−三十八章−〜救いの光〜
「ラフィー!マキノとナディアが……っ!」
ガーネットの叫びに、視線をマキノとナディアの方へ向けると二人がその場に倒れている。
周りを改めて見回してみると、立っているのはラフィストを含めサードとティーシェル、
それにガーネットだけだった。
「何とも無かったのに……一体何が……」
こう呟き、ラフィストがちらりと世界樹を見ると、世界樹はこちらを見て笑っていた。や
はりこうなったのは、先程の光によるもので間違いないとラフィストは確信する。
「世界樹、これはお前の仕業だろう!」
「……我の攻撃に耐えられる者に、眠ってもらったまでの事。ルーンの呪によってな。…
…ふふ、我は優しいからな。回復している小娘には当てないでやったぞ」
「何でこんな事を……っ!」
「折角の楽しみに、横槍を入れて欲しくないからのう……それから、我の邪魔をした罰だ。
我は、煩わしい虫けらは嫌いなのでな」
その言葉にラフィストがカッとした表情で、世界樹に剣を向ける。世界樹はそれを戦いの
再開の合図と取ったのか再び手を剣に変え、迫ってきた。ラフィストは世界樹の攻撃を受
け止めると、それを乱暴に押し返す。小競り合い状態になっている二人を見てサードは剣
を握り直すと、ガーネットとティーシェルに皆の事を頼むと告げて飛び出していった。
「でも二人だけじゃ……」
「ガーネット、そう思うなら一刻も早くルーンを解く事を考えないと」
世界樹とやりあう二人を見つめながら、ガーネットがポツリと呟く。そんなガーネットに
ティーシェルが一声かけて、倒れこんでいる仲間の元へ駆けて行った。ティーシェルの言
葉に、ガーネットが今自分に出来る事をしなければとティーシェルの元に行く。するとテ
ィーシェルは、倒れた仲間を見ながら何やら考え込んでいるようだった。
「ティーシェル、どうかいたしまして?」
「……このままじゃ、四人の命が危ないかもしれない」
驚くガーネットに、ティーシェルがある一点を指し示す。示されたのはニックスの腕の部
分だ。そこには、何かのルーン文字が刻まれている。ガーネットはそれが何のルーンなの
か理解できなかったが、恐らく何らかの意味があるもので、ティーシェルにはそれが分か
っているのだろう。
「これは徐々に生命を奪っていくルーンだ……早々に解呪してやらないと、いずれは生命
力を奪いつくしてしまう。……どうやら、僕やラフィストはルーンの加護と創世の剣があ
るし、サードはあの魔石があるから何とかなったみたいだな」
「……解呪なら、リリース・カーズはどうかしら?」
ガーネットの提案に、ティーシェルが静かに首を振る。
「効果が得られる可能性が低すぎる……それよりも、全てを相殺するオフティラインズと、
無効化するヴォイドを合成させた方がいいと思う。僕はラフィストとサードの加勢に向か
うから、出来れば君に任せたい……頼める?」
「オフティラインズと、ヴォイド……」
ガーネットは合成なんて一度もした事が無い。しかもティーシェルが言ったオフティライ
ンズとヴォイドは、両方とも上級クラスの呪文だ。それ自体を扱うのも一苦労なのだから、
合成魔法の難しさは自ずと計り知れた。それをぶっつけ本番で完成させなければならない
と思うと、ガーネットの身体に震えが走る。だが、誰かがやらなければこのまま仲間は死
んでしまうのだ。そう奮い立たせ、ガーネットは大きく頷いた。
「やって、みますわ……」
ガーネットの言葉に、ティーシェルが笑って任せたよと声をかけると、ラフィスト達のい
る前線へと走っていった。そこにラフィストが、後ろに飛びながら一旦さがってくる。
「ティーシェル、四人の方は……?」
「何とかなりそうだよ」
「そうか……くっ!」
