、セリナさん?なんで僕のこと見てるんですか!?」

「アドルならフラーっと行ってお願いしてまたフラーっと帰ってこれそうやん」


ギャーギャーと終わらない言い争い。その様子を呆れた顔で眺めていたアイリスは、あくびをひとつした後、うるさい人間達の横を通り過ぎて紅竜に近づいた。呼吸の度に火の粉が散っている。


『紅竜』


そっと語りかけ鼻のあたりに触れる。ひどく熱い鱗が手のひらを焼いたが構わずアイリスは紅竜に語りかける。


『俺は緑竜だ、落ち着け。…あいつらはお前を助けるつもりだ。…迷惑なことかもしれないが、聞いてくれ』


紅竜の目がゆるゆると開く。ぼんやりした金色の目がアイリスを捉えたような気がした。


『人間の姿に変われ。そうすればあいつらの竜で、休める場所までつれて行くことができる』


紅竜はまた目を閉じて沈黙する。


『いろんな事情があるんだろうけどな、その辺を詳しく追求するような面倒くさいやつはここにはいねぇから』


金色の目がアイリスに向けられ、次の瞬間には赤い巨体が消えた。


「…!アイリス!?」


ナチが気づいて駆け寄った時、アイリスのそばに倒れていたのは、赤い髪の青年だった。




やっと書けた…!テストなんて

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