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月見草の令嬢は王宮庭園で花開く  作者: 海老川ピコ
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第13話:ポーションの試作

 古文書で月見草が古代の特効薬だったと知った昨夜、癒しの使命に胸が高鳴った。

 今夜は満月。

 カイルが蒸留器を準備し、マリアも手伝いに来てくれる。

 ルナの魔法と月見草の力で、初めてのポーション試作に挑む。

 庭での作業が、癒しの夢をまた一歩進めるはずだ。

 私は小さな木のテーブルに月見草の花びらと簡易蒸留器を並べ、花壇を見た。

 月見草がキラキラと輝き、夜光蝶がふわふわと舞う。

 フクロウの「ホウ、ホウ」が遠くから響き、庭は幻想的なオアシスだ。

 私は花びらに触れ、指先がふわりと光る。

 ルナがふわっと現れ、銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスがキラキラ輝く。


「姉貴、ポーション作り? 気合い入ってるね。私の月見草、癒しパワー全開でいくよ」


 ルナはニヤリと笑い、夜光蝶を指さした。

 私は蒸留器をチェックしながら微笑んだ。


「ルナ、頼りにしてるよ。古文書に書いてあった蒸留法、試してみたい。癒し効果を最大にしたいんだ」

「ふっふー、姉貴、いいね。私の光で、花びらの効力、めっちゃブーストしてやるよ」


 ルナはくるりと空中で一回転し、指をパチンと鳴らした。

 月見草の光が強まり、甘い香りが庭に広がる。

 夜光蝶がキラキラと舞い、フクロウの鳴き声が雰囲気を深める。

 私は花びらを蒸留器にセットし、満月の光の下で作業を始めた。

 その時、苔むした階段から足音が聞こえてきた。

 カイルの元気な声と、マリアの静かな話し声。

 夜光蝶がふわりと月見草の光に溶け、フクロウの鳴き声が一瞬止まる。

 私はテーブルから顔を上げ、入り口を見た。


「エリス、蒸留器、持ってきたぜ。ポーション、完璧に作れるよ」


 カイルがぼさっとした茶色の髪を揺らし、簡易蒸留器を手に駆け込んできた。

 マリアがその後ろで、疲れた笑顔で手を振る。


「マリア、カイル、来た。ありがとう。ほら、準備できたよ。一緒にポーション作ろう」


 私は笑顔で二人を迎えた。

 カイルが蒸留器をテーブルに置き、目を輝かせた。


「エリス、月見草の花びら、めっちゃいい状態。満月の夜、絶好のタイミングだよ」

「カイル、さすが薬草オタク。マリア、疲れてるでしょ。作業しながら、香りで癒されてね」


 マリアが月見草を手に取り、ふっと息をついた。


「エリス、この香り……昨日より濃いね。なんか、頭がスッキリする」


 私は胸が温まり、ルナに目をやった。

 ルナがふわっとテーブルの上に浮かび、ニヤリと笑った。


「ふん、姉貴の魔法と私の光のコラボだよ。マリア、癒される準備しな。ほら、夜光蝶も応援してる」


 ルナが指を振ると、夜光蝶が一斉に舞い上がり、月見草の光と絡み合ってキラキラと輝いた。

 フクロウの「ホウ、ホウ」が響き、庭が幻想的に輝く。

 私は花びらを蒸留器にセットし、ルナの魔法を借りて蒸留を始めた。

 満月の光が蒸留器を照らし、甘い香りが濃縮される。


「ルナ、魔法で香りを強くして。カイル、マリア、火加減見ててね」

「姉貴、任せな。私の光で、ポーションの効力、MAXにしてやるよ」


 ルナが手を振ると、月見草の光が蒸留器に注がれ、香りがさらに濃くなる。

 カイルが火を調整し、マリアが花びらを追加する。

 夜光蝶が作業の周りを舞い、フクロウの鳴き声が静かに響く。

 私は胸をドキドキさせながら、蒸留器から滴る液体を見つめた。

 透明なポーションが小さな瓶に溜まっていく。


「できた……! これが月見草のポーション。めっちゃいい香りだ」


 私は瓶を手に、目を輝かせた。

 カイルが覗き込み、興奮した声で叫んだ。


「エリス、すげえ。ポーション、絶対やばい効果あるよ。俺、試飲してみたい」

「カイル、ちょっと待って。まず香りチェックだよ。マリア、試してみて」


 私は瓶をマリアに渡した。

 彼女がそっと香りを嗅ぎ、目を閉じた。


「エリス……この香り、ほんとにすごい。体が軽くなって、ストレスが消えたみたい……」


 マリアの笑顔に、胸がじんわりと温かくなった。

 カイルが我慢できず、瓶を手に取った。


「俺も。ちょっと飲んでみる。古文書に特効薬って書いてあったし」


 カイルがポーションを一口飲み、顔をしかめた。


「うっ、苦い……! でも、なんか、体が軽い。魔法みたいだ」

「ふっふー、味は二の次、効果が大事。姉貴のポーション、完璧じゃん」


 ルナが空中でケラケラ笑い、夜光蝶がカイルの周りを舞った。

 私は笑いながらツッコんだ。


「ルナ、味にもうちょっとこだわろうよ。カイル、大丈夫? でも、効果あるなら……!」

「エリス、めっちゃいい。このポーション、下町に配ったら、みんな喜ぶよ」


 カイルが目を輝かせ、シャベルを握りしめた。

 私はポーションの瓶を見つめ、胸の奥で決意が膨らんだ。

 転生前の花屋では、花を飾るだけで癒しを届けた。

 でも、このポーションなら、もっと直接的に王都の皆を助けられる。


「カイル、マリア、このポーション、下町に配ろう。癒しの場を、庭からもっと広げたい」

「エリス、最高。俺、運ぶの手伝う。蒸留器、もっと改良するぞ」

「エリス……私も手伝うよ。このポーション、みんなに届けてあげたい」


 マリアが穏やかな笑顔で頷いた。

 ルナがふわっと私の肩に降り、ニヤリと笑った。


「姉貴、聖女どころか救世主って感じ。私の月見草、もっと輝かせて、王都を癒しで埋め尽くそうぜ」

「ルナ、調子に乗ってるよ。でも、ほんと、このポーションで、みんなの笑顔が増えたらいいな」


 私は笑顔でツッコんだ。

 夜光蝶がポーションの光に誘われ、キラキラと舞う。

 フクロウの鳴き声が庭に響き、月見草の香りが漂う。

 私はカイルとマリアと顔を見合わせ、胸の奥で夢が膨らんだ。

 この幻想的な庭でのスローライフは、ポーションの試作でまた一歩進んだ。



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