朗報にラフィストが一息つくと、そこに向かって容赦の無い一撃が振り下ろされる。辛う
じてそれを剣で受け止めた所に、サードがもう片方の剣をなぎ払って脇に一撃を入れた。
サードの攻撃に世界樹がさがると、サードがラフィストを叱咤する。
「ラフィスト!……今はこっちに集中しろ!」
「ああ……すまない、サード」
「僕も魔法の手数を増やして、隙が出来るよう援護する……二人はそこを攻撃していって」
そう言うと、ティーシェルは身体の周囲に無数の氷の刃を作り出し、世界樹に向けて絶え
間なく放ち始めた。呪文の威力を抑えている事もあり、世界樹は一つ一つ相殺せずにそれ
らの攻撃をかわす事でやり過ごしていく。ラフィストとサードは、世界樹が避けた所を狙
って攻撃を仕掛ける。攻防にキリが無いと見た世界樹が身体全体から風を巻き起こし、ラ
フィスト達の攻撃を一気に退けた。
「……なかなかやるな。フフ……ではもう少し、力を出すとするか」
世界樹から発せられる威圧感が、一気に大きくなる。周りの空気がびりびりと震えたのを、
ラフィスト達は肌で感じた。
「どこまでついてこれるかな……?」
身体から掌圧が放たれる。それは故意に発せられた物ではなく、力を解放したが為に巻き
起こったような物だった。だがその掌圧は、ラフィスト達に大きなダメージを与えるのに
は充分な威力であり、三人は傷を負いながら地面に転がっていく。
「くっ……!」
「今回復を……グロースヒール!」
サードの魔石と、ティーシェルの呪文が三人の傷を一気に癒す。そしていつでも応戦出来
るよう、三人はすぐさまガバッと立ち上がった。世界樹は攻撃するでもなく、それを面白
そうに笑って眺めている。
「ところでティーシェル。いつカオスを使うつもりなのだ?このままでは、使う前に全滅
してしまうのではないか……ん?」
世界樹の軽い挑発に、ティーシェルが沈黙で返す。彼の様子を不思議に思ったサードが、
ちらりと一瞬視線を投げかけると、剣を握り直しながら口を開いた。
「使わないのか……?」
「まだ不完全なんだ……このまま使っても、魔力が空っぽになるだけで大したダメージに
ならない。……せめて、もう少し時間を置かないと」
「なら、それまで何とか粘らないとな……ティーシェル、補助頼む!」
ラフィストの言葉にティーシェルが頷き、右手で世界樹に向けて呪文を放ちながら、左手
でラフィスト達の身体に身体能力を増強する呪をかけていく。それを待たずに、ラフィス
トとサードは世界樹に向けて突っ込んでいった。
ガーネットが右手にオフティラインズの光を出した後、すぐさまヴォイドの詠唱に取り掛
かろうとする。その時、ラフィストの苦痛に耐える声が聞こえた事で、ガーネットの注意
が一瞬逸れる。それとともに左手にかすかに現れ始めた光が突然消えてしまった。
「あ!……すぐに上手くは、いきませんわね」
気を取り直して再び呪文の詠唱を始めたガーネットは、オフティラインズとヴォイドを右
手と左手に形成する。今度は呪文の形成に成功し、ガーネットの顔に笑みが浮かぶ。早速
二つの呪文を合成しようと両手を合わせようとしたところ、その光は相殺してしまった。
「もう一度!」
ガーネットは呪文を唱えながら、倒れている目の前の四人を見る。一見眠っているようだ
が、先刻より顔色がかなり悪い。こうしている間にも、彼らの生命はどんどん削られてい
っているのだろう。気持ちに焦りが生じたのか、二つの呪文の力加減が上手く均一になら
ない。焦ってはいけないと自分に言い聞かせるが、それが逆効果となり余計な力が入って
しまう。その瞬間、手に溜められた呪文が四散すると同時に、行き場を失った力が暴走を
始めてガーネットに襲い掛かった。
「きゃっ!」
「ガーネット!」
