月見草の令嬢は王宮庭園で花開く

第24話：ポーションの甘い改良

　月影の庭は、下弦の月の控えめな光に照らされ、穏やかな輝きを放っていた。

　月見草の花びらがほのかに瞬き、夜光蝶がゆったりと漂う。

　遠くでフクロウの「ホウ、ホウ」が響き、庭は静かな夢の片隅のようだ。

　私は木のテーブルに月見草のハーブティーとポーションの小瓶を並べ、庭の隅に置いた蒸留器をチェックした。

　フィンの絵が小屋の壁に飾られ、剣のような花壇が月光にキラリと映る。

　あの絵は、子供たちの笑顔と庭の新しい光を象徴している。

　今夜は下町の平民たちと試飲会を開き、月見草ポーションを改良する。

　ハチミツを加えて甘くしたポーションが、子供たちにも飲みやすくなり、癒しの輪を広げたい。

　ルナの魔法と月見草の香りが、庭を温かな希望で満たすはずだ。

　私は月見草の花びらに触れ、指先がふわりと光るのを感じた。

　癒しの夢が、庭の光と共鳴する。

　ルナがふわっと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスが星屑のように輝く。

「姉貴、ポーションにハチミツって？　私の月見草の品格、甘ったるくならないよね？」

　ルナがジトッと目を細め、夜光蝶を指差した。

　私はハチミツの瓶を手に、微笑んだ。

「ルナ、品格は大丈夫だよ。子供たちが飲みやすいように、ちょっと甘くするだけ。癒しの力、もっと広げたいな」

「ふっふー、姉貴、子供に媚びるなんて聖女すぎ！　ま、私のキラキラで、甘くても最高のポーションにしちゃうよ！」

　ルナがくるりと空中で一回転し、指をパチンと鳴らした。

　月見草の光が一瞬強まり、甘い香りが庭に広がった。

　夜光蝶がキラキラと舞い、フクロウの鳴き声が静寂に溶け込む。

　私は蒸留器にハチミツを加え、ポーションの試作に取りかかった。

　苔むした階段から賑やかな足音が響いてきた。

　カイルの元気な声、マリアの穏やかな話し声、トムの家族の笑い声、そして下町の子供たちのざわめき。

　夜光蝶が月見草の光に溶け、フクロウの鳴き声が一瞬途切れる。

　私はテーブルから顔を上げ、入り口を見つめた。

「エリス、試飲会、めっちゃ楽しみ！　トムの家族と市場の子供たち、連れてきたぜ！」

　カイルがぼさっとした髪を揺らし、笑顔で手を振った。

　トムが妻と子供のリナ、マイを連れて微笑む。

　マリアが静かに頷き、下町の子供たちがわらわらと庭に駆け込んできた。

　リナが目を輝かせ、蒸留器を指さした。

「エリスお姉ちゃん、甘いポーション！？　めっちゃ飲みたい！　キラキラするの？」

「リナ、ふふ、甘くて飲みやすいよ。ほら、みんなで試してみて！」

　私は試作したポーションを小さなカップに注ぎ、子供たちに配った。

　マイがカップを手に、くるりと回った。

「エリスお姉ちゃん、星のジュースみたい！　おいしそう！」

　トムがポーションを嗅ぎ、ニヤッと笑った。

「エリス、こりゃいい香りだ。子供が喜ぶなら、市場でもバカ売れするぜ！」

　マリアがカップを手に、穏やかに微笑んだ。

「エリス、甘いポーション、子供にも優しいね。下町のみんな、癒されるよ」

　私は胸が温かくなった。

　転生前の花屋では、花を飾るだけで癒しを届けたけど、この庭ではポーションで子供たちの笑顔を作れる。

　カイルが蒸留器を覗き、目を輝かせた。

「エリス、ハチミツ入りのポーション、めっちゃいい感じ！　子供たちがガブガブ飲むな！」

　ルナがふわっとテーブルの上に浮かび、ニヤリと笑った。

「ふん、ちび人間たち、甘いもんに弱いね！　姉貴、ポーションの品格、私のキラキラで守ってやるよ！」

「ルナ、品格ってそこまでこだわる？　でも、子供たちの笑顔が一番だよ。キラキラ、頼むね！」

　私は笑いながらツッコんだ。

　ルナがムッとして空中で一回転し、指を振った。

　月見草の光がポーションの瓶に流れ込み、カップがキラキラと輝いた。

　夜光蝶が子供たちの周りを舞い、甘い香りが庭を包む。

　子供たちがポーションを飲み、歓声を上げた。

「エリスお姉ちゃん、甘い！　星のジュース、めっちゃおいしい！」

「キラキラしてる！　体、なんか元気になった！」

　トムの妻がポーションを飲み、目を細めた。

「エリス、こんな優しい味、初めて。子供たち、こんな笑顔、病気以来だよ」

