第20話:流行り病の危機
下町に病の影が忍び寄っている。
昨夜の茶会で、トムが市場で咳き込む人々が急増していると教えてくれた。
月見草ポーションが癒しの鍵になるかもしれない。
今夜、月の光の下、庭でポーションを準備し、下町に届けるつもりだ。
ルナの魔法とカイルたちの力を借りれば、きっと希望の光を灯せる。
この庭を、癒しの砦にしよう。
月影の庭は、月の柔らかな光に抱かれ、静かに息づいていた。
月見草の花が淡い輝きを放ち、夜光蝶がその周りをゆらゆらと漂う。
遠くでフクロウの「ホウ、ホウ」が響き、庭はまるで夢の片隅のようだ。
私は木のテーブルに蒸留器と月見草の花びらを並べ、心を落ち着けた。
皆を救いたいという思いが、胸の奥で熱く脈打つ。
ルナがふわりと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスが星屑のように輝く。
「姉貴、病気が流行ってるって? 人間、ほんと脆いね。私の月見草、ちゃんと役立つかな?」
ルナが少し不安げに目を細め、夜光蝶を指差した。
私は蒸留器の火を調整しながら答えた。
「ルナ、昔の古文書に月見草が特効薬だったって書いてあったよ。きっと大丈夫。ポーションで下町のみんなを助けたい」
「ふん、姉貴の救世主モード、気合い入ってるね。よし、私のキラキラでポーションをパワーアップしてやる!」
ルナがニヤリと笑い、指を軽く弾いた。
月見草が一瞬眩しく光り、甘い香りが庭を包んだ。
夜光蝶がふわりと舞い、フクロウの鳴き声が静寂に溶ける。
私は花びらを蒸留器にセットし、作業に没頭した。
その時、苔むした階段から急ぎ足の音が響いた。
カイルの焦った声と、マリアの落ち着いた声。
夜光蝶が月見草の光に溶け、フクロウの鳴き声が一瞬途切れる。
私は蒸留器から目を上げ、入り口を見つめた。
「エリス! 下町、まずいことになってる! トムの家族、みんな咳で苦しんでるよ!」
カイルが息を切らして駆け込んできた。
ぼさぼさの髪が汗で濡れ、シャベルを握りしめている。
マリアがその後ろで、静かに頷いた。
「エリス、市場で病気が広がってるって。ポーション、急いで作れる?」
「カイル、マリア、ありがとう。すぐ準備する。ルナ、魔法でスピードアップして!」
私は声を張り、蒸留器に花びらを追加した。
ルナがふわっとテーブルの上に浮かび、目を輝かせた。
「姉貴、任せな! 私の月見草、病気を蹴散らすよ。キラキラ全開でいくぜ!」
ルナが手を振ると、月見草の光が蒸留器に流れ込み、香りが一層濃くなった。
カイルが火を調整し、マリアが花びらを丁寧に並べる。
夜光蝶が作業の周りを漂い、フクロウの鳴き声が響く。
私は心を集中させ、蒸留器から滴る液体を見つめた。
透明なポーションが小さな瓶に溜まり、月光にキラリと光る。
「できた! 月見草ポーション、これで下町のみんなを癒せる!」
私は瓶を手に、胸が高鳴った。
カイルが拳を握り、叫んだ。
「エリス、すげえ! これでトムの家族、絶対元気になるよ!」
「エリス、私も下町に行く。ポーションを配るの手伝うよ」
マリアが決意のこもった目で頷いた。
私は二人に微笑み、ルナを見た。
「ルナ、夜光蝶で下町を明るくして。みんなの心、癒す雰囲気大事だよ」
「ふっふー、姉貴、わかってる! 私のキラキラで、病気の暗さ消してやるよ!」
ルナが指を弾くと、夜光蝶が一斉に舞い上がり、庭が希望の光で輝いた。
私はポーションの瓶を手に、下町へと急いだ。
下町の市場は、いつもと違う静けさに包まれていた。
通りには咳き込む声や弱々しい呻き声が響き、活気が消えている。
私はトムの家に急ぎ、ドアをノックした。
トムがやつれた顔で出てきたが、私を見ると希望の光が目に宿った。
