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月見草の令嬢は王宮庭園で花開く  作者: 海老川ピコ
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第19話:ポーションの美容効果

 フィンの無邪気なドジと笑顔が庭を温めた昨夜、月見草の癒しが子供の心にも届くことを実感した。

 今夜は満月の月見茶会。

 月見草ポーションが下町で「肌がツヤツヤ」と噂になり、貴族の商人が大量注文を求めているらしい。

 癒しのポーションを金儲けに使われるのは嫌だけど、みんなの笑顔を増やしたい。

 ルナの光と月見草の香りで、庭を癒しの場に保とう。

 私は小さな木のテーブルに月見草のハーブティーとポーションの小瓶を並べ、花壇を見た。

 月見草がキラキラと輝き、夜光蝶がふわふわと舞う。

 フクロウの「ホウ、ホウ」が遠くから響き、庭は幻想的なオアシスだ。

 私は花びらに触れ、指先がふわりと光る。

 ルナがふわっと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスがキラキラ輝く。


「姉貴、ポーションが噂になってるって? 人間、肌ツヤツヤとか騒ぐの、めっちゃ欲深いね」


 ルナはジトッと目を細め、夜光蝶を指さした。

 私は微笑み、ティーポットを整えた。


「ルナ、欲深いって言うけど、みんなが喜んでるならいいよね。ポーションは癒しのため。商人に渡すより、無料で配りたいな」

「ふっふー、姉貴、聖女すぎ! でも、金儲けも悪くないよ? 私の月見草、もっとキラキラ広められるじゃん」


 ルナはくるりと空中で一回転し、指をパチンと鳴らした。

 月見草の光が強まり、甘い香りが庭に広がる。

 夜光蝶がキラキラと舞い、フクロウの鳴き声が雰囲気を深める。

 私はポーションの小瓶を手に、胸をドキドキさせた。

 その時、苔むした階段から複数の足音が聞こえてきた。

 カイルの元気な声、マリアの静かな話し声、トムの低い声と子供たちの笑い声、そして重い靴音の貴族らしいざわめき。

 夜光蝶がふわりと月見草の光に溶け、フクロウの鳴き声が一瞬止まる。

 私はテーブルから顔を上げ、入り口を見た。


「エリス、庭、今日もキラキラだな! トムと家族、連れてきたぜ!」


 カイルがぼさっとした髪を揺らし、笑顔で手を振った。

 トムが妻と二人の子供、リナとマイを連れて頷く。

 マリアが疲れた笑顔で続く。

 豪華な服を着た貴族の商人、エドウィンが杖をついて現れ、商人仲間を二人連れている。

 彼が庭を見回し、目を輝かせた。


「エリス殿、噂の月影の庭、素晴らしい! ポーション、美容効果抜群と聞き、ぜひ取引を!」


 私は少し緊張しながら微笑んだ。


「エドウィンさん、ようこそ。カイル、マリア、トムさん、家族のみんなも、ありがとう。ほら、座って、ポーション入りのハーブティー飲んでみて」


 私はティーを注ぎながら、皆をテーブルに案内した。

 トムの娘、リナが目を輝かせ、月見草を指さした。


「エリスお姉ちゃん、このお花、キラキラ! お茶飲んだら、肌ツヤツヤになるの?」

「リナ、ふふ、癒されるのが一番だよ。ツヤツヤはオマケかな。ほら、飲んでみて」


 私はリナにティーを渡し、微笑んだ。

 マリアがティーを手に、ふっと息をついた。


「エリス、この香り、ほんと癒される。リナの言うツヤツヤ、ほんとみたいね。肌、なんかいい感じ」


 トムがティーを飲み、目を細めた。


「エリス、こりゃいい。家族みんな、疲れが取れるよ。噂通り、肌も調子いいな」


 エドウィンがティーを嗅ぎ、一口飲んで驚いた顔をした。


「ほう、これは! 確かに美容に効く! エリス殿、このポーション、市場で高値で売れる。大量注文をさせてくれ!」


 私は少しムッとして、穏やかに答えた。


「エドウィンさん、ありがとう。でも、このポーションは癒しのために作ってるんです。金儲けより、みんなに無料で配りたいな」


 エドウィンが眉を上げ、杖をトンと突いた。


「無料!? エリス殿、商機を逃すのか? このポーション、貴族の間で大流行するぞ!」


