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モコモコ動画革命団  作者: 彩坂初雪
第一章
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まず、注目してもらうことが

 先輩が高らかに宣言した……。

「いや、あの? 目立つって、どうしてですか?」

「一昨日も言ってただろう? まず、注目してもらうことが第一だと。真君の動画は、確かに注目が集まったかもしれないが、その分、悪評も流れたはずだ。それを払拭し、さらに活動していきたいとなれば、良い意味で目立つことが必要になる」

 確かに、今後活動していく上では重要なことだろう。

 視聴者の人にまず、良い意味注目してもらうこと。つまりはなんらかの方法で実力を認めてもらうことは必要かもしれない。その上で、真がやったみたいに動画をアップすれば(当然、もっと完成度の高い動画でなければダメだろうけど)、きっとここまで荒れることはないだろう。

 選挙ではないが、まず、注目してもらい、支持層を固めることは大切なことだ。

「まず、真君も含め、私たちモコモコ動画の会員メンバーでコミュニティを作る。名前はMDKでもなんでも構わない」

「コミュニティですか……。それなら確かにやりようがあるかも」

「だろう?」

 先輩はニヤっと笑う。

 コミュニティというのは、ユーザーが何人か集まって作る、ネット内のサークルとか部活とかと同じと思えばいい。そのコミュニティの名前で動画をアップすることもできれば、仲間を集めることもできる。俺たちと同じように思っている人がいれば、入ってくれるかもしれない。

「真君の動画もそこに登録してしまって、いろんなことを展開していけばいい」

「例えば?」

 聞くと、うーんと先輩は考えて、言った。

「音楽系の動画はどうだろう?」

「音楽ですか? メドレーみたいなものを作ってアップしたりするってことですか?」

「そうだ。動画をつけられればそれはそれでいいし、できなくても構わない。人気のある曲なら、基本的に再生数は勝手に伸びるからな。そうなれば、多少でも興味を持ってくれる人が出てくるだろう」

「それはそうかもしれませんけど、最近はそういうの規制が厳しくなってますから、迂闊なことをするとすぐに消されますよ?」

「そこが問題なんだが、しかし、手っ取り早いのはそれなんだよな」

「どうしてです?」

「だって、ほら、音楽を流して再生数稼げるとか、一番楽で効率が良いだろう? 努力も頑張りもほとんどいらないじゃないか」

「……」

 この人は……。

 そんな理由で音楽を選んだのか。

 だが、それには問題がある。

「再生数が稼げることには変わりないですし、ある程度、関心を向けてくれる人がいることも否定しません。でも、大半の人は、お気に入りの曲があったらそれだけに反応して、他のことなんか無視しませんか? 関心を示してくれる人がいると言っても、『ある程度』の人しか反応してくれませんよ? もっと、こう頑張りました! というものがないと」

「むぅ……」

 事実、俺だってしていることなのだ。

 動画サイトには、『作業用』という名前がついた、いくつもの楽曲を連続で流していくだけの動画が多数ある。それらは再生数が伸びることが多く、長い間視聴者が見てくれるものとなる。しかし、その反面、そういう動画見ている(聞いている)視聴者は、その動画が目当てなのであって、その動画をアップした人がどういう人であるのかなど気にしない。

 俺も、好きな曲が沢山ある作業用の動画をお気に入り登録しているが、それだけだ。アップした人が他にどんな動画をあげているのかなどまるで知らない。

「音楽で押すなら、音楽に合わせて、動画を撮影するなり、どこかから映像を持ってきてつけるなり、編集しないと大半の人は関心なんかもってくれないんじゃないですか?」

 言うと、先輩はしょうがない、というようにため息をつく。

「分かった分かった。なら、編集までするよ。楽して得を取れれば良かったが、やっぱり芽依君もそう思うか」

「そう思うかって、最初から分かってたんですか?」

「まあな。ただ、動画の編集って、かなり面倒くさいだろう? いくら大学生で時間があるからって進んでやろうとは思えないんだよ。あ、もちろん、これが革命に繋がるのなら、大歓迎なんだがな」

「ていうか、先輩は動画の編集とかできるんですか?」

「ん? 申し訳程度には、な。あまり完成度の高いものを求められても困るが、経験がないわけじゃない。なんとかなるさ」

 経験がないわけじゃない。

 ということは、先輩も俺と同じく、動画をアップしたことがあるのだろうか。


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