「エリス……! ポーション、持ってきてくれたのか? 家族が、みんな苦しんでる……」
「トムさん、大丈夫。月見草ポーション、持ってきたよ。みんなに飲ませて」
私は瓶を渡し、トムの妻と子供たち、リナとマイにポーションを飲ませた。
リナが弱々しく微笑み、言った。
「エリスお姉ちゃん……このお茶、キラキラしてるね……」
「リナ、ゆっくり飲んで。ルナの魔法が入ってるから、元気になるよ」
私はリナの額に手を当て、微笑んだ。
ルナがふわりと現れ、夜光蝶をトムの家の中に飛ばした。
部屋がキラキラと輝き、フクロウの鳴き声が遠くから聞こえる。
トムの妻がポーションを飲み、目を閉じた。
「エリス……この香り、なんだか楽になる。ありがとう……」
トムがポーションを一口飲み、驚いた顔で言った。
「エリス、すげえ……! 咳が止まった。体、軽くなったみたいだ!」
私は胸が温かくなった。
転生前の花屋では、花を飾るだけで癒しを届けた。
でも、このポーションは命を救えるかもしれない。
カイルが市場の他の家にポーションを配り、マリアが子供たちに優しく声をかけた。
「エリス、ポーション、みんな喜んでる。下町、だんだん元気になってきたよ!」
「エリス、すごいわ。トムの家族、顔色が良くなってる。もっと配ろう」
私は頷き、ルナに目をやった。
ルナがふわっと私の肩に降り、ニヤリと笑った。
「姉貴、救世主って感じじゃん! 私の月見草、病気に勝ったよ!」
「ルナ、調子に乗ってるね。でも、ほんと、みんなの笑顔、最高だよ」
私は笑いながらツッコんだ。
トムが涙目で私の手を握った。
「エリス様、家族が助かった……。このポーション、命の恩人だ。どうやって感謝したら……」
「トムさん、様はいいよ。みんなが元気なら、それで十分。月見草とルナのおかげだから」
ルナがムッとして空中でくるりと回った。
「姉貴、私だけでいいよね? 月見草は私の力だし! ほら、夜光蝶で勝利のキラキラやっちゃうよ!」
ルナが指を振ると、夜光蝶が市場の通りへ舞い上がり、光の花の輪を作った。
通りがキラキラと輝き、病気の重い空気が薄れる! 子供たちが窓から顔を出し、歓声を上げた。
「エリスお姉ちゃん、キラキラ! 魔法だ!」
私は笑顔で手を振った。
市場の平民たちがポーションを手に集まり、感謝の声を上げた。
「エリス、ありがとう! 体が楽になったよ!」
「エリスの癒し水、命の水だ! 家族、みんな元気になった!」
カイルがポーションの瓶を抱え、ニヤッと笑った。
「エリス、ポーション、めっちゃ効いてる! 俺、もっと運ぶぜ!」
マリアが穏やかな笑顔で頷いた。
「エリス、下町のみんな、笑顔になってる。この庭、ほんとに希望の光だね」
その時、レオンが市場の通りを駆けてきた。
金色の髪が月光に輝き、王子の紋章がチラリと見える。
「よお、エリス! 噂聞いたぞ! ポーションで下町救ったって!? 俺、癒しの王子として参上!」
レオンが大げさにポーズを取り、ニカッと笑った。
私は腰に手を当ててツッコんだ。
「レオン殿下、でも、来てくれてありがとう。ポーション、飲んでみる?」
ルナがレオンの頭上を飛び、ジトッとした目で言った。
「昼間の王子、遅刻かよ。私のキラキラ、ちゃんと見なよ。姉貴のポーション、最高だろ?」
レオンがハハッと笑い、ポーションの瓶を手に取った。
「ルナ、すげえ光だ! エリス、この癒し水、王宮にも持ってくぜ! 病気、全部ぶっ飛ばそう!」
夜光蝶が市場の通りをキラキラと舞い、フクロウの鳴き声が響く。
月見草の香りが漂い、トムの家族や下町の平民たちの笑顔が月光に輝く。
この幻想的な庭でのスローライフは、ポーションの力で下町を救い、また一歩進んだ。




