第12話:古文書の秘密
昨夜の庭でのひとときは、月見草の香りがマリアやカイルの仲間たちの心を軽くし、癒しの力を確かに感じさせた。
月女神スーラの花という神話に導かれ、私の夢はもっと大きく膨らんでいる。
今日はまた王宮図書館へ。
月見草の新たな秘密を探るため、カイルを誘って古い本を漁るつもりだ。
もし癒しの力をもっと広げられるヒントが見つかれば、王都の皆に届けたい!
「ふう、書類整理の合間に図書館は疲れるけど……月見草の秘密、絶対見つける!」
私は呟きながら、王宮の長い廊下をカイルと歩く。
カイルは作業着エプロンに小さなシャベルを手に、目をキラキラさせている。
図書館の重い扉をギィッと開けると、埃っぽい本の匂いが漂う。
月光が窓から差し込み、本棚に淡い輝きを投げかける。
「エリス、この図書館、宝の山だよ! 月見草の秘密、絶対あるって!」
カイルが興奮して本棚に突進し、羊皮紙をガサゴソめくり始めた。
私はクスッと笑い、別の棚に目を向けた。
「カイル、熱心すぎ! でも、ほんと、なんかすごい発見できそうな予感……」
私は色あせた本を手に取り、ページを慎重にめくった。
すると、ボロボロの革表紙に「シルビア王国の薬草と錬金術」と書かれた古文書が目に入った。
心がドキッとする。
月見草のことが書いてあるかも! 私は本をテーブルに広げ、目を凝らした。
そこには、月見草が古代の流行り病の特効薬ポーションの材料だったと記されていた。
「うわ……! カイル、これ見て! 月見草、昔の特効薬だったんだ!」
私は興奮してカイルを呼んだ。
彼がシャベルを握りながら駆け寄り、目を丸くした。
「マジ!? 特効薬!? やばい、エリス、読んで読んで!」
私は咳払いして、ページを読み上げた。
『古の時代、月見草は月女神スーラの祝福を受け、流行り病を癒すポーションの主材料たり。花びらを蒸留し、満月の夜に調合せし時、最大の効力を発揮す』
私は読み終え、胸が熱くなった。
「月見草でポーション……! 昔の人も癒しに使ってたなんて、すごい!」
「エリス、めっちゃやばいじゃん! ポーションって……薬草オタクとして燃える! 俺、蒸留の道具、探してくる!」
カイルが拳を握り、図書館の奥に走り出した。
私は笑いながら彼を止めた。
「カイル、落ち着いて! でも、ほんと、この古文書、庭の未来に繋がるかも。私、ポーション作ってみたい!」
私は古文書を胸に抱き、目を輝かせた。
その時、ふわっとキラキラした光が本の上に現れ、ルナが現れた。
銀色の髪が月光に揺れ、白いドレスが図書館の光に輝く。
夜光蝶が本棚の間を舞い、遠くでフクロウの「ホウ、ホウ」が響いたような気がした。
「ふっふー、姉貴、いいもん見つけたね! 月見草のポーション、昔の人は私の花の力、ちゃんと知ってたんだ!」
ルナは得意げに胸を張り、空中で一回転した。
私は笑いながらツッコんだ。
「ルナ、鼻高すぎ! でも、ポーションの作り方、教えてよ! 古文書に蒸留って書いてあるけど……どうやるの?」
「ふん、姉貴、簡単だよ! 花びらを満月の夜に摘んで、蒸して、月の光で煮詰める! 私の魔法で、効力バッチリにしてやるよ!」
ルナがニヤリと笑い、夜光蝶が彼女の周りをキラキラと舞った。
私は古文書を手に、庭での作業を想像した。
転生前の花屋では、花を飾るだけで精一杯だった。
でも、この世界では、月見草で癒しの薬を作れるなんて!
「ルナ、カイル、ポーション作ってみよう。王都の皆に、癒しを届けたい!」
「エリス、最高! 俺、道具と花びらの準備、任せて! 満月の夜、完璧にやるぞ!」
カイルがシャベルを振り回し、目を輝かせた。
ルナがふわっと私の肩に降り、ニヤリと笑った。
「姉貴、聖女の次は錬金術師ってか? いいね! 私の月見草、ポーションで王都制覇だ!」
「ルナ、調子に乗ってる! でも、ほんと、ポーションで庭の癒し、もっと広げられるよね!」
私は笑顔で頷き、古文書を閉じた。
図書館の静かな空気に、月見草の香りがふわりと漂った気がした。
夜光蝶が本棚の間を舞い、フクロウの鳴き声が遠くから響く。
私はカイルとルナと顔を見合わせ、胸の奥で決意が膨らんだ。
「カイル、ルナ、満月の夜に庭でポーション作り、絶対成功させよう!」
「よっしゃ! エリス、俺、蒸留器の作り方、図書館で調べる! 月見草、めっちゃ輝かせるぞ!」
「ふっふー、姉貴と草バカ、いいコンビ! 私も夜光蝶でキラキラ演出、ガンガンやるよ!」
ルナがくるりと回り、夜光蝶が図書館の天井まで舞い上がった。
フクロウの「ホウ、ホウ」が静かに響き、月光が古文書を照らす。
私は古文書を手に、庭の未来を想像した。
月見草のポーションで、王都の皆が癒される。
そんな夢が、この古文書でまた一歩近づいた。
この幻想的な庭でのスローライフは、ポーションの可能性でさらに輝き始める。