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モコモコ動画革命団  作者: 彩坂初雪
第一章
5/58

だったら、とりあえず

「黒木先輩、それから芽依」

 と、黙っていた真がはいと挙手する。

「はっきりさせよう。黒木先輩は、その今のモコモコ動画の状況を、どうにかしたいと思っているわけですよね?」

「ああ。その通りだ」

「で、芽依は適当に流すのが一番いいはずだと思っていると?」

「まあ、そうなるかな」

 それを聞いて、真は一言。


「だったら、とりあえず一緒に行動してみれば?」


 そう言った。

「正直な話、俺はどっちかって言うと、黒木先輩の意見に近い。コメントするにしても、もうちょっと言い方があるだろうっていうものとか、そこまで気にする必要はないんじゃね? ていうものはいくつか見たことがある」

 さっき、連れて来られる前にそんなようなことを言っていたな。

「だけど、芽依の言うことも一理ある。それも、なんとなく分かった。結論、なら、とりあえず一緒に行動して、互いの意見の行く末を互いに見ていけばいいんじゃないか? 芽依だって、今のこの状況を面白くないと思っているのは確かのはずだろ?」

「そりゃ、まあ……」

「ふむ。悪くはない、か……?」

 俺と先輩が頷く。

「よし、なら決まりだな。決まってなにかをするとかっていうんじゃないんだろ? 部活とかそういう面倒くさい縛りは嫌いだけど、こういうノリなら俺も入るぜ。どうせ四人しかいないみたいだしな」

 高校時代からの付き合いだが、真は案外びしっと決める時には決めてくれる。

 普段はただのノリがいいだけのボケ役だが。

「それじゃ、黒木先輩、よろしくお願いします」

 真が先輩と握手をする。

 俺も、それに習っておいた。



     ◆



「で、入るのは構いませんけど、さっき、なにをしていいのか分からないって言ってましたよね? なにをするんです?」

 現在、午後五時を回っている。

 ここ、御櫻総合大学は、基本的に七時までならどこの教室でも使って良いことになっている。節電が義務付けられていたり、戸締りをすることなどは定められているが、それ以外は自由になっている。

 まだ四月の初めだ。肌寒くなってきたため、暖房をつけた。

「なにをすると言われてもな。さっきは強気なことを言ったが、実際、私もどうすればいいのか迷っているところなんだ。芽依君が言ったことは全て事実で、そんなことくらい私も分かっているからな」

「つまり、ノープラン、と?」

「平たく言えば、そうなる」

 机に肘をついて、先輩は気だるげに言う。

「考えてはいるんだがな。動画サイトに訴えるのだから、動画を作ってそれをアップするというのも一つの手だろう。今の現状とか、そういうことを書くなり声で訴えるなりしてな」

「でも、そんなの誰が注目しますかね? というか、叩かれて終わりじゃないですか?」

「それが見えてるからやらないんだよ」

 一緒に行動するとなった以上、意見を聞いたり出したりするくらいは構わない。

 実際に行動するのは先輩と、他二名に任せるとして。

「なあなあ、運営してる人たちに直接言うのってダメなん?」

 真が意見を出すが、俺と先輩は顔を見合わせて、ため息をつく。

「それでどうにかなるならしてるって……。通報できるシステムもあるしな。目に余るほどの行為が確認されている場合は、強制的にアカウントを停止させられるよ。そういう処分がくだったら、コメントの書き込みとか、動画投稿とか、できなくなる」

「なら、片っ端からやってけばいいんじゃね?」

「あのな、真、何人いると思ってる? 数人単位で動いた程度で収まるものだと思うか? それに、どこからが罰せられるレベルで、どこからがそうでないのか、運営にだって分かってないはずだよ。なまじ言論の自由とか言っているせいで、その辺りの線引きができなくなってるんだよ」

 もっと言えば、と先輩が付け足す。

「これは私もやってることだが、アカウントを複数持つことも可能なんだよ。つまり、一人の人間がさも何人もいるかのように振舞っているということもある。そんなものをどうやって止めろというんだ? 運営に通報して、アカウントを一つ二つ停止させたところで全く意味はない。それは不可能なんだよ」

 たぶん、運営の人たちも、今の状況を好ましく思っていないだろう。

 本来であれば、ちょっと完成度が低い動画でも、「こうしたら良いのではないか?」とか「ここを直せばもっとよくなると思うよ?」というコメントが増えると良いのだ。誹謗中傷がありふれてしまっている現状に、運営が満足しているとは到底思えない。

 だが、既にそれが大きな流れになってしまっている。

 どうしようもないのだ。


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