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月見草の令嬢は王宮庭園で花開く  作者: 海老川ピコ
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第45話:テオのしおりと夜の茶会

 満月の光が「月影の庭」を銀色に染め、月見草と夜来香がキラキラと揺れる。

 夜光蝶がふわりと舞い、フクロウの「ホウ、ホウ」が遠くで響く。

 私はエリス・ルナリス、18歳、没落貴族の娘で王宮の雑用係。

 昼間にフィンが剣術とランニングの夢を語り、庭に新たな輝きを灯してくれた。

 今夜は満月の月見茶会、テオが再び訪れると聞き、心が温まる。

 彼の穏やかな笑顔と月見草のしおりが、庭の癒しを静かに深めてくれる気がする。

 庭の中央に木製のテーブルを並べ、月見草の花冠とセリナ直伝のポーションの小瓶を置く。

 満月の光がテーブルを照らし、甘い花の香りが漂う。

 転生前の花屋で、客が小さな贈り物に込めた想いに心を動かされた記憶がよみがえる。

 ルナが月見草の光の中からふわっと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスが星屑のように輝く。

 彼女はニヤリと笑い、目を輝かせる。


「姉貴、ちび王子の剣と走り、キラキラだったな! 今夜は本屋の奴が来るって? 私の光で、しおりもドカンと輝かせちゃう?」


 私は花冠を手に、くすっと笑う。


「ルナ、いつも派手だね。テオのしおり、癒しになるよ。今夜の茶会、静かだけど心温まる時間にしよう」

「ふっふー、姉貴の聖女パワー、いい感じ! 私のキラキラで、本屋の地味なしおりも王都一の癒しアイテムにすんぞ!」


 ルナが宙を舞い、月見草の光をそっと強める。

 夜光蝶がテーブルを囲み、ふわりと舞う。

 私はティーポットを手に、ポーションをカップに注ぐ準備をする。

 苔むした階段から穏やかな足音が響き、テオが現れる。

 黒髪が月光に映え、書店員のシンプルな服に小さな包みを抱えている。

 彼は庭を見回し、静かに微笑む。


「エリス、久しぶりの茶会だ。月見草、ますます輝いてるね。まるで本の挿絵みたいだ」


 私はテオに花冠を渡し、微笑む。


「テオ、ようこそ! 庭がキラキラなのは、みんなのおかげだよ。今日はどんなしおり持ってきたの?」


 テオが包みを開け、月見草の花びらを押し花にしたしおりを差し出す。

 薄い羊皮紙に丁寧に貼られた花びらが、月光にほのかに光る。

 私は胸がじんわりと温まり、転生前の花屋で客が花に手紙を添えた時の記憶が重なる。


「テオ、このしおり、めっちゃ綺麗! 庭の宝物だよ。ありがとう!」


 テオが照れ笑いし、ポーションを受け取る。

 夜光蝶がしおりの周りを舞い、フクロウの鳴き声が静かに響く。

 テオがカップを手にそっと飲み、目を細める。


「エリス、このポーション、飲むたびに心が軽くなるよ。庭に来ると、書店の埃っぽさも忘れられる。騎士団の隅っこで剣術やランニングしてるフィンに、ちょっと元気もらったよ」


