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−三十章−〜愛というもの〜


食堂の出口に水の張った大きな桶が置かれており、中には様々な色のガラス瓶が浮かんで

いる。ここでジュースを売っているらしく、そこにいるマキノが真剣な表情で眺めている。

どうやら、何味のジュースを選ぶか迷っているようだ。そんなマキノの背後に、人の影が

ぬっと射す。

「何してるの?」

「ひゃあ!」

突然背後からかけられた声に、マキノが奇声をあげる。マキノがばっと背後を振り返ると、

後ろに立っていたのはティーシェルだった。彼の顔は奇声をあげたマキノより、驚いた表

情をしている。いきなり叫ばれて、逆にびっくりしたようだ。落ち着きを取り戻したマキ

ノがどうしたのと声をかけると、これから自室に帰るところと返ってきた。

「マキノは……ジュース?」

桶を覗き込んで中を確認したティーシェルが、買うのかという意味を込めてマキノに問う。

マキノはそれに頷くと、色々あってどれにしようか迷っていると答えた。マキノの言葉に

暫く考える仕草を見せたティーシェルが、桶の中から何本か適当に取り出して宿の主人に

お金を払う。

「そんなに沢山飲めないって、ティーシェル」

「なら僕の部屋に来ればいいよ。ラフィストもいるし、三人でコップに分けて飲めば色々

な味が楽しめるでしょ。マキノもその方がいいんじゃない?」

「あ、なるほど」

ティーシェルの提案に、マキノは素直に礼を言う。正直、どれも飲みたくて仕方が無かっ

たというのがマキノの本音だ。鼻歌交じりに階段を昇り部屋のドアを開けると、中ではラ

フィストが剣を磨いている所だった。

「あ、おかえり……って、マキノも一緒なのか?」

「やふー!お邪魔ー!」

部屋の中に入り、近くにあった椅子に座る。マキノが座った椅子の前に、ティーシェルが

部屋に設置されたテーブルを動かし、そこに買ってきたジュースを置いた。剣を磨き終え

たラフィストが剣を鞘に収めると、マキノがラフィストを手招きする。訳も分からないま

まラフィストが寄って行くと、マキノによってテーブルの前の椅子を勧められた。ティー

シェルが持ってきたコップをマキノに手渡すと、マキノがそこにジュースを均等に注いで

いく。ここまでくれば、流石のラフィストも何をしようとしているのか理解できた。

「飲み比べでもするのかい?」

「ま、そんなとこかな〜」

コップを他の二人に手渡すと、マキノが上機嫌でジュースを飲み始める。ラフィストもコ

ップに口をつけると、口内に甘酸っぱい味が広がっていく。これはどうやら林檎のジュー

スらしい。キルトとの剣の修行で疲れきった身体に染み渡っていくようで、ラフィストに

はジュースが美味しく感じられた。

「美味しいね、これ」

「まだまだ色々あるよ!えっと……オレンジでしょ、葡萄でしょ、パイナップルに、ピー

チ。それから……」

「僕は、ツァラ特産のパパイヤが気になるな」

「そ、そうなんだ……というか、あれだけお酒飲んでてよく飲めるね、ティーシェル」

彼らがどれだけ飲んでいたかは知らないが、こんな遅くの時間まで飲んでいたという事は

かなりの量を飲んでいたに違いないと、ラフィストは思っていた。そんなラフィストに、

飲兵衛なのはナディアとキルトだけで、自分達は大して飲んでいないと反論する。要する

に、彼らと一緒にするなと言いたいらしい。だがそんな彼らと一緒に飲んでいる時点で、

充分飲める口なのだろうという事は、ラフィストには容易に想像がついた。これ以上何か

言っても反論しか返ってこないだろうと結論付け、ラフィストが苦笑いを浮かべていると、

それまで黙ってジュースを飲んでいたマキノがねえ、と声を上げる。

「折角だし、何か話しよーよ!……じゃ、まずティーシェルから」

「えっ!何で僕から……」

