2、悲しい日々が続いております。
…泣いても良いでしょうか?
現在私は戦場で現場の指揮をしている。
指揮と言っても、現状をいち早く中佐に報告し、中佐からの指示をただ全うしているだけだが…。
配属早々、戦場とは運がないと我ながらに思った。
私は異国の出なので、いかに実力重視の帝国といえどやはり自国民優遇なのである。
しかも少佐ときた。
ナニソレ?美味しいの?ふざけるな!聞いてないぞ!横暴だ!
心の中で涙を流しながら私は目の前の戦場に似つかわしくない妖艶な美女に現在の戦況を報告していた。
「あらぁ~。子羊ちゃん達いがいにがんばるのねぇ~…でも楽しみだわぁ
どうやってお料理しちゃおうかしらぁ…ふふふ」
この人怖い。絶対ヤヴァイ人種だ。絶対近づきたくない。
そんな事を思って油断をしていたら、中佐の目が私を捉えた。
「ふふ。キサラギ少佐はどんな味付けがお好みなのかしらぁ?」
「…好みの味付けは特にありません。ですが煮るなり焼くなりお好きしたら良いかと思いますが、くれぐれもアクが残らないよう善処願います。(私に聞くなよ!知るか!とり合えず恨みとかそういうの残らない程度にしてよね!あと処理大変なんだから!)」
「ふふふ…あははははは!最高だわぁ~。面白いわぁ~。
いっつもむさ苦しい男共ばかりだったら本当に私少佐が来てくれて嬉しいわぁ~」
「そうですか。今後とも宜しくお願いします。ミリアリア中佐。(私は全然嬉しくないぞ!宜しくしたくないから!早く左遷してください!)」
「あらぁ~ミリアリア中佐だなんてー。ミリーで い い わ よ ♪」
「…(何だこいつ)」
「…っぷ。あはははは」
何が可笑しいのかミリアリア中佐は肩を震わせ似つかわしくない大笑いをした。
そんな和やかな空気の作戦会議室が突然鬼気迫る空気に変った。
「失礼しますっ!」
空気を変えたのはひとりの伝令兵であった。
急いで来たのだろう。体全体で息をし苦しそうだ。
「どうしたかしら?そんなに慌てて…」
緊急時だというのに中佐は微笑みながら伝令兵に言葉をかけた。
「はっ!反乱軍が現在我が軍の陣に向け進行中です!」
「あら。大変ね。でも第3、4師団が私達の前に陣を張っていたとおもうのだけど?」
「はっ!それが…どうやら奇襲を受けたようで情報が錯綜していまして…その…」
伝令兵の青年は最後まで言い終わる前に顔を青白くさせ震えていた。
(あーあー。かわいそうに。中佐のあの笑いは機嫌が至極悪いのだろうなぁ。目があうだけで鳥肌がたってしまうよ)
「…その?の続きはまだかしら?伝令兵は速やかに正しい情報を伝える者ではなくて?」
「…ははははい!あの!えーっと…「第3、4師団は敵の奇襲を受け混乱し応戦するも、結局は陣営を突破されたというわけですね?(大方、応戦したのは貴族意外の出自の者だろうな…貴族連中は大方敗走ですか…)
」
「っは、はい!そうです!」
「あら?そうなの?良く知ってるわね~ゆきちゃん。まるで貴方が伝令兵みたいだわぁ~」
伝令兵の青年を哀れに思い思わず口を挟んだら、いつもの口調で中佐が嫌味を言い出した。
この人は本当に全然行動が読めないし、とても苦手な人種だ。
いきなり機嫌が良くなったり、悪くなったり…
「思わず自分の考えが口に出てしまったようです。出すぎたまねを致しました。」
「ふふ…。まぁいいわぁ~。お外にいくわよー!ユキちゃんこれから忙しくなるわよ~」
「了解いたしました。(何がいいんだ。というかユキちゃんって呼ぶな!)」
中佐はなんだか嬉しそうに部屋から出ていった。
「あなたはもう下がって良いわ。今は体を休めていざと言う時、すぐに動けるよう待機をしておいてください。…あと、あなたの仕事をとってごめんなさい。」
「ぁ・・。はっ!了解いたしました。こ、こちらこそ有難う御座いました!」
中佐が忘れていった哀れな伝令兵にねぎらいの言葉をかけたあと私も中佐の後を追った。
な ん て い い 部 下 な ん だ ろ う !
と、緊迫しているはずなのにのほほんと思ってしまった。
これから来るであろう戦場という現実をただ、ただ忘れたかっただけであるけれど…