 私はフィンの話を聞いて、クスッと笑う。


「フィンの気合い、すごかったよね! テオも剣術やってみる? 月見草の騎士、候補に入れるよ」


 テオが苦笑いし、しおりを手に言う。


「剣は無理だけど、しおりなら作れるよ。この庭の癒し、本に閉じ込めたいんだ。エリスのおかげで、書店のお客さんも月見草に興味持ってる」


 ルナがテオの頭上をふわっと飛び、ニヤリと笑う。


「本屋、しおりは地味だけど悪くない! でも、私のキラキラの方が派手だろ? ほら、月見草に光足してやろうか?」


 テオがルナを見て、穏やかに笑う。


「ルナの光、いつも派手だね。でも、しおりの静かな輝きも、庭に合うと思うよ」


 私は笑いながらツッコむ。


「ルナ、テオのしおりは静かでいいんだよ! でも、キラキラはルナの得意技だから、茶会を盛り上げてね」


 ルナがムッとして空中でくるりと回り、ジトッとした目で言う。


「姉貴、静かなの推す!? 本屋より私の光が上だろ! ほら、茶会にキラキラ全開でいくぜ!」


 ルナが指をパチンと鳴らすと、月見草の光が集まり、空中に「月の書架」の幻が浮かぶ。

 光の棚にしおりや本が揺れ、夜光蝶がキラキラと舞う。

 私は目を輝かせ、テオに言う。


「テオ、ルナの幻、しおりにぴったりだね! この茶会、みんなの心で輝いてるよ」


 そこへ、階段から小さな足音が響き、リナとマイが駆け寄る。

 二人とも月見草の花冠を手に、テオに飛びつく。


「テオお兄ちゃん! しおり、教えて! 私たちも作りたい!」


 テオが優しく笑い、子供たちにしおりの作り方を教える。

 月見草の花びらを羊皮紙に貼り、丁寧に押す手順を説明する。

 リナが目を輝かせ、マイが花びらを手に言う。


「エリスお姉ちゃん、テオお兄ちゃんのしおり、めっちゃキラキラ! 茶会、最高!」


 私は子供たちに花冠を渡し、胸が温まる。

 転生前の花屋で、子供が花束に小さなメモを添えた時の笑顔が、この庭で再現される。

 ルナが子供たちの頭上を飛び、笑う。


「ちびっ子たちのしおり、悪くない! 姉貴、本屋とちびっ子、癒しすぎじゃん! 私のキラキラ、負けないぜ!」

「ルナ、負けなくていいよ。テオのしおりと子供たちの笑顔、みんなでキラキラだよ」


 私はツッコみながら、月見草に触れる。

 指先がふわりと光り、庭の光が強まる。

 テオが子供たちと一緒にしおりを作り、夜光蝶がその周りを舞う。

 参加者が集まり始め、トムやマリアがテオのしおりを手に褒める。


「エリス、テオのしおり、庭にぴったりだ!」

「癒しのパワー、すごいよ!」


 トムが市場の果物をテーブルに置き、言う。


「エリス、テオのしおり、市場でも売れるぜ。月見草の癒し、もっと広まるな!」


 マリアがポーションを飲み、穏やかに言う。


「エリス、テオのしおりと庭の光、仕事の疲れが消えるよ。茶会、毎回楽しみだ」


 私は皆の笑顔を見ながら、転生前の花屋で客の小さな贈り物に癒された記憶と重なる。

 この庭では、テオのしおりと子供たちの笑顔が、癒しの絆を深める。

 私はテオに目を向け、微笑む。


「テオ、しおり、ほんとに庭の宝物だよ。子供たちに教えてくれて、ありがとう。茶会がもっと温かくなったよ」


 テオが照れながら、しおりを手に言う。


「エリス、君の庭があってこそだよ。月見草の光、書店でも話してる。癒しの輪、広がってるよ」


 ルナが私の肩に降り、ニヤリと笑う。


「姉貴、本屋の地味なしおり、意外とキラキラ! でも、私の光が茶会の主役だろ?」

「ルナ、茶会はみんなの心が主役だよ。でも、キラキラはルナのおかげね!」


 私はツッコみながら、ポーションを配る。

 満月の光が庭を包み、月見草と夜来香の香りが漂う。

 リナとマイがしおりを手に歌い始め、参加者が手拍子で応える。

 テオが子供たちと笑い、トムが市場の仲間と果物を分ける。

 私は月見草に触れ、胸が高鳴る。


「みんな、ありがとう。この茶会、テオのしおりと子供たちの笑顔で、癒しがもっと深まったよ」


 ルナが空中でくるりと回り、光を庭全体に広げる。

 月の書架の幻が揺れ、夜光蝶が参加者の花冠を舞う。

 この幻想的な庭でのスローライフは、テオのしおりと子供たちの笑顔で、また一歩輝いた。



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