「時計の下にいるから」

マキノの安直な理由に、ティーシェルは文句を言うのを諦めたらしい。

「んー……昔の話だけど、実は七年前まで凄く髪の毛長かったんだ。魔導士は魔力を高め

る為に髪を伸ばすのが、結構支流で……あ、写真見る?」

「見る見る!わー、可愛いー!」

「本当。この頃のティーシェルって、女の子みたいだな」

取り出された一枚の古い写真を覗きこんだ二人が、口々に感想を述べる。腰まで髪がある

姿は、男と言うより女の子に近い。ここまで女の子に近いと、俺たちと違って女装しても

笑えないんだろうなという気持ちが、ラフィスト脳裏に浮かぶ。女の子はマキノのように

純粋に可愛いと思っているだけでいいが、男は男としての矜持もあるからそうはいかない。

多分からかわれたり、遊ばれたり色々な意味で大変だったんだろうと思い、軽く同情した。

「あ、でも何で今の髪型に?」

「一言で言うと、ナディアに切られた」

「ナディアに?何でー?」

「何か、男が可愛く見えるのは道理的におかしいとか、嫌とか言ってた……」

そんな理由で、人の髪の毛をバッサリ切るとはナディアらしいと思い、二人は笑みを浮か

べる。それ以降髪の毛を伸ばしていない所を見ると、ティーシェルも髪に拘ってはいない

ようだし、問題は無かったのだろう。

「はい、おしまい」

「これだけー?」

ティーシェルの短すぎる話にマキノが不満を漏らすが、ティーシェルはもう無いしと言っ

て、さっさと話を切る。これ以上食いついても同じと思ったのか、マキノはそれ以上追随

するのを止めた。

「じゃ、次は私が話すね!……ティーシェルの知られざる過去って事で、私も奮発して知

られざる過去を、大公開しちゃおうではないか!……ずばり!テーマは、何故私が武術学

校に入ったか!」

知られざるという言葉に期待していたのか、マキノの続きの言葉に二人が少しガックリし

た。そんな二人を無視して、マキノの話はどんどん進んでいく。

「私ね、昔占い師さんに運勢見てもらったのよね。で、その人曰く!武術学校に入ったら

王子様が現れるよ、と!―――で、入学したの」

何とも単純な理由に、二人は呆然としている。それ、明らかに似非占い師じゃないとティ

ーシェルが呟き、マキノって占いとか信じるんだなとラフィストがもらす。後先考えない

で行動するのは昔からか、という共通の思いが二人の中に芽生えた。

「しかもね、その占い師っていうのが私の先生で……つまり、学校の生徒を募ってた訳。

あー、騙されたってカンジ!……その頃の私は、ちょっち反抗期入っててさー。殴りこみ

に行ったの」

「な、殴りこみ……」

今のマキノから想像できなく、思わず絶句する。

「そそ。私ってばかなり問題児でさー!今となっちゃ恥ずかしいんだけどね。でもね、流

石武術の学校の先生だけあって、激闘の末負けちゃってさー」

激闘という言葉に、冷や汗が流れる。そしてその時にやり合ったのが、トラートで会った

ガレレオ先生だと告げ、それ以来更正したのだと付け足した。そういったのに免疫が無い

のか、ティーシェルが相当ヘビーな学生だねと、顔を引きつらせながら言う。しかし、マ

キノはそうかなと笑い、事も無げにしていた。

「だって、反抗期ってこんなもんでしょ?……それより問題なのは、学校に王子様がいな

かった事!なんっつーか……爽やかなのがいないのよね」

二人の頭に、同じ武術学校のニックスの顔がよぎる。彼も、お世辞にも爽やかなタイプと

は言えない。

「で、王子様は見つかったの?」

ニックスがマキノに好意を寄せている事を知っているラフィストは、マキノにそれとなく

探りを入れてみる。ニックスにとって色好い返事を期待していたが、そんな期待を余所に

マキノの返事は無常だった。

「ん。いや、全然?―――あ、でもぉ……アデルさん、格好いいよね!もう少しでお別れ

だと思うし、悲しいなぁ……」

