第23話:フィンの絵心爆発
月影の庭は、上弦の月の柔らかな光に照らされ、静かな輝きを放っていた。
月見草の花びらがほのかに光り、夜光蝶がゆらりと舞う。
遠くでフクロウの「ホウ、ホウ」が響き、庭はまるで夜の物語の舞台のようだ。
私は木のテーブルに月見草のハーブティーとレモンのハチミツ漬けを並べ、花壇を眺めた。
前回の満月茶会で、貴族のリディアと平民のトムが笑顔で語り合い、庭が王都の調和の象徴になった瞬間が胸に残っている。
今夜はカジュアルな夜、フィンが「何かすごいものを見せる」と言って、やってくるらしい。
8歳の王子が何を企んでいるのか、ドキドキしながらも楽しみだ。
ルナのキラキラと月見草の香りが、フィンの無邪気な笑顔をさらに輝かせるはずだ。
私は月見草に触れ、指先がふわりと光るのを感じた。
癒しの夢が、庭の光と共鳴する。
ルナがふわっと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスが星屑のように輝く。
「姉貴、ちび王子が何か企んでるって? 絶対ドジっ子な予感しかしないね。私の月見草、荒らされないよね?」
ルナがジトッと目を細め、夜光蝶を指差した。
私はティーポットを手に、微笑んだ。
「ルナ、フィンに厳しいね。でも、彼の無邪気さ、庭に新しい風を吹かせてくれるよ。どんな『すごいもの』か、楽しみだな」
「ふっふー、姉貴、楽観的すぎ! 子供の企みなんて、ろくなことないよ。ま、私のキラキラでフォローしてやるけど!」
ルナがくるりと空中で一回転し、指をパチンと鳴らした。
月見草の光が一瞬強まり、甘い香りが庭に広がった。
夜光蝶がキラキラと舞い、フクロウの鳴き声が静寂に溶け込む。
私は小さなキャンバスと絵の具をテーブルに置き、フィンの「すごいもの」に備えた。
苔むした階段から小さな足音が響いてきた。
フィンの元気な声と、カイルの笑い声、マリアの穏やかな話し声。
夜光蝶が月見草の光に溶け、フクロウの鳴き声が一瞬途切れる。
私はテーブルから顔を上げ、入り口を見つめた。
「エリス姉貴! やった、来たぞ! 俺、めっちゃすごいもの持ってきた! 庭、びっくりするぜ!」
フィンが目を輝かせ、小さなキャンバスを抱えて駆け込んできた。
金色の髪が月光に揺れ、王子の紋章がチラリと光る。
カイルがその後ろでシャベルを手に笑い、マリアが静かに微笑む。
私は手を振って迎えた。
「フィン、来た! カイル、マリアも、ありがとう。フィン、すごいものって何? 早く見せてよ!」
フィンがキャンバスをテーブルにドンと置き、ニカッと笑った。
「姉貴、ほら、これ! 俺、月影の庭の絵、描いたんだ! 姉貴の庭、星の海みたいだから!」
フィンがキャンバスを広げると、そこには色鮮やかな絵が描かれていた。
月見草の白い花が大胆に塗られ、夜光蝶がキラキラと飛び回る。
月は大きく輝き、庭の花壇がまるで剣のような形に描かれている。
色使いは子供らしく少し乱暴だが、情熱が溢れていた。
私は目を丸くし、クスッと笑った。
「フィン、これ、すごいね! 月見草、めっちゃキラキラ! でも……この花壇、剣に見えるよ?」
フィンが胸を張り、得意げに言った。
「姉貴、そりゃ剣だよ! 月見草の騎士の庭だから、剣の花壇で守るんだ! 芸術だろ?」
私は思わず笑い、腰に手を当てた。
「フィン、芸術的すぎるよ! 剣の花壇、めっちゃフィンらしいけど、ちょっとボケすぎじゃない?」
