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モコモコ動画革命団  作者: 彩坂初雪
第二章
22/58

ふぁいとっ!

 俺はボールを四つ持ち――

「よっと」

 ジャグリング開始。

 最高、六つまでいけるのだが、五つ以上になると落とす確率がかなり高くなるのだ。ここは無難に、しかし手馴れているところを披露するべきだろう。

〈音楽とか流さないのか?:黒鳥〉

 その間に、先輩からそんなコメントが来た。

 俺は集中していたため、そちらに気を回す余裕はなかったのだが、綾瀬さんが対応してくれたらしい。大きく、オーケーサインを出してくれる。

「で、まあ、落とす確率が若干上がるんですが……」

 二分ほど、四つで続けた後、五つに増やす。

 この辺になってくると、画面など気にしていられない。一瞬の気の乱れがミスに繋がるのだ。五つまでなら、たぶん、なんとかできる。

〈もっと球の数、増やせるの?:名無し〉

 綾瀬さんに再度、ストップをかけられ、コメントを見る。

「あー、六つまでなんとかできるんですけど、難しくて……」

〈ふぁいとっ!:名無し〉

「ふぁいとって……。いや、いいですけど。あ、良かったら名前付けてもらえると嬉しいです。頑張って六つでやりますんで」

 この名無しさん、なかなか気さくというか、はっちゃけたの人かもしれない。

 いや、全員名無しさんで出るから、もしかしたら複数人いる可能性もあるけど。

「よっと」

 俺は手のひらサイズの球を六つ持ち、そのままジャグリング開始。

 たぶん、この辺りになると、素人目にはなにがどうなっているのかよく分からないはず。やってる自分でさえ、冷静に考えるとよく手が動くものだと思うからな。

〈おお、なかなか凄いwww ※ドS〉

 コメントがきたようだが、生憎、それに応える余裕はない。

 ほわたたたたたという感じで、とにかく球を落とさぬよう、まわし続ける。

 が、まあ、もともと長時間続くものではない。

 一分ほどで落としてしまう。

〈もう一回! :ドS〉

「あの、名前がドSって……。このボール六つって、結構神経使うんですけど?」

〈生主ふぁいとっ! :ドS〉

 どうも名前の通り、Sっぽい人のようだ。

 初めての放送でちゃんとこうして、コメントをもらえるのは非常に嬉しいことなのだが、素直に喜べないのは何故だろうか。あと、生主っていうのは、生放送をしている人のこと。つまりは俺だ。

〈もう一回! :黒鳥〉

〈ふぁいとっ! :シン〉

 お前らも、便乗するなし。

「ええと、じゃあ、せっかくなので違うことします。こっちはまだ練習中なんで、すぐ落とすかもしれませんけど、やってみます。たぶん、六つでやるより、難易度高いと思います」

 俺は練習していたヘディングアリのジャグリングをすることにした。

 初めての生放送からする予定はなかったが、この先も見てくれそうな人が来ているのだ。ちょっと頑張ってみるのも悪くないだろう。

 サッカーボールを用意し、いざ、ヘディングを加えたジャグリング開始。

〈生でこれやってる人初めて見た。すごいな:ドS〉

 当然、上を向いているので、画面など見えない。

 なんとか三十秒ほど続けたが、すぐに落としてしまう。

 もう一度やる前に、一度画面に視線を戻すと、

「あ、コミュ登録ありがとうございます」

コミュニティ登録の表示が出ていた。

 おそらく、ドSさんだろう。気に入ってくれたのか、コミュニティに登録してくれた。

 コミュニティ名はモコモコ動画革命団の略称、MDKになっている。ただ、説明文ではMDKの活動内容ではなく、単純に『皆で楽しく動画を撮ったり、生放送できたらいいです』みたいなことが書いてある。

 自分が登録しているコミュニティ内で動画の投稿や、生放送があると、通知が来るようになっているのだ。コミュニティの人数が多ければ多いほど、生放送や動画を見てくれる人が増えるということだ。

「まだテスト放送なのにコミュ登録してもらえるって、なかなか凄いな……」

 呟くと、コメントが流れる。

〈いじめがいのありそうな生主だったからね:ドS〉

「あ、さいですか」

 ドSさん、登録してくれたのは嬉しいけど無茶な要求をしないでくれることを祈っていますよ。現状でかなり頑張ってるので。


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