これにはラフィストも、あ、そうとしか答える事が出来なかった。それ以降もマキノの口

からニックスの名前が出てくる事は無く、ラフィストはここにニックスがいなくて本当に

良かったと思った。

「ねぇ……ニックスは、君に言われたから調査団に入ったとか言ってたけど……本当はど

うなの?」

「ああ……いつだっけな……。私が、アンカースのルビーで作られた指輪が欲しいって言

ったのを聞いててね、じゃあ誕生日に買ってやるよとか言ってくれたから、ありがたく思

ってたの。ニックスはアンカースのルビーを扱ってるお店とか探してくれたみたいだけど、

このご時世でしょ?どこにも無くってね。そしたら、アンカースまで取りに行くとか言い

出しちゃって……私は別にいいよって言ったのに、調査団に入らないとアンカースに行け

ないだの暴走始めて……」

事の真相を本人の口から聞き、彼の旅の参加目的がいかに軽いものか分かった二人は、ニ

ックスらしいと思いつつ、本来の目的とはかけ離れている事に肩を落とす。

「それより、私の誕生日とっくに過ぎちゃったのよね……どうするつもりかしら。という

よりむしろ、約束覚えてるのかしら……」

ニックスの性格を考えると、後者である可能性が高い。だが、どう思うと言うマキノに、

多分覚えてるんじゃないかなとラフィストは返しておいた。後でこっそり、ニックスに自

分が教えてやればいい事だからだ。そこに、ティーシェルがそれよりも、とマキノに話し

かける。

「あの、一つ言いたいんだけどさ。アンカースのルビーって、上物で数が少ないルビーだ

から国内限定販売なんだけど……持ってるのは王族や上流貴族位なんだよ。知ってた?」

「え、そうだったの?」

きょとんとするマキノを見て、ラフィストの中でニックスの参加目的が音を立てて崩れて

いく。所詮、ニックスはマキノの手の上で踊ってたに過ぎないのかと思うと、溜息ばかり

出てくる。ニックスの事を考えるラフィストとは反対に、マキノはニックスの事よりも、

宝石の方が気になっているらしい。

「ね、じゃあ因みにいくら?」

「一番安くて……ざっとこんなもん?」

そう言うと、ティーシェルは指を四本立てる。

「四千ギルか……高いな」

ニックス、もうルビーは諦めた方がいいなと思い、ラフィストが更に溜息をつく。そんな

ラフィストに、ティーシェルが杖の先端でラフィストの頭を軽く叩いた。

「これだから宝石買った事無い奴は……丸の数が足りないよ、ラフィスト。四千じゃなく

て、四万ギル!こんな小粒位のでもね」

「よ、四万ギル!?」

「とてもじゃないけど、ニックスには無理ね〜。……忘れよっと」

この為にニックスは調査団に入ったのだと言うのに、明るい調子でさらっと言うマキノ。

やっぱり今日の事はニックスには黙っておこうと、ラフィストは心に決めた。マキノがル

ビーを諦めた事も知らないですむし、夢を見ていられるからだ。その方が、ニックスにと

っても幸せだろう。とにかくさっさとこの話題を変えてしまおうと、ラフィストは、次は

俺が話すなと切り出した。

「俺がまだ九歳で、ジュリアが七歳だった頃の話で……俺が住む町の裏に森があってさ。

そこで……―――」

「そこで?」

興味津々といった顔つきで、二人が聞き入る。

「妖精を見たんだ!」

「へぇー、神秘的ね!」

「妖精って……ドワーフ?それともフェアリー?」

マキノはメルヘンチックな話にうっとりし、ティーシェルは知的好奇心を満たそうとばか

りに、質問をする。多分フェアリーだと思うと答えると、ラフィストは更に話を続けた。

「夕暮れまでその妖精と遊んで、家に帰る時このペンダントを貰ったんだ」

ジュリアが欲しいとせがんだ為、ペンダントはジュリアにあげたのだが、ランツフィート

に行く前にジュリアは家にペンダントを置いていった。なのでそのペンダントは今、ラフ