カイルが絵を覗き込み、腹を抱えて笑った。
「エリス、フィン、めっちゃセンス爆発! 剣の花壇、最高だな! 俺、こんな花壇作ってみようかな!」
マリアが絵を手に、穏やかに微笑んだ。
「エリス、フィンの絵、ほんと元気が出るね。この庭、子供の目だとこんな風に見えるんだ」
ルナがふわっとフィンの頭上に浮かび、ジトッとした目で言った。
「ちび王子、センス謎すぎ! 私の月見草が剣って、なんの冗談? でも、ちょっと面白いかもね」
フィンがルナを指差し、ムッとした。
「ルナ、剣はかっこいいんだから! 俺の絵、姉貴の庭を守る騎士の絵だぞ!」
私はフィンの頭を撫で、微笑んだ。
「フィン、かっこいいよ。この絵、庭の小屋に飾ろう。月見草の騎士の証だね!」
フィンが目を輝かせ、飛び跳ねた。
「やった! 姉貴、ほんと!? 俺、姉貴のナンバーワン騎士だからな!」
ルナがふわっと私の肩に降り、ニヤリと笑った。
「ちび王子、気合いだけは認めるよ。姉貴、こいつの絵、ほんとに飾る? 私のキラキラの方が芸術でしょ?」
「ルナ、嫉妬してる? フィンの絵、庭の宝物だよ。でも、ルナの光も負けてないから、競争だね!」
私は笑いながらツッコんだ。
ルナがムッとして空中で一回転し、指を振った。
夜光蝶が一斉に舞い上がり、フィンの絵の周りをキラキラと囲んだ。
月見草の光が絵の色と共鳴し、まるでキャンバスが生きているように輝いた。
庭が幻想的に光る! フィンが手を叩き、大声で叫んだ。
「うわ、ルナ、すげえ! 俺の絵、キラキラになった! 姉貴、庭、ほんと星の海だ!」
カイルがシャベルを手に、目を輝かせた。
「エリス、フィンの絵、ルナの魔法でめっちゃ映えるな! 庭の名物にしようぜ!」
マリアが穏やかな笑顔で頷いた。
「エリス、フィンの絵、子供の心そのものね。この庭、みんなの夢を映してるよ」
その時、苔むした階段から子供たちの笑い声が響いた。
下町の子供たちが、トムの娘リナとマイを先頭に走ってきた。
リナが絵を見て、目を丸くした。
「エリスお姉ちゃん、フィンの絵、めっちゃキラキラ! 剣の花、かっこいい!」
マイが花冠を手に、くるりと回った。
「フィン、絵、すごい! 私も描きたい! エリスお姉ちゃん、教えて!」
私は笑顔で頷き、キャンバスと絵の具を子供たちに渡した。
「リナ、マイ、いいね! フィンに負けない絵、描いてみて。月見草の庭、みんなで描こう!」
子供たちがキャンバスに絵の具を塗り始め、笑い声が庭に響いた。
月見草の香りが漂い、夜光蝶が子供たちの周りをキラキラと舞う。
フクロウの鳴き声が静かに響き、庭が温かな賑わいに包まれる。
フィンがリナに絵の具を渡し、得意げに言った。
「リナ、こうやって塗るんだ! 月見草、キラキラにするぞ!」
リナが絵の具を手に、ニヤッと笑った。
「フィン、負けないよ! 私の月見草、もっとキラキラにする!」
私は子供たちの楽しそうな姿に胸が温かくなった。
転生前の花屋では、子供たちとこんな時間を過ごす余裕がなかった。
この庭は、フィンの無邪気な絵心がみんなの笑顔を引き出す場所だ。
その時、レオンが階段を駆け下りてきた。
金色の髪が月光に輝き、王子の紋章がチラリと見える。
「よお、エリス! フィン! 絵の噂、聞いたぜ! うお、めっちゃキラキラ! 俺、芸術の王子として参上!」
レオンが大げさにポーズを取り、ニカッと笑った。
私は腰に手を当ててツッコんだ。
「レオン殿下、ただのお客でいいですよ! でも、フィンの絵、すごいよね。ほら、ティー飲んで見てて!」
