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月見草の令嬢は王宮庭園で花開く  作者: 海老川ピコ
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第48話:セリナの贈り物

 月の光が「月影の庭」を銀色に染め、月見草と夜来香がキラキラと揺れる。

 夜光蝶がふわりと舞い、フクロウの「ホウ、ホウ」が遠くで響く。

 私はエリス・ルナリス、18歳、没落貴族の娘で王宮の雑用係。

 下町の光の祭りで、月見草の花冠とポーションが貴族と平民を繋ぎ、癒しの輪を広げた。

 今夜はセリナが庭を訪れ、特別な贈り物を持ってくると聞き、心が弾む。

 彼女の知恵が、月見草の可能性をさらに輝かせてくれる気がする。

 庭の隅に小さな木製のテーブルを置き、月見草の花冠とポーションの小瓶を並べる。

 月の光がテーブルを照らし、甘い花の香りが漂う。

 転生前の花屋で、年配の客から花の育て方を教わった時の温もりを思い出す。

 あの頃は忙しさで聞き流していたけど、今夜はセリナの話にじっくり耳を傾けたい。

 ルナが月見草の花壇からふわっと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスが星屑のように輝く。

 彼女は目を輝かせ、ニヤリと笑う。


「姉貴、下町の祭り、めっちゃキラキラだったな! 今夜は婆さんが何か持ってくるって? 私の光で、贈り物をドカンと輝かせちゃう?」


 私は花冠を手に、くすっと笑う。


「ルナ、いつも派手だね。セリナさんの贈り物、きっと庭の癒しを深めてくれるよ。今夜は静かに、でも心温まる時間にしたい」

「ふっ、姉貴の聖女モード、しんみりバージョンか! いいよ、私のキラキラで、婆さんの贈り物を王都一の宝物にすんぞ!」


 ルナが宙を舞い、月見草の光をそっと強める。

 夜光蝶がテーブルを囲み、ふわりと舞う。

 私はティーポットを手に、ポーションをカップに注ぐ準備をする。

 苔むした階段から杖をつく穏やかな足音が響き、セリナが現れる。

 皺だらけの顔が月光に照らされ、優しい笑みが浮かぶ。

 彼女は小さな革袋を手に、ゆっくりと近づく。


「エリス、噂の庭、ますます輝いてるな。この月見草、王妃の時代を思い出すよ」


 私はセリナをテーブルに案内し、ポーションを渡す。


「セリナさん、ようこそ! 光の祭りで下町がキラキラしたよ。今日はどんな贈り物?」


 セリナが革袋を開け、古びた錬金術書を取り出す。

 革表紙に月見草の紋様が刻まれ、ページは黄ばんでいるが、優しい香りが漂う。

 彼女は目を細め、ゆっくり言う。


「エリス、これ、わしの若い頃に使った錬金術書だ。月見草のポーションの秘訣が詰まってる。あんたなら、この庭で新しい癒しを生み出せる」


 私は胸がじんわりと温まり、転生前の花屋で客が古い花図鑑を貸してくれた記憶がよみがえる。


「セリナさん、すごい! この本、庭の宝物だよ。月見草の可能性、もっと広げたい!」


 セリナがクスクスと笑い、杖をトンと置く。


「あんたのポーション、すでに王妃の心に近い。この本で、癒しの力をもっと濃くできるよ。あんたの優しさ、月見草にちゃんと伝わる」


 ルナがセリナの頭上をふわっと飛び、ニヤリと笑う。


「婆さんの本、めっちゃ古いけど悪くない! 姉貴、ポーションに私のキラキラ足して、王妃超えちゃおうぜ!」


 私は笑いながらツッコむ。


「ルナ、王妃を超える前に、セリナさんの知恵をしっかり学ぼうよ! セリナさん、試作用にコツ教えてください」


 セリナが錬金術書を開き、月見草の蒸留法のページを指す。


「花びらを蒸留する時、月の光を浴びせるんだ。満月の夜に、ゆっくり火を調整してな。心を込めれば、癒しの力が強まる」


 私はセリナの言葉に頷き、庭の隅に置いた簡素な蒸留器を準備する。

 転生前の花屋で、花の香りを調整した感覚が蘇る。

 セリナが花びらを蒸留器にセットし、火を点ける。

 私も手伝い、甘い香りが立ち上る。

 夜光蝶が蒸留器の周りを舞い、フクロウの鳴き声が静かに響く。

 ルナが目を輝かせ、言う。


「姉貴、婆さんの知恵、ガチでヤバい! このポーション、キラキラすぎるぜ!」

「ルナ、キラキラは大事だけど、癒しが一番だよ。セリナさん、このポーション、どうかな?」


 セリナが滴を集めた小瓶を手に、匂いを嗅ぎ、微笑む。


「エリス、よくできた。癒しの力が濃いよ。王妃の時代より、あんたのポーションの方が心に響く。試しに飲んでみな」


 私は小瓶からポーションをカップに注ぎ、飲んでみる。

 甘く優しい香りが胸に広がり、転生前の疲れた夜が遠くに感じられる。

 私は感動して、セリナの手を握る。


「セリナさん、ありがとう! このポーションで、みんなの心をもっと癒したい」


 そこへ、階段から小さな足音が響き、リナとマイが花冠を持って駆け寄る。


「エリスお姉ちゃん! セリナ婆ちゃんに、花冠あげる!」


 二人がセリナに花冠を渡すと、セリナの顔がくしゃっと笑う。


「こりゃ、いい贈り物だ。エリス、子供たちの心も、この庭で輝いてるよ」


 私は子供たちに微笑み、転生前の花屋で子供たちに花を渡した記憶と重なる。

 ルナが空中でくるりと回り、光を庭全体に広げる。


「姉貴、婆さんの本とちびっ子たちの花冠、最強じゃん! 私のキラキラで、ポーションも庭もキラキラ全開だ!」

「ルナ、セリナさんと子供たちのおかげだよ。この庭、みんなで輝かせよう」


 私はツッコみながら、月見草に触れる。

 指先がふわりと光り、庭の光が強まる。

 満月の光がセリナの微笑みを照らし、夜光蝶が花冠を舞う。

 この幻想的な庭でのスローライフは、セリナの贈り物と子供たちの笑顔で、また一歩輝いた。



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