ガーネットの声によってラフィストの注意が彼女に向く。その隙をつかれ、ラフィストは
世界樹の攻撃を防御しきれず、腕に傷を負ってしまう。
「ラフィー、大丈夫ですわ!」
ラフィストに心配かけてしまったせいで、負う筈の無い傷を彼に負わせてしまったとガー
ネットは自分を責めた。前線で戦っている三人に視線を向けると、ギリギリの戦いを強い
られながらも、後方にいるガーネット達に攻撃の余波がいかないよう、仲間の盾になりな
がら戦っていた。自分が呪文に集中できるのも、彼らが前で今自分に出来る事をやってい
るからなのだ。前で戦っている三人の為に、仲間の為に、今自分に出来る事は合成魔法を
成功させる事だと言い聞かし、ガーネットは再び呪文に取り掛かった。
「古の英知を今ここに成さん……」
オフティラインズとヴォイドを慎重に合わせていく。一瞬、手の中がカッと光り辺り一帯
に眩い光が走った。失敗かと思い思わず目を瞑ったガーネットが恐る恐る目を開けていく
と、手の中には一つの光が残っていた。
「これが……合成、魔法……?」
手の中の光りを倒れている四人に向け、魔法を発動させる。
「皆、目を覚まして……」
倒れている四人を、淡い光りが包み込んでいく。光りが消えるとともに、四人の瞳がゆっ
くりと開かれていく。ガーネットは喜びの余り、一番近くに寝ていたナディアに涙を浮か
べながら縋りついた。
「ガーネット……?」
「ラフィー!上手くいきましたわ!」
成功した旨を戦っている彼らに告げると、ラフィストと視線を交わした後に、サードが一
旦後方へと下がってきた。そしてマキノに接近戦で、ニックスに中距離間で、キルトに遠
距離間でのラフィストの援護を手短に頼んだ。三人がラフィストの元へ行ったのを見届け
た後、サードがナディアの方へ向き直った。
「なかなか決定的なチャンスが作れない……そこでナディア、お前に頼みがある」
「何よ」
落ちていた杖を拾い上げ、自分の肩にトンと乗せる。
「もうそろそろ、ティーシェルがカオスという呪文を使うはずだ。その前にカオスを避け
きれない、カオスの後の攻撃を直撃させる状態にしたいんだ」
「でも、呪文は意味無いわ……補助しか出来ないわよ?」
ナディアの返答にいや、と答えサードが軽く首を振る。
「魔法ならな……だが、俺の魔法剣は効いてる」
ここまで言われれば、ナディアも彼が何を言わんとしているのか理解できた。何の呪文が
いいのと尋ねると、サードは一番強いのをぶっ放せと答えた。ナディアが現時点で使える
一番強い呪文は、弟が残してくれたメテオだ。ナディアがメテオを詠唱している間も、ラ
フィスト達は世界樹と激しい攻防を繰り広げていた。
「ほう、やっとお目覚めか……」
「うっせー!くらえ、ライジング・サン!」
「くっ!」
避けづらい所に投げられたせいか、世界樹が少しバランスを崩す。それを見逃さずに一気
に間を詰めたニックスが足払いをし、バランスを立て直す時間を与えぬよう一撃を入れる。
その後ろから飛び出したマキノの攻撃がクリーンヒットし、そこを狙ってラフィストも続
いていった。
「くっ……!小賢しいわ!」
「わっ!」
「きゃあ!」
「うお!」
回復の間を与えずに一気に畳み込もうとしていたラフィスト達が、身体から放たれた掌圧
によって吹き飛ばされる。身体中がどんどん切り刻まれていくが、それをガーネットの回
復魔法がラフィスト達の傷を一気に癒していく。
「ガーネット!すまない!」
「いいえ!……でも、流石にもう魔力が空っぽですわ」
ガーネットの魔力が尽きた事により、ラフィスト達の戦況はより悪化した。まだティーシ
ェルの回復魔法や、サードの魔石があるとはいえ、無駄に傷を負う事が出来なくなったか
