そうなるだろうな
「その他に質問は?」
綾瀬さんに促され、質問する。
「昔荒らしをしていたっていうのは?」
「本当だ」
すぱっと回答がくる。
「じゃあ、どうしてMDKに入ったってどうして?」
「特に理由はない。……ただ、過去とはいえ、荒らしをしていた者として、子供じみたことをして他人に迷惑をかけている奴らをどうにかしようとは思うがな」
ふん、と鼻を鳴らす。
「そっか。……じゃあ、もう一ついい?」
「なんだ?」
「どうして、荒らしをやめたの?」
荒らしを撲滅しようとしている俺たちにとっては、かなり重要な質問だ。
俺だけでなく、真も真剣な表情で綾瀬さんを見つめる。
「……」
俺たちの視線を真っ向から受けて、綾瀬さんははあ、とため息をつく。
「そうなるだろうな」
いかにも面倒くさそうに言う。
「荒らしをしていた人間がどうすれば変わるのか、昔、荒らしをしていた人間に聞けばヒントも出てくるってわけだ。その点については、ごもっともだ」
正直、俺たちは今、行き詰っている。
どうすれば荒らしをなくすことができるのか、分からないのだ。
椎谷先輩一人でさえ、手に負えなくなっている。解決策をそのまま示してくれなくても、なにか、参考にできるようなことが聞けるのなら、聞いておきたかった。
のだが、
「残念だが、あたしの話は全く参考にならんぞ?」
綾瀬さんは視線を明後日の方向と飛ばしてそう言った。
「あたしは誰かの影響を受けて変わったとか、そういうのじゃ全然ないからな。もちろん、荒らしをしている人間の思考については、お前らよりある程度分かると思うが、あたしが荒らしをやめた理由を聞いてもなんの参考にもならん」
「そうなの?」
「まあな。だって、『友達が荒らしをしているところを見ていたら、馬鹿らしくなって、それでやめた』ってだけだからな」
「……」
「な?」
「……」
小説みたいな、素晴らしい友情物語を期待していたわけではないが、一文で済んでしまう理由だとは思わなかった。
「他人が荒らしをしているところを見たことはなかったからな。荒らしをするという行為を客観的に見たのはそれが始めてだったんだよ。で、その時、あほくさくなって、やめたんだ。それ以上の理由はない」
「……」
またペットボトルに口をつける綾瀬さんを見て、実際そんなものなのかもと思った。
誰かになにかを言われたくらいで簡単に言動を変えられるのなら、誰も苦労はしない。結局その人がなにかに気づいて、その人自身が変わろうとしなければ、変わらないのだ。
綾瀬さんは、自分のしていることを外から見たらどう見えるのか、考えていなかっただけ。そして、それを見た時に、馬鹿だと思って変わっただけ。そこに物語みたいな要素が入る必要はない。
ぼんやりと、そんなことを考えた。
「ぅく。……とはいえ、さっきも言ったが、荒らしをしている人間の気持ちはある程度分かる。それは事実だ」
ペットボトルのキャップを閉め、綾瀬さんは言う。
「あいつと直接話せたのはラッキーだったな。突破口は開けた。あいつ個人に限れば、なんとかできるかもしれないぞ」




