侍女選び
侍女候補として上げられた娘は、八人いた。
どれもが一定以上の能力と美貌を持ち、けれどさほど貴い身分の出自ではない女達。
浮いた噂もなければ夜な夜な遊び歩くわけでもない自分にあてがわれる、『遊ぶ』ための人選だ。
彼女らの身上書と推薦状、さらには添えられた肖像画。
七枚目まで読み込んでから、彼は苦笑を漏らした。
「この中から側室でも選んでやれば、爺もおとなしくなるかな」
侍女候補に失礼な独り言を呟き、彼は八人目の肖像画に目を落とす。
途端、言葉を失った。
さらりとした金髪。
細すぎず太すぎずの体型に、おそらくは絵師の趣味であろう家事をしている彼女の絵姿。
これは、絵師の苛立ちの表れだろうか。
瞳の部分だけ、何度も書き直し塗り直した痕跡がある。
さんざん苦心して塗られた翠玉だが、絵師の不満が滴り落ちそうなくらいに伝わってきた。
これほど玄妙に作られてもなお、彼女の瞳は書き足りないのか。
ふつふつと、興味が湧いてきた。
肖像画ではなく、直接彼女を見てみたい。
手元の鈴を振り、彼は小間使いを呼んだ。
「侍従長へ、言付けを頼む」
簡素な手紙をしたため、蝋で封印を施す。
「新たに抱える侍女候補選定の結果だ。選ばれた人間が至急王城へ上がれるよう、最大限の手配をするようくれぐれも申し伝えてくれ」