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10.やっぱ妹ってかわいいもんだね

 その言葉を聞いて、身構えるシュシュ。

 それを見て、サリーマが近寄ってくる。


「彼女は、自分の父に売られそうになったところを妹と2人で逃げてきた子たちです。だから、人を信用する事がむずかしいのでしょう……」


 なるほどね。

 でも、ここにいるのは良くない。

 才能としても、衛生でもね。


「妹も一緒に連れて行こう。仕事もつける。少ないかもしれないが賃金も出そう。だからおいで、悪いようにはしないからさ」


 その