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12.お早い再開

「お兄ちゃん! これなんて読むの?」


「これはね――」


 俺はルルに本を読み聞かせながら、2人の帰りを待っていた。


 こんなまったり過ごせるのはいいことだが、これからのことも考えないとね。

 一応、計画は頭の中で立ててはいるのだが、それはもう少し先になるかもなー。


 部屋のドアが勢いよく開く。


「ライム様! レベル5に到達しました!」


 元気よくシュシュが入ってくる。

 そして、ルルに近づき抱きしめている。


 それを見ながら、トレスは入ってきて俺に報告する。


「早速、神官を呼ばなければいけませんね。この町にはいないので連れて行く方が早いかも知れません」


「え!? いないのか?」


 このミフォイは神官さえいないくらい田舎なのか。

 どこにでもいるものだと思っていたが。

 正直、何を得たのかもうわかっている自分にとっては、その時間は無駄に感じる。


「――俺が鑑定しようか?」


「鑑定をお持ちなのですか!?」


 トレスはその言葉に驚きを隠せない。

 女の子2人はその声に少しビビっている。


 多分、トレスは騎士たちから俺のスキルの話は多少なりとはきいているだろう。

 だから、こそ俺の不遇さでおかしく感じているんだろう。


「まー、説明めんどくさいから省くな。――じゃ〈鑑定〉」


 俺は左目を閉じて発動する。


 ――――――


 シュシュ

 女 12歳

 lv2

 MP:10

 str:8

 def:5

 spd:8

 int:11

 luck:8

 dex:10


 スキル:〈短剣術lv2〉〈水・風賢者lv1〉(〈魔力索敵lv0〉


 ――――――


「シュシュ! お前の新しいスキルは〈水・風賢者〉だ!」


 シュシュと、トレスは目を飛び出しそうな勢いで驚く。

 そりゃ、そうだ。

 そのくらい賢者というのはスゴイものだ。


「待ってください! わ、私が賢者ですか?」


「あぁ、俺を疑うのか?」


 いえ、と尻すぼみな返事をする。

 トレスも、まだ完璧に思考が追いついておらず、彼女らしくなくあたふたしている。


「さて、ここでシュシュに問おう。――このまま、俺の元で仕えるか、もっと高待遇なところでいい暮らしをするか」


 そう。

 俺は初めからこれだけを考えていた。

 これが計画を進められない原因。

 でも、選択は人それぞれだ。

 もし、離れて行ったとしてもそれを否定はしない。


 俺は自由を掴みにここにきた。

 なら、人の自由を縛るのは俺としてはよくない。


 トレスにも同じだ。

 今は、人がいないから残ってもらっているが、そのあとは自分次第だ。


 ――もしかしたら、みんないなくなるかも知れない。


 だけど、俺の思いは曲げない。


「――わ、私はライム様についていきます。初めは、何で私をと思いましたが、ライム様には人を見る力があります。なら、この人について行った方が。それに、ルルもとても懐いていますし」


 気づかなかったが、ルルが俺の手を握っている。

 まだ小さいのに俺の悩みが伝わったのか?

 本当に聡い子だな。


「シュシュが残るのなら、いや、そんなことは関係なく私も残ります。まだ、教えなければいけないことや、やらなければいけない事がたくさんありますので……」


 トレスは落ち着きを取り戻したのか、いつもの冷静な態度を取り戻している。


 よかった。

 本当に2人とも残ってくれて。


 これで、俺も次の段階へ進む事ができる。


「よし! じゃあ、君たちに俺の考えを述べたいと思う――っ!」


 と、計画を話そうと思っていたら、玄関のドアを叩く音が屋敷に響き渡る。


「間が悪いな。トレス対応を頼む」


 はい、と彼女は迎えに行くが、戻ってきたらなんか変な顔をしている。


「領主代行様。あなた様へのお客様らしいのですが、一階の部屋に通しております」


 俺の客?

 しかと、トレスが名前を言わないということは、この町のものではないのか?


 シュシュとルルを部屋に残して、下に降りるが、そこにいたのは懐かしいとは言えないくらい短い別れだったものがいた。


「坊ちゃんっ!!」


 そこには、白髪の初老だが、まだまだ若々しい老執事、ルイフがいた。


 俺に抱きつこうとしてくるが、流石に男に抱きつかれても嬉しくないので、レベルアップで上がった身体能力で軽くかわす。

 ルイフは名残惜しそうにしているが、早く話を進めてもらおう。


「どうして、ルイフがここにきたんだ?」


「……私は、坊ちゃんが家を出された後、キノ坊ちゃんの家庭教師を務めていたのですが……」


 なるほど。

 俺とキノを比較した言葉を多く出した事が、キノの逆鱗に触れたらしい。


 まー、キノは俺のこと敵視しているからね。

 それに、ルイフは俺のことに対して相当甘いから、2人が噛み合わなかったのも容易にわかる。


 でも、これは好都合だ。

 ルイフは、公爵家を出されてまず俺の元に向かったということは、俺に対する信頼は揺らぐものではないはずだ。


「ルイフ、色々わかった。なら、お前もここで暮らしていくことでいいか?」


「良いのですか! また坊ちゃんのお側に支えられることが嬉しくてたまりません!」


 なぜか、泣き始めるルイフを尻目に、先ほどできなかった話をしようと、2人を下に下ろしてもらう。


 よし、じゃあ始めよう。

 これから俺が自由に暮らすための第一の計画を!

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