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第一話 別のVtuberに転生しようとしたら異世界に転生していた

目を覚ました瞬間、まず思った。


――視界が、やけに広い。


あるのは、どこまでも続く空と、風に揺れる木々だけだった。


「……ああ、そっちか」


驚きより先に、理解が来た。


俺は、企業に所属するVtuberだった。

登録者は百万人を超えている。


顔出しはしない。

仮想の姿を使って活動し、

ゲームを中心に、長く第一線にいた。


特定の一本ではない。

複数のタイトルで、最上位帯まで到達している。


だからだろうか。

世界が変わっても、頭は異様なほど静かだった。


状況確認。

危険判定。

次に取るべき行動。


そう考えた瞬間、背後で小枝が折れる音がした。


反射的に、半歩だけ前に出る。


直後、視界に飛び込んできたのは――人影だった。


背は低い。

だが、異様に腕が長い。


肌はくすんだ緑色。

手には、刃こぼれした短剣。


「……ゴブリン、か」


誰に向けるでもなく、呟く。


単体行動。

武装あり。

こちらを見て、明確に“獲物”と判断している。


逃げる選択肢は、最初からない。

相手の射程に、もう入っている。


なら、取る行動は一つ。


――戦う。


視線が、自然と相手の重心に向かう。


前傾姿勢。

利き腕は右。

踏み込みは鋭いが、足運びが荒い。


下がると追ってくるタイプだ。


横が空く。


考え終えるより早く、ゴブリンが地面を蹴った。


速い。

だが――読みやすい。


正面からは受けない。

半身になり、刃の軌道を外す。


短剣が空を切る。


次の瞬間、体はもう動いていた。


踏み込み。

体重移動。

腰を回す。


がら空きになった脇腹へ、全力の蹴り。


鈍い感触。


ゴブリンの体が横に吹き飛び、

木の根元に叩きつけられ――


光に包まれて、消えた。


静寂。


「……倒した、か」


遅れて、心臓が強く脈打つ。


だが、頭は冷えたままだ。


いつも通りだった。


相手を見て、

情報を整理して、

最適解を実行しただけ。


そこで、ようやく違和感に気づく。


「……おかしいな」


ここは異世界だ。

剣も魔法も知らない。


それなのに。


「なんで、こんなに自然に動ける?」


答えは、すぐに出た。


俺は本来、

別の配信者として生まれ変わるつもりだった。


だが、世界が変わっても、

勝ち続けてきた思考は失われていない。


反射。

判断速度。

失敗を避ける癖。


それを持ったまま、

別のVtuberではなく――異世界に転生していた。

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