　私は胸がじんわりと熱くなった。

　ポーションの癒しが、子供たちの無邪気な笑顔を引き出す。

　転生前の忙しい花屋では、こんな瞬間は作れなかった。

　カイルがカップを手に、ニヤッと笑った。

「エリス、こりゃ大成功！　下町で『エリスの癒し水』、もっと広まるぜ！」

　マリアが子供たちにポーションを配り、穏やかに言った。

「エリス、子供たちの笑顔、ほんと癒される。このポーション、みんなの希望だね」

　その時、苔むした階段から新たな足音が響いた。

　セリナだ。

　杖をついた老婆がゆっくり現れ、皺だらけの顔が月光に優しく照らされる。

　彼女がポーションの瓶を見て、微笑んだ。

「エリス、甘いポーション、いい考えだね。昔、王妃も子供たちにハチミツの薬を振る舞ったよ。君、ちゃんと受け継いでる」

「セリナさん、ありがとう！　王妃の癒し、子供たちにも届けたいな。飲んでみてよ」

　私はセリナにカップを渡した。

　彼女が一口飲み、目を細めた。

「ふむ、いい味だ。月見草の力、しっかり生きてる。エリス、君の心がこのポーションを特別にするんだ」

　ルナがふわっとセリナの横に浮かび、ニヤリと笑った。

「婆さん、いいこと言うじゃん！　でも、姉貴のポーション、私のキラキラが主役だよね？」

「ルナ、セリナさんの知恵も主役だよ。甘いポーション、みんなで作ったんだから！」

　私は笑いながらツッコんだ。

　ルナがムッとして空中でくるりと回り、指を振った。

　夜光蝶が一斉に舞い上がり、ポーションの瓶と月見草の光が絡み合い、光の「星の雫」が庭に広がった。

　甘い光の粒がキラキラと舞い、子供たちが手を伸ばしてキャッチしようと跳ねた。

「エリスお姉ちゃん、キラキラ！　星のジュース、ほんとに星みたい！」

　トムが家族を抱き寄せ、ニヤッと笑った。

「エリス、子供たちがこんな笑顔、市場でも見ねえよ。このポーション、ほんと宝だな」

　私は笑顔で頷いた。

　月見草の香りとハチミツの甘さが混ざり合い、庭が温かな癒しの空間に満ちる。

　子供たちがポーションを飲みながら歌い始め、夜光蝶がその周りを舞う。

「星のジュース、キラキラ！　エリスお姉ちゃん、最高！」

　その時、レオンが階段を駆け下りてきた。

　金色の髪が月光に輝き、王子の紋章がチラリと見える。

「よお、エリス！　甘いポーションの噂、聞いたぜ！　うお、子供たちがめっちゃ楽しそう！　俺、星のジュースの王子として参上！」

　レオンが大げさにポーズを取り、ニカッと笑った。

　私は腰に手を当ててツッコんだ。

「レオン殿下、ただのお客でいいですよ！　でも、来てくれてありがとう。ほら、ポーション飲んでみて！」

　ルナがレオンの頭上を飛び、ジトッとした目で言った。

「昼間の王子、遅刻かよ！　私のキラキラと姉貴の甘いポーション、ちゃんと味わえよ！」

　レオンがポーションを一口飲み、ハハッと笑った。

「ルナ、すげえ光だ！　エリス、この星のジュース、子供も大人もハマるぜ！　王宮にも持ってく！」

　子供たちがレオンにポーションを渡し、笑い合った。

　リナがカップを手に、レオンに言った。

「レオンお兄ちゃん、星のジュース、飲んだらキラキラになるよ！」

　レオンがリナの頭を撫で、ニヤッと笑った。

「リナ、俺、すでにキラキラだろ？　でも、エリスのポーション、ほんと最高！」

　私は胸が熱くなり、蒸留器を見た。

　月見草の光がポーションに溶け込み、庭が希望で輝く。

　転生前の花屋では、花を売るだけで精一杯だった。

　でも、この庭では、甘いポーションで子供たちの笑顔を作れる。

　セリナが杖をトンと置き、静かに言った。

「エリス、子供たちの笑顔、昔の王妃もこうやって見たかったんだろうね。君のポーション、王都の光だよ」

「セリナさん、ありがとう。みんなの笑顔が、私の光だよ」

　ルナがふわっと私の肩に降り、ニヤリと笑った。

「姉貴、聖女すぎるって！　私の月見草、星のジュースの主役だよね？」

「ルナ、みんなが主役だよ。でも、キラキラはルナのおかげ。ありがとうね」

　私は笑いながらツッコんだ。

　夜光蝶が庭をキラキラと舞い、フクロウの鳴き声が響く。

　月見草の香りとハチミツの甘さが漂い、子供たちの歌声が月光に輝く。

　この幻想的な庭でのスローライフは、甘いポーションで、また一歩温かくなった。