ィストが身につけている。首にかけているペンダントを外し、見たいとせがんだマキノに

手渡してやると、マキノはまじまじとそれを眺め始めた。

「キレー」

「だろ?」

昔の事を思い出し、ラフィストも笑顔になる。ペンダントを覗き込んで見ていたティーシ

ェルが、魔精霊の一種だねと述べた。

「精霊によって作られた魔石のような物さ。珍しい物だから、なかなか出回らないけどね。

これ、身につけてると魔法耐性が強くなるから、つけといた方がいいよ」

「へぇ……そんなに凄い物だったのか」

再び首にかけなおすラフィストに、ティーシェルが頷き大事にしなよと告げる。そして、

空けたビンやコップを片付け始めた。そろそろ休んだ方がいいと思い、ラフィストがお開

きにしようかと言うと、マキノが自分の部屋に戻る為席を立った。




マキノがラフィスト達の部屋から出ると、誰かに呼び止められる。目の前にいたのはニッ

クスだった。目を見開いてるニックスに、マキノはどうしたのと問いかける。

「どうしたのって、お前……軽く出てくんなよ。仲間って言っても、一応男の部屋だぜ?」

「いーじゃん。何が悪いの?」

あっさりと返され、ニックスは二の句が出ない。ニックスとしては、出来るだけ男だけの

部屋には入って欲しくないのだが、そういった事を言ってもきっとマキノには理解しても

らえないだろう。そもそも、マキノのこういった軽さが、気持ちを量りかねる原因だと思

っているニックスとしては、今の返事は余り好ましくない。そんな事を小声でブツブツ言

っていると、マキノが聞こえないんだけど、と返す。

「聞こえないように喋ったんだから、当たり前だろ」

「何よぉ」

ニックスの言葉に、マキノがむっとした表情を見せる。だがそれも一瞬で、マキノはそう

いえばさとニックスに話しかけた。

「世界樹での事、覚えてる?ほら!あの時、声を聞いたじゃない。世界樹に入るには、世

界樹がその人物を選ぶんでしょ?……って事は、あの声世界樹なんだよね?」

「まぁ、多分な。でも、ラフィストとかの話によると、世界樹って……悪者の可能性高い

んだろ?」

「でも、あの時の優しい口調からはそんな風には思えないな。だって私達の事、応援して

くれたじゃないの」

「ああ」

廊下で考え込んで黙って立ち尽くしている二人を、たまに通る宿の客が不思議そうに見て

いく。

「ま、それはわかんないけどよ!世界樹の名を語った誰かかも知れねーし、深く考えんの

はやめようぜ。な?」

「そーだね……」

口ではそう言っても、心のどこかで納得出来ない部分があるのだろう。相槌を打つマキノ

の表情は、どこか不満そうだ。

「じゃ、私もう寝るわ。んじゃーね、おやすみー」

手を振って去って行くマキノを、手を振って見送るニックス。マキノが部屋に入り、ドア

を閉じる音が響いた所で、ニックスは今マキノと二人っきりだった事実に気が付いた。そ

れに、考え事をしていたとはいえ、結構良い雰囲気だったかもしれない。気の利いた言葉

一つ言えなかった事に気付き、ニックスは不甲斐ない己を責めた。




「―――……それで」

「ただいまー」

マキノが部屋に戻ると、ガーネットとナディアはベッドの上で話をしている最中だった。

部屋に入ってきたマキノに気付き、二人は一旦話を切ると、早く着替えてこっちに来るよ

う呼びかける。

「うん」

「どうしましたの?何だか静かですわね」

「そうかなー?でも大丈夫、少し考え事してただけだから」

マキノは服を着替えて部屋の明かりを消すと、ベッドに潜り込む。横になると、身体に溜

まった疲れが一気に押し寄せてきた。暗い天井をぼんやり見つめながら、二人にさっきま

で何の話をしていたのか尋ねた。

「ニックスの……話ですけど」

「何で?」

マキノの反応に、ナディアが溜息をつく。その溜息はマキノにも聞こえるように、わざと