ルナがレオンの頭上を飛び、ジトッとした目で言った。
「昼間の王子、遅刻かよ! ちび王子の謎センス、ちゃんと見なよ。私のキラキラが引き立ててるんだから!」
レオンがフィンの絵を手に、ハハッと笑った。
「ルナ、すげえ魔法! フィン、この剣の花壇、めっちゃカッコいい! エリス、こいつ、将来大物だな!」
フィンがレオンに飛びつき、ニヤッと笑った。
「レオン兄貴、だろ! 俺、姉貴の庭を守る芸術家になるぜ!」
私は笑いながら、フィンの絵を小屋の壁に飾った。
月見草の光が絵を照らし、夜光蝶がその周りを舞う。
子供たちが絵の具で遊び、リナとマイが花冠を手に歌い始めた。
「月見草、キラキラ、星の海! エリスお姉ちゃんの庭、最高!」
トムが家族と一緒に現れ、絵を見てニヤッと笑った。
「エリス、フィンの絵、めっちゃ元気が出るな。リナとマイも、楽しそうじゃん。この庭、子供の笑顔でいっぱいだ」
私は頷き、トムにティーを渡した。
「トムさん、ありがとう。フィンの絵、庭の新しい宝物だよ。みんなの笑顔、もっと増やしたいな」
カイルが花壇を覗き、目を輝かせた。
「エリス、フィンの絵、庭の雰囲気バッチリだな! 月見草、もっと増やして、絵みたいなキラキラにしようぜ!」
マリアが穏やかな笑顔で、子供たちを見守った。
「エリス、フィンの絵心、ほんと癒される。この庭、子供の夢まで輝かせてるね」
ルナがふわっと私の肩に降り、ニヤリと笑った。
「姉貴、ちび王子の謎センス、意外と悪くないね! 私のキラキラと一緒に、庭、星の海みたいじゃん?」
「ルナ、フィンの絵、めっちゃいいよね。でも、ルナの光も最高だよ。競争じゃなくて、一緒に輝こう!」
私は笑いながらツッコんだ。
ルナがムッとして空中でくるりと回り、指を振った。
夜光蝶が一斉に舞い上がり、フィンの絵と月見草の光が絡み合い、光の「星の花園」が庭に広がった。
淡い光の花びらがキラキラと舞い、子供たちが歓声を上げた。
「エリスお姉ちゃん、キラキラ! 絵が光ってる!」
レオンがティーを飲み干し、大声で叫んだ。
「エリス、ルナ、フィン、最高のチームだ! この絵、王宮に飾ってもいいレベルだぜ!」
私は胸が熱くなり、フィンの絵を撫でた。
月見草の香りが漂い、子供たちの笑い声が庭を満たす。
この幻想的な庭でのスローライフは、フィンの絵心で、また一歩温かくなった。
◇
その夜、子供たちが帰った後、庭は静かな光に包まれた。
私はフィンの絵を小屋の壁にかけ直し、月見草の花壇を見回した。
フィンの無邪気な剣の花壇、ルナのキラキラ、子供たちの笑い声。
この庭は、みんなの夢が交錯する場所だ。
ルナがふわっと私の隣に浮かび、珍しく静かな声で呟いた。
「姉貴、ちび王子の絵、ほんと謎だけど、なんか心にくるね。人間の子供、こんな風に庭を輝かせるんだ」
「ルナ、フィンの絵、庭の新しい光だよ。ルナの魔法と一緒に、みんなの夢を映してる」
私は微笑みながら、月見草の花びらに触れた。
ルナがニヤリと笑い、空中で一回転した。
「ふっふー、姉貴、しんみりすんなよ! 次の茶会、もっとキラキラなことやっちゃうぜ!」
「ルナ、期待してるよ。この庭、フィンの絵みたいに、もっと星の海にしようね」
月光が絵を照らし、夜光蝶が最後の舞を見せる。
フクロウの鳴き声が響き、月見草の香りが静かに漂う。
この庭でのスローライフは、フィンの絵心で、また新たな輝きを放つ。




