歓迎しよう!
「君たちをモコモコ動画革命団に歓迎しよう!」
俺たちの目の前に現れた彼女はそう宣言した。
黒髪ロングに切れ長の眼。長身で、スタイルも抜群。どこからどう見ても、美人だ。
「ええと、なんでしょう?」
が、それはあくまで見た目の話だ。
校門で待ち伏せされて、いきなり「歓迎しよう!」とか言われても、戸惑う他ない。見た目が良ければなんでも許されるという話は現実世界では起こりえない。人は中身が大切なのだ。
「ふむ。当然の問いだな。ただ、君たちに拒否されると正直、とても困るのだ」
「あの、その前に、自己紹介とか、そのモコモコ動画革命団とやらの説明とか、なにかないんですか?」
「ないな」
あ、さいですか。
「芽依、行かね? 関わるとヤバイ系じゃないか?」
「俺もそんな気がしている……」
隣にいた真と小声で話す。
「鶲芽依君」
「へ?」
「そして、鵲真君」
「え?」
「君たちの名前と生年月日、そして好きな人は調べさせてもらった」
凛とした口調でそう言われた。
名乗ってもいないし、会ったのも初めてだ。
ぶっちゃけ、滅茶苦茶怪しい……。あと、好きな人とかいないし。
「ええと、俺ら急いでるんで」
「待ちたまえ」
ガシ。肩を捕まれる。
「芽依君。君は、今のモコモコ動画をどう思う?」
「……なんですか突然?」
少し詰まったのは、今までのふざけた雰囲気がなくなっていたからだ。
真剣な声音に変わっていた。
「調べさせてもらったところ、君は高校時代にいくつか動画を投稿しているね?」
ドクンと心臓が跳ねた。
「……どうやって、そんなこと調べたんですか?」
確かに、俺はモコモコ動画という動画サイトに、高校時代、いくつか動画を投稿している。
だが、名前は決して分からないはずだし、顔も出していない。しかも、内容はちょっとした大道芸みたいなものを撮影してアップしただけで、再生数もほとんど伸びていない。同じ学校に通っていた人間でも、知っているのは真くらいだ。
と、頭を回転させていると、女性はしれっと言う。
「だって、あれを撮ったのは学内だっただろう? 私は君の先輩だぞ?」
「先輩?」
「ああ。同じ高校に通っていた」
「……」
気が抜ける。まあ、それなら、分かるかもしれない。
「芽依君をその頃から狙っていたわけではなかったからな。動画を見たとは単なる偶然だ。そこは信じてくれ。で、背丈と、大道芸が得意な人間が学内にいないものかとちょっと探してみたら、たぶん、君だろうなと推測したわけだ」
「そうですか」
いちいち調べる必要などないだろうに……。こっちにとってはいい迷惑だ。