第9話:フィンの冒険
昨夜は子供たちと花冠作りで笑顔を分かち合い、庭の癒しの力を広げた。
今夜は静かな夜の予定だったけど、なんだか落ち着かない予感がする。
ルナと月見草の世話をしながら、次の茶会のアイデアを考えよう。
「ふう、子供たちの笑顔、元気もらえたな……。さて、今日は月見草の種、チェックしないと!」
庭はまるで夢のオアシス、幻想的な空間だ。
私は花壇のそばにしゃがみ、月見草の種をそっと確認した。
指先がふわりと光り、花がさらに輝く。
「満月の種採取、そろそろだな……。ルナ、どこ? また夜光蝶と遊んでる?」
私は笑いながら周りを見回した。
月見草の光の中に、ルナがふわっと現れた。
銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスがキラキラ輝く。
夜光蝶が彼女の周りをくるりと舞い、フクロウの鳴き声が響く。
「姉貴、遊んでるって何! 私はちゃんと庭守ってるよ! ほら、夜光蝶も私のキラキラに夢中じゃん!」
ルナはニヤリと笑い、夜光蝶を指さした。
私はクスッと笑って反論した。
「はいはい、ルナのキラキラは最高だよ。でも、種の世話、ちゃんと手伝ってよね。次の茶会、もっと賑やかにしたいな!」
「ふっふー、姉貴、気合い入ってるね! なら、夜光蝶とフクロウでスーパーキラキラな演出、やってやるよ!」
ルナはくるりと空中で一回転し、目を輝かせた。
すると、苔むした階段から小さな足音が聞こえてきた。
子供っぽい、軽いステップ。
夜光蝶がふわりと月見草の光に隠れ、フクロウの鳴き声が一瞬止まる。
私はハッとして入り口を見た。
「誰!? カイルやマリアなら声かけてくるよね……ルナ、隠れて!」
「隠れる!? 私が!? 姉貴、この庭の守護者だよ! 怪しいちび人間なら、私の光でビビらせてやる!」
ルナはムキになって光を強めたが、私は慌てて彼女を制した。
階段を下りてくる小さな影が月光に照らされる。
8歳くらいの男の子だ。
金色の髪に、小さな王子の紋章がついたマント。
……え、フィン殿下!? レオンの弟王子!?
「うわっ! 光るお花! これで魔法の城、作れる! すげえ、キラキラ!」
フィンが目をキラキラさせて庭に飛び込んできた。
夜光蝶が彼の周りをふわりと舞い、フクロウの鳴き声が再び響く。
私はポカンとしながら、慌てて声をかけた。
「フィ、フィン殿下!? こんな夜中に!? 危ないから、一人で来ちゃダメですよ!」
「エリス姉貴! これ、月見草だろ? めっちゃ光ってる! 魔法の城、絶対作れるって!」
フィンは小さな剣の玩具を振り回し、月見草の花壇に突進しようとした。
私は慌てて彼を止めた。
「待って、殿下! 花、踏まないで! 城より……ほら、花冠の方が簡単だよ!」
「花冠!? おお、姉貴、いいアイデア! じゃあ、魔法の騎士の冠、作って!」
フィンはニコッと笑い、剣をマントにしまった。
私はその無邪気さにクスッと笑った。
ルナがふわっとフィンの前に現れ、ジトッとした目で彼を見た。
「ふーん、ちび王子じゃん! 姉貴、このボケボケな奴、庭で暴れないよね? 私の月見草、守らないと!」
「ちび王子!? 俺、フィン、立派な騎士だぞ! エリス姉貴、このキラキラな庭、めっちゃカッコいい! 俺、騎士として守る!」
フィンは胸を張り、ルナに負けじと叫んだ。
私は笑いながら、フィンを花壇のそばに座らせた。
「ルナ、フィン殿下をちび呼ばわりしないで! 殿下、花冠作り、一緒にやってみる? 騎士の冠、作れるよ!」
「やった! 姉貴、教えて! 俺、めっちゃカッコいい冠にする!」
フィンは目を輝かせ、月見草の茎を手に取った。
私は転生前の花屋の技術を思い出し、フィンに茎の編み方を教えた。
夜光蝶がフィンの周りをキラキラと舞い、フクロウの「ホウ、ホウ」が静かに響く。
フィンは不器用ながら、楽しそうに花びらを挟んでいく。
「姉貴、こう? なんか……ぐちゃっとしてない?」
フィンができたての花冠を掲げ、首をかしげた。
ルナが空中でケラケラ笑った。
「ぐちゃ!? ちび王子、センスなさすぎ! 私の月見草が泣いてるよ!」
「ルナ、ひどい! フィン殿下、初めてだから上出来だよ! ほら、夜光蝶も応援してる!」
私はツッコみながら、フィンの花冠に夜光蝶がふわりと止まるのを見た。
キラキラと輝く蝶が、花冠をより幻想的にする。
フィンは目を丸くし、ニコッと笑った。
「うわ、姉貴、すげえ! この冠、騎士っぽい! エリス姉貴、最高!」
「ふふ、フィン殿下、ありがとう! 騎士見習いだね! ほら、頭に載せてみて!」
私はフィンの小さな頭に花冠をそっと載せた。
月見草の光がフィンの金色の髪に映え、夜光蝶が周りを舞う。
フクロウの鳴き声が庭に響き、まるで小さな騎士の戴冠式のようだ。
私は胸が温かくなった。
「フィン殿下、似合ってるよ。この庭、騎士として守ってくれる?」
「もちろんだ! 姉貴の庭、俺が魔法の騎士として守る! 夜光蝶もフクロウも、俺の仲間!」
フィンは剣の玩具を振り、ニカッと笑った。
ルナがふわっとフィンの頭上を飛び、ニヤリと笑った。
「ちび王子、意外とカッコいいじゃん! でも、私の月見草が主役だから! 姉貴、こいつ、仲間に入れる?」
「ルナもちび精霊でしょ? フィン殿下、もちろん仲間だよ! この庭、みんなでキラキラにしよう!」
私は笑いながらツッコんだ。
フィンが花冠を手に庭を走り回り、夜光蝶がキラキラと追いかける。
フクロウの鳴き声が静かに響き、月見草の甘い香りが漂う。
私はフィンの無邪気な笑顔を見ながら、胸の奥で癒しの夢を新たにした。
この幻想的な庭でのスローライフは、フィンの冒険心でまた一歩進んだ。