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11.トレスの思い

 レベル上げは順調なのか、俺にはわからない。

 俺は無条件に経験値を得ることができるが、シュシュや他の人たちは、危険を掻い潜り経験値を限られた時間で集めないといけない。


 シュシュに至っては、メイドの引き継ぎの為に色々なことを教わりながらだ。

 だから、3日経ってもレベル5に上がることはない。

 てか、レベルはまだ3だ。


 初めのうちは上がりやすいという話は聞いていたのだが、それは戦闘ができるやつだけっぽいな。


 かくいう俺は、放置によってレベルがまた1上がっていた。

 正直、同世代の子の中ではトップクラスにレベルだけは高いという自負がある。


 ま、強さは別としてね。


「トレス。あの子はどう?」


「そうですね。器用で物覚えも良くはあります。ただ若いですね。経験などが浅すぎて応用ができそうにないです」


 なるほど。

 さすが本職さん。

 でも、若いって言ってるけど君もまだ相当若いよ。


「レベル上げの方はどう?」


「この町の近くの森で低級な魔物を狩らせてはいますが、順調とはいきませんね。短剣という武器もあって、危険な場面も多いですし……」


 短剣はリーチの短さから間合いをかなり近づけないといけない。

 熟練度が低いと被弾する割合も多くなる武器だ。


 だからこそ、安全をとって弱い魔物を無理なく倒すという方法をとってるのだろう。


「正直、戦闘面に関しては才能はあまりないです。メイドとしての教育をした方が……」


「いや、何としてでも鍛えるんだ」


 トレスはその言葉を聞いても、どうしても辞めさせたいと思ってるらしい。

 だが、次のレベルで得られるスキルは破格だ。

 それを獲れば彼女の才能は見直されるだろう。

 だからこそここはもう一度押さないと!


「俺は常々感じてるんだ。なぜこの国はレベル1での才能で人を判断するのかと。だっておかしいだろ? まだ生まれたばかりの赤ちゃんには、未来の才能しか期待しないだろ? それと一緒さ。俺は今だけは見ない!」


 ふん。これは良いことが言えたかな?

 そう思っていると、トレスは表情を変えずに、いや少し表情が強張っている。


「……わかりました。そうおっしゃられるのでしたら続けます」


 それだけ言い残し部屋を後にする。


 うわー。こえー!

 あの表紙、絶対怒ってたよ!

 生意気言うんじゃねーぞって物語ってたよ。


 やっぱ、屁理屈だけ並べてるだけじゃダメだ。

 作戦を練るか。


 ソファーで横になり、寝ながら今後の作戦を立てるとしよう


 ――――――――

トレスside

 

「シュシュ。あなたは今日から仕事を減らして構いませんから、レベル上げを重点的に行ってください」


 シュシュは洗濯物を干していた手を止める。


「え!? 私もしかしてうまくできていませんか!!」


「違います。領主代行様はあなたにレベルを上げて欲しいそうなので……」


 シュシュは自分の手を見つめ、暗い影を落とす。


「私には闘う才能がありません。それに怖いんです。あんなに近づかないと倒せないなんて……」


 その通りです。この子に闘う才能はありません。

 でも、領主代行様がおっしゃられた言葉を聞いて弾くわけにもいきません。


「わかります。私も怖くないかと言われたら、怖いです。でも、レベル5まで頑張りましょう。そこまでやれば領主代行様も納得して頂けるはずです」


「……わかりました」


 明らかにテンションを落とした彼女を前にして、本当にこれが正しいのか不安になる。

 でも、


 彼の言った言葉は本当に素晴らしいものだった。


 あの若さで、才能は今だけではなく、未来まで含むものだと言われたのだ。

 でも、それを押し付けずに、レベル5まで面倒を見てやれとだけ。

 だから、頑張ってみるのは最初だけ。

 それ以降は自分がやりたいようにさせるという自主性まで考えておっしゃられたのだ。


 正直、私はあまり良い噂を聞かないデッセン公爵家の子息が来る時点で舐めていた。


 ただ、才能は家では決まらない。

 わかっていたはずなのに、見せつけられているようです。


 だからこそ、私はあの人の命令に今は従う。

 レベル5を迎えた彼女がどのように成長するのか、どうしても気になる。

 彼には何が見えているのか?


 経験値を上げるときは簡単。

 危険になったら私が間に入るだけ。


 それでも、レベルが上がるにつれて、その危険も少なくなってきて今じゃ補助入らないまでに成長している。


 ――そしてあれから4日後、ついにその瞬間がやってきた。


 「――やりました! これでレベル5です!」


 シュシュが喜びを露わにしている。

 かと、思えば疲れて膝から地面に倒れる。


 闘いに対して乗り気でもないのに、頑張っていたから変に緊張して疲れていたのだろう。


 多分彼女にとっては、命令だから。領主代行様に従わなければ捨てられると思って頑張っていたのでしょう。


 ――私は、あのお方がそうではないとわかっていますが。


 この1週間で、私は家事やレベル上げを手伝いました。

 だから、今後の私についても考えなければ。


 初めは引き継ぎだけしたら、皇宮に帰ろうと考えていましたが、今は違います。


 ――あのお方の、未来を共に見てみたい。


 そんな風に考えてしまいます。

 本当に彼は何者なんでしょうか?


 フフッと、トレスは笑いながら、シュシュに肩を貸して、領主邸に帰るのであった。

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