らしく大きいものだった。

「マキノ、あなた正直な所、ニックスの事はどう思ってるワケ?」

ニックスがマキノに好意を持ってる事は、皆知っている。しかし、肝心のマキノがどう思

っているかは分からなかった。どんなにじれったい状態でも、ナディアは普段ならこうい

ったおせっかいな事は聞かない。しかし酒が入っていて機嫌が良かった事もあって、マキ

ノに問いかけたのである。それに対して、マキノは戸惑う。

「ど、どうって何で?別にただの……」

「友達、ですの?」

「う……だって、そんなのあんまり意識した事が無くて……」

「本当ー?」

「だって……私の王子様とかけ離れてるんだもーん。もっと爽やかで、背が高くて、スラ

ッとしてて、もっと……」

止まる事の無さそうなマキノの理想語りに、今度はガーネットまでが溜息をつく。あくま

で憧れと、好きとは違うのだ。マキノのそれは、誰か一個人の中に憧れを求めているだけ

で、憧れに恋をしている状態だからだ。

「マキノ、王子様が理想ですものね……」

「全く、理想が高いというか、子供というか……」

「な、何よぅー!」

「マキノ、例えば今まで会った中なら……ディレス王子とか、本当の王子様ですわ。……

あなたは、ディレス王子の事が好き?」

「好きだけど?」

あっさり答えるマキノに、ナディアがその好きじゃなくて、要するに愛してるかって事よ、

と付け足す。んーと悩み始めるマキノに、その様子じゃそうじゃないみたいね、とナディ

アが断じた。

「何で?」

「あなたの態度は、お友達だけど恋人としては思ってなかったって感じだからよ」

「憧れと、好きとは違うと思いますの。……どんな理想があったって、人は恋をしたら理

想は二の次ですわ。私、今ならそれが良く分かりますわ……」

ガーネットの言葉に、ナディアはおやっと思う。先程の反応からナディアは鈍いと思って

いたが、もしかして違っていたのだろうか。

「人は誰かを好きになったら、その人に自分の理想を求めずに、その人の好きな所を探す

ものだと思いますわ、マキノ」

「まるであなたが恋してる口調ね、ガーネット」

カマをかけるようにナディアが言うが、ガーネットに動じた様子は無い。

「……ええ、私好きですわ。ラフィーが好き。ラフィーの優しい所も、一緒にいたら強く

なれるところも、全部好き。だからね……今じゃ、二人っきりでいるのが恐い位ですわ」

フォートレスでの一件があったからか、ナディアはずっとガーネットは恋愛感情に鈍い所

があると思っていた。しかし、どうやら月日は彼女を強くしたらしい。人の言葉尻に込め

られた想いを汲み取るまでにはいっていないが、自分の感情を真正面から受け止める事は

出来るようになったようだ。

「だから、ラフィーに気持ちを伝える時には、ちゃんとサードに言いますわ」

「そう。……でもね、サードには何も言わないであげて。彼ももう、分かってるから……

それが、あなたがサードに出来る思いやりよ」

サードは、もう結論は出てると言っていた。ならば、このまま放っておいてやる事が一番

良いと、ナディアは思ったのだ。ガーネットはでも、と些か納得していない様子だったが、

ナディアに約束ねと言われた事で、了承の返事を返した。

「もう、二人して……結局何が言いたかったの!」

「マキノ……」

「はぁ。あなたに愛を説くには、まだ早いのかしらね。……取りあえず、ニックスの事も

ちゃんと見てあげなさいって事よ」

「だから、どういう事……」

「じゃ、おやすみー」

ナディアが我先にとくるっと背を向け、寝る体勢に入る。マキノはガーネットの方に顔を

向けるが、ガーネットも慌てて寝る体勢に入ってしまう。結局煮え切らない思いのまま、

マキノも眠りにつく事になった。

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