らである。相対する世界樹の方は、先程負わせた傷も癒えきっている。身体を取り巻く威
圧感のような物も、どんどん大きくなっていっているのが分かった。
「とうとう向こうも、本気になってきたな……」
ラフィストは荒くなってきた息を整え、額から流れ落ちる汗を袖でグッと拭いながらポツ
リと呟く。そんなラフィストの言葉に、ニックスが同意を漏らす。
「何つーか、身体を取り巻く威圧感みたいのが凄ぇ……」
「でも後は、やれるだけやるだけよ!」
そう言うと、マキノがいの一番に世界樹に踊りかかっていく。ラフィスト達も遅れじとそ
れに続いた。世界樹はマキノの攻撃をヒラリと避け、続いて飛んできたキルトのライジン
グ・サンを殺到してきたニックスに向かって弾き返す。仕掛けようとしていたニックスは、
回避に切り替えて後方に飛びさがった。攻撃に転じようと、手を剣に変えた世界樹の足元
を狙ってティーシェルが無数の氷刃を放って足止めをした所に、ラフィストが一撃を放つ。
「貴様ら……」
ラフィストの攻撃を辛うじて受け止めた世界樹の目に、ナディアが詠唱している姿が映る。
それを妨害しようと、攻撃を受け止めているのとは反対の手で、掌圧を放った。掌圧の放
たれた先に気が付いたキルトがナディアの盾となり、代わりに掌圧をその身に受ける。吹
き飛ばされたキルトの元に、慌ててガーネットが駆けつける。
「キルト、大丈夫ですの!」
「ああ、そんなに酷くない……」
ガーネットに笑って見せた後立ち上がろうとしたキルトの元に、ティーシェルが前線から
さがってくる。ティーシェルはキルトに回復魔法をかけると、彼にカオスの詠唱を始める
と告げた。キルトは一つ頷くと、再び前線へと戻って行く。ティーシェルは杖を地面に置
き、手を覆った布を破り取ると詠唱を始めた。彼の詠唱と呼応するように、手の甲にルー
ンの紋様が鮮明に浮かび上がっていく。前線で繰り広げられる激しい攻防は、回復手がい
なくなった事で一気に激しさを増した。決定打が無いまま、身体に受ける傷だけがどんど
ん増えていく。
「見苦しいな……!」
「わっ!」
「きゃあ!」
世界樹と競り合う形になっていたラフィストとマキノが、軽く掌圧を当てられた事で飛ば
される。しかし、二人共素早く体勢を立て直し、再び立ち向かっていく。
「無数の光は神々の涙となり、汝の体へと流れ落ちるだろう。其の輝きは裁きの炎となり、
彼の者に罰を与えん……メテオ!」
ラフィスト達が再び世界樹に向かって行った時、詠唱を終えたナディアの呪文が、サード
に向かって放たれる。サードはメテオに向かって剣を向けると、一気に魔石の力を解放さ
せた。大剣につけられた魔石が光り、メテオをどんどん吸収していく。吸収された魔法は
増幅され、剣へと伝っていった。攻撃を仕掛けようと剣を構えたサードに、ティーシェル
が視線で合図を送る。
「皆、退け!……ラフィスト、攻撃の準備を!」
サードの声に、ニックスが足払いをかける。世界樹の体勢が崩れたのを見計らい、一同は
一気にその場から離れた。そこにサードが殺到し、全身全霊を込めて剣を繰り出す。サー
ドの剣は世界樹の右肩を捉え、バッサリと一刀両断する。世界樹がサードを吹き飛ばして
右肩の再生を始めたと同時に、ティーシェルの口から言霊が発せられた。
「カオス」
黒い光が辺り一面を覆いつくし、ラフィスト達の視界を奪った。視界が闇に奪われていた
のは一瞬だったのか、それとも長い時間だったのか、ラフィスト達にはわからなかった。
しかし視界がクリアになった時、目の前には黒い光に包まれて血まみれになっている世界
樹が立ちつくしていた。
「これが、カオス?……何じゃ、傷が塞がらん……」
「その呪文の副作用が、構成の破壊だからね―――……カオスを受けた以上、傷の再生は