 トムがムッとして、低い声で返した。


「商人、欲出すなよ。エリスのポーションは、俺たち平民の癒しだ。金で独占すんじゃねえ」


 空気がピリッとした。

 私は慌てて手を振った。


「トムさん、エドウィンさん、落ち着いて。月の前では平等だよ。ポーションは、貴族も平民も、みんなで分けて癒されるもの。ほら、もっとティー飲んで」


 カイルが花壇を覗き、呟いた。


「エリス、月見草、めっちゃ元気。ポーション、もっと作れるよ。みんなに配ろうぜ!」


 私は頷き、ルナに目をやった。

 ルナがふわっとテーブルの上に浮かび、ニヤリと笑った。


「ふん、人間の欲、めっちゃ面倒くさいね。姉貴、無料配布なんて聖女すぎ! 私の光で、癒しパワー全開にしてやるよ」

「ルナ、いいアイデアだよ。みんなの心、月見草で繋げよう」


 私は月見草に手を伸ばし、みんなを癒したいと願い、指先が光る。

 月見草の香りが強まり、庭が甘いベールに包まれる。

 ルナが指をパチンと鳴らし、夜光蝶が一斉に舞い上がり、光の「癒しの花」の幻を作った。

 庭が幻想的に輝く! 参加者が一斉に拍手し、リナとマイが歓声を上げた。


「うわ、キラキラ! エリスお姉ちゃん、すごい!」

「これは……! 美しいわ。エリス殿、ポーションも光も、ただものじゃないな」


 エドウィンが目を輝かせ、杖を握りしめた。

 トムの妻が微笑み、子供たちを抱き寄せた。


「エリス、こんな光、初めて見た。家族みんな、癒されるよ。ありがとう」


 私は胸がじんわりと温かくなった。

 転生前の花屋では、花を売るだけで精一杯だった。

 でも、この庭では、ポーションでみんなの笑顔を作れる。


「エドウィンさん、トムさん、みんな、ありがとう。このポーション、癒しのために無料で配るよ。月の前では、誰でも平等に癒されるんだ」


 エドウィンが少し渋い顔をしつつ、頷いた。


「ふむ、エリス殿の理念、わかった。少量でもいい、ポーションを分けてもらえるか? 市場で試したい」

「エドウィンさん、少量ならいいよ。でも、癒しを第一にね。トムさん、家族にもっと配ってあげて」


 トムがニヤッと笑い、子供たちを指さした。


「エリス、もちろんだ。リナとマイ、肌ツヤツヤって喜んでるよ。このポーション、宝だな」


 マリアが穏やかな笑顔で言った。


「エリス、ポーション、下町で配ってきたけど、みんな『エリスの癒し水』って呼んでるよ。子供も大人も、笑顔になってる」


 カイルが目を輝かせ、花壇を指さした。


「エリス、月見草、もっと増やそう! 癒し水、めっちゃ需要あるよ!」


 ルナがふわっと私の肩に降り、ニヤリと笑った。


「姉貴、聖女どころか救世主じゃん。私の月見草、癒しで王都制覇だ! でも、金儲けもちょっと考えなよ?」

「ルナ、商人みたいだね! でも、癒しが一番。みんなの笑顔が、私の宝物だよ」


 私は笑顔でツッコんだ。

 その時、レオンが階段を駆け下りてきた。

 金色の髪が月光に輝き、王子の紋章がチラリと見える。


「よお、エリス! 遅れたぜ! うお、ポーションの噂、俺も聞いたぞ! 俺、癒し水の宣伝大使になる!」


 レオンが大げさに手を広げ、ニカッと笑った。

 私は腰に手を当ててツッコんだ。


「レオン殿下、ただのお客でいいですよ! でも、来てくれてありがとう。ほら、ティー飲んで」


 ルナがレオンの頭上を飛び、ジトッとした目で言った。


「昼間の王子、遅刻かよ。私の癒しの花、ちゃんと見なよ。姉貴のポーション、最高でしょ?」


 レオンがハハッと笑い、ティーを手に取った。


「ルナ、すげえショーだ! エリス、このポーション、肌ツヤツヤより心が軽くなるぜ。癒し水、最高!」


 夜光蝶がテーブルの周りをキラキラと舞い、フクロウの鳴き声が庭に響く。

 月見草の香りが漂い、リナとマイの笑顔、エドウィンの感嘆、トムの感謝が月光に輝く。

 この幻想的な庭でのスローライフは、ポーションの美容効果で広がる笑顔で、また一歩進んだ。



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