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モコモコ動画革命団  作者: 彩坂初雪
第二章
21/58

わこつ

「準備オッケーだよ」

 ちょっと、緊張する。

 生放送は、動画と違って取り直しが効かない。初めての放送だ。見に来てくれる人なんてほんの数人だろうけど、それでも緊張する。

 できるだけ練習したし、たぶん、大丈夫だと思うけど。

「ん? お、あ、了解」

 綾瀬さんが突然、両手をこちらに向けてきたので何事かと思ったが、一秒ごとに指が減っている。ゼロになったら始めるよということらしい。

「……」

 ぶっちゃけた話、ユーザーの生放送なんて、適当に流せば良いのだ。

 カウントダウンをして、始まったからと言って、タイトルコールなんてする必要はない。始まった直後なんて、どうせ誰もいないのだから。一枠三十分の内に十人も来てくれたら十分だ。

「よし」

 綾瀬さんの指が全て折りたたまれ、放送開始のボタンが押される。

 俺から見て、カメラが正面にあり、綾瀬さんとPCは右前方にある。

 PCの方へ目をやると、

「おお、映ってるな」

 ちょっと感動する。

 放送画面に、自分が映っていた。

〈わこつー ※黒鳥〉

 と、その放送画面にそんなコメントが流れた。

 わこつというのは、『放送の枠取りお疲れ様』という意味らしいが、生放送特有のあいさつだ。こんにちはとか、そういうのと同じだと思っていい。

「あ、ええと、黒鳥さんいらっしゃい。ゆっくりしていってください」

 返しつつ、先輩早いな~と思う。

 モコモコ動画の生放送では、※の後になにかしらの文字を入れると、それが名前として登録されるのだ。そして、次からのコメントは、放送者側でそのコメントが誰のものなのか判別できるシステムになっている。

 黒鳥というのは、先輩のネームだった。

「ええと、うん、とりあえず、やります、か……?」

 なにを喋っていいのか分からん!

 一応、テスト放送とは銘打っているが、テストならテストなりに、今後しようと思っていることをやってみるべきだろう。

 なにを喋ってみようもなく、俺は脇に置いてあったボールを三つ手に取る。初めての放送だ。緊張しているし、あまり難易度の高いことはしない方がいいだろう。

「ジャグリングしますか」

 前置きをして、初めて見る。

 さすがに、画面ではどうなっているのか確認する余裕はない。

 上に放った球も見えるよう、カメラの位置には気をつけたが、どうなっているか。

「ん?」

 と、ストップと言うように、綾瀬さんがこちらへ向けて、手をばたばたと振った。

 一時中断し、なにかと画面に目をやると、

〈わこつ ※シン〉

 とコメントが来ていた。

 真もきたか。

「あ、はい。シンさんいらっしゃい」

 言って、数秒も経たないうちに、

〈ジャグリングと聞いて:名無し〉

 新たなる書き込みがされる。

 ※で登録されていない人の名前は全て『名無し』さんになる。

 ということは、つまり仲間内ではない人が見に来てくれたということだ。

 生放送の説明文にジャグリングをやるという文章があったはずだ。それを見て来てくれたのだろう。

「あ、コメ番号三番さんいらっしゃいです。……ええと、じゃあ、ちょっとやりますか」

 ここで逃す手はない。


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