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モコモコ動画革命団  作者: 彩坂初雪
第一章
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そのための

 きっぱりと、言い切った。

「昔がどうだったか、とかそういうことはこの際置いておく。おそらく、芽依君は同じような感覚を持っていると思うが、今のモコモコ動画は腐っている。本当に価値がある、評価されるべきだと思われる動画は褒められるのに対して、ちょっとでもミスがある動画、突っ込まれる点がある動画は視聴者に散々こき下ろされる。ただバカにされるだけならまだいいが、なかには、『こんな糞みたいな動画あげるな』とか、『タヒネ』、『キモイ』、『帰れ』のような、とんでもないコメントまである始末だ。こんな状態で、一体なにが楽しいのか、私には理解できん。だから、もしもこのまま続くようなら、なくなってもいいと思っている」

 語気を強めて、先輩は言う。

 理解は、できる。

 そうなのだ。今のモコモコ動画は良作を持ち上げる反面、あまり完成度が高くない動画は比喩でもなんでもなく、フルボッコにされる。叩かれまくる。

 いや、正確に言えば、そうではない。見向きもされない動画もあるのだ。コメントがくるだけマシと考える人もいるだろう。だが、先輩の言うように、変に注目されてしまうとかなり悲惨なことになる。

 それは、俺自身が身をもって体験していることだ。

「だから、私は同じような気持ちを持っている人を集めて、ちょっとでもいいから、この流れを変えることができないかと画策しているわけだ」

 最後に、「情けない話だが、まだなにをすればいいのかは分からないが」と付け足す。

「……」

 俺は数秒、頭の中でその意見を転がし、それから言う。

「先輩、一ついいですか」

「なんだ?」

「先輩の言っていることは間違っていませんし、むしろ賛成します。でも、そのためのNG設定じゃないんですか?」

 横から真が「NG設定?」と聞いてきたので、説明しつつ、話す。

「自分が気に入らないコメントやユーザーを登録できるシステムだよ。NG登録すると、ユーザーの場合、そのユーザーが書き込んだコメントは全てが、コメントを登録すると、その文字が含まれたコメントが、表示されなくなるってものだ。……で、先輩。これを使えば、別に嫌な書き込みとかを見つけても、無視できるはずです。わざわざ、そういう人たちに噛み付いたりすると逆効果になるんじゃないですか?」

 反論すると、以外なことに、先輩はむぅと押し黙る。

 この人の雰囲気から、もっと理由を並べて押してくると思ったんだが。

「そうなんだよな……。芽依君の言っていることも、ある種正しいんだよ。ただ、個人的にどうでもいいようなことで批判されたり、どうしてそこまで言われなくちゃならないってくらいバカにされているのを見ると我慢ならないんだ」

「でも、本人が動画を消去したりしないっていうことは、別に構わないんじゃ? 他の人が首を突っ込んでとやかく言う必要がありますか?」

「じゃあ、芽依君はこのまま黙って見ていた方が良いと言うのか?」

「……」

 そう言われると、詰まってしまう。

 自分にもそうした批判が向けられたことがあるからこそ、できることなら変えたいと思っているのだ。ただ、そういう批判をして楽しんでいるような人たちは、下手に噛み付くと、それを理由にもっと批判してくる。言い合いをしても無意味だし、埒が明かないのは眼に見えている。それも、一人や二人ではないのだ。

 どうしようもないんじゃないだろうか。

 納得はしていない。けど、黙っているしかない、というところだろうか。


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