もう出来ないよ」
「そんな……我が、我が……壊レテイク……」
身体が自然再生される度に、世界樹の身体からどんどん血が流れ落ちていく。そしてつい
に、残った左手までも腐り落ちてしまった。狂ったように自身の身体を見ている世界樹を
見つめながら、ラフィストが創世の剣をスッと構える。構えられた剣に、眩いほどの白い
光が迸った。
「コレハ……ヒカリ……?」
「もう、苦しまなくていい……これで終わりにしよう、世界樹」
「ラフィー!」
仲間の声を背に受け、一筋の光を背負ったラフィストが地を蹴り、飛び上がる。
「あぁぁぁぁ!」
振り下ろした剣圧が何重にも走り、剣の光が竜となる。光がこの空間を覆い尽くした時、
世界は一瞬白の世界となった。
沈黙、孤独。いつも自分の隣にあるもの。希望や生、そんなものは存在しない。夢?一体
何を望むというのだ。光?眠りにつく時、全てが暗黒の世界だった。そう、私は一人。私
の傍には誰もいない。名も無く、満たされる事など永遠に無いのだ。
「生きたい?」
「死にたい?」
「生きたい?」
「死にたい?」
「生きる?」
「死ぬ?」
「生きる?」
「……―――死ぬ」
あの日から、永遠に近い時間の中で繰り返されてきた自問自答。
「本当は寂しいのではないか?」
「……―――否」
「本当は何かを望んでいるのではないか?」
「……―――否」
「本当は……生きたいのではないか?」
「……―――否!」
「否、否、否、否、否、否、否っ!」
全ての疑問を懸命に否定してきた世界樹に、ラフィストは自分にもう苦しまなくて良いと
言った。苦しんでなど、いないと言うのに。ならば何故、自分はあの光に安堵していたの
だろうか。そう思った時、世界樹は差し伸べられた手を見た気がした。ラフィストが自分
に向かって手を差し伸べながら、微笑みかけて立っている。不意に、世界樹の中から熱い
物がこみ上げてきた。忘れかけていた大切な何かを、思い出した気がしたのだ。刹那、ラ
フィストの姿が違う人物をかたどり始める。その人は優しく微笑み、世界樹に告げた。
「もういい、行こう」
その言葉が届いた瞬間、世界樹の身体をラフィストの剣が切り裂いていった。世界樹の身
体が淡い光に包まれていき、どんどん形が無くなっていく。
「そうか……我は、ずっと……サミシカッタ……ノカ」
「っ!……世界樹!」
悲痛な表情をしたラフィストが、叫ぶ。視線をやってラフィストを見た世界樹は、何故ラ
フィストがそんな顔をするのか分からなかった。世界樹自身は、穏やかな気持ちだったか
らだ。光の先でフレッドが待っているという事が、世界樹をそういう気持ちにさせていく。
全てから開放された心地良さに瞳を閉じると、一筋の涙が零れ落ちた。
「よい、よいのだ……コレデ。フフ……こんなに穏やかにいけるとは……。死ハ、ヤサシ
イのだな……ラフィスト……―――」
光が空気に溶け、完全に世界樹の身体が消える。世界樹が消えてもなお、ラフィスト達は
ボンヤリと宙を眺めていた。
「終わった……んだよな?」
「ああ……―――」
「もう、クタクタだよー!」
マキノがゴロリと地面に寝そべる。
「疲れた……―――」
漸く緊張が解けたのか、他の仲間も続けざまに寝そべり始める。
「世界樹も……さ。寂しかったんだよな」
「そう、ですわね……」
突如、地面がガクンと揺れ、その後に身体の感覚が軽くなる。突然の異変にサードがガバ
ッと起き上がり、辺りを見回し始める。
「何だ!まだ他にも……―――!」
「落ち着いて、サード。封印が解けて、この島が地上へ戻ってるんだよ―――……大丈夫」
「戻ろうか……俺達の地上へ」
自分達のあるべき場所へ、人々の元へ戻る為、ラフィスト達は立ち上がった。