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6.大きな家、小さな屋敷

 ミフォイに到着してから色々分かってきたことがある。

 見慣れない馬車が見合わない道を通ることに、領民は嫌な顔をしている。


 そうだよな。

 この町の領主は、領民達の反発により排斥されたわけだし、次の領主も目の敵にするよな。


「ライム様。私共は屋敷にお届け次第、デッセン公爵家に帰ることになっております。ですが、この領民の様子なら街に残った方が……」


「いや、帰ってくれていい。このまま、君たちが離れると領主は力を持たないと思わされて、話し合いが楽に進むかもだろ?」


「でずが……」


 言わんとしてることはわかる。

 話し合いにすらならずに最悪の場合、殺される可能性もある。

 でも、俺は騎士達には離れて欲しい。


「……君たちを巻き込みたく無いんだ」


 騎士達はその言葉に心打たれている。


「ライム様! 私たちはどこまでもお供いたします!」


「だから、帰れって言ってんだろ!!」


 本当に、俺の周りは話をきかないな!


「ライム様。屋敷につきました……」


 馬車を運転している騎士が、声をかける。

 急についたな。

 今まで、外を見てたけど、それらしきものは見えなかったが。


 降りると、見えてなかった理由がわかる。

 そこにあったのは、少し大きい家。

 今まで、俺が生活してきた公爵家とは比べ物にならない小さな家。


「すいません! 元々あった家は反乱の時に燃やされてしまい、このような仮の館しか用意されていなくて……」


 それなら仕方ない。

 ていうか、俺1人でここまで追放されたんなら、この家でも普通に広いけどね。


 二階建てで、庭もついてる。

 スローライフにはもってこいだな。


 庭の方で、メイドさんが洗濯物を干している。

 その最中、俺に気づいたのか身だしなみを整えて、こちらに向かってくる。


「あれは?」


「一度、国の預かりとなったので、国から仮屋の管理者が送られてきております。多分あの方かと」


 なるほど。

 綺麗な黒髪が肩ほどあり、キリッとした目をした、美人な方だ。

 できるメイド感満載で、動きに気品がある。


「いらっしゃいませ。国から派遣されこの家の管理をしております、トレスと申します。貴方様が領主代行様でございますか?」

 

「ライム・デッセンだ。これからよろしく頼むよ」


 軽い挨拶を済ませて、これから中の案内とか色々としてもらいたいが、まだやらなければならない事がある。


「何後ろをついてこようとしている? お前達が帰らないと公爵家から苦情がこちらにもくるし、お前達自身にも悪いことしか起きないぞ」


「ですが、心配なんです」


「お前達が残る方が迷惑だ。分かってくれ」


 その言葉で、騎士は帰らざる終えなくなり、すぐにこの場を後にする。


 申し訳ないが、事実だ。

 父であるスラグからの命令が絶対の立場にある中、それに逆らうと言うのはあってはならないことだ。


「領主代行様、お聞きしたい事があるのですが……」


「なんでも聞いてくれて構わないよ」


「その、従者は誰もいないのですか? 私も管理を引き継ぐように言われているのですが……」


 あー、そりゃそうか。

 普通、貴族の後継者として派遣されるだろうとかんがえるだろう。

 それなのに、従者が1人もいない事がおかしいよな。


「それは中に入って話そう。案内を頼むよ」


「……かしこまりました」


 不信感を抱いているな。

 そう言う人と話す時は何も包み隠さない方が得策だな。

 これ以上不誠実に行くのは良く無い。


 家の案内と言っても、正直そんなたいそうなものでは無かった。


 玄関、リビング、キッチン、ダイニング、風呂場、トイレ、書斎が一階にあり、二階は4室部屋がある。


 大きい家ではあるが貴族が暮らす家では無いな。


 案内が終わった後、書斎に案内されて、話し合いになる。


 俺はソファーに深く腰をかける。流石に旅の疲れがでてる。

 トレスは机を挟んで俺の目の前に立つ。


「その、聞いていいことかは分かりませんが、なぜ領主代行様はお一人でこの地にこられたのですか?」


「それは……」


 俺は包み隠さず自分に起きたことを言う。

 神に見放された子。

 自分を語るのに1番簡単な言葉だ。


 その説明を聞いて、同情したのか、哀れみのこもった目で見てくる。


「それは大変でしたね。これからこの地でどうされるおつもりなのですか?」

 

「んー。あんまり深くは考えては無いが、まずはこの地をよく理解している人達を集めて話し合いをしたいな。それくらいなら、俺の名前を使えばできるだろ?」


「はい……でずが、あまりよろしい案とは言えないかもしれません。この地の者は貴族をよく思っておりません」


「だからそこだよ」


 その言葉を聞いてクエスチョンマークを頭に浮かべている。

 

 俺だって会うのは大丈夫かと考えたさ。

 でも、ここでは会うべきなんだ。

 貴族が嫌いなのはわかるが、その貴族がどう言う人物なのか教えてあげればいい。

 恐るるに足らない人物だと思わさればいいんだよ。


「それは分かりましたが、その、私は引き継ぎをしないと……」


「それは申し訳ないが、もう少し待ってくれ。ここで、使用人を採用してからになる」


「なら、それまでは私がお供させていただきます。何なりとお申し付けくださいませ」


「では、ここにこの村の代表者たちを呼んでくれ」


 さて、始めますか。

 俺のスローライフな生活のための第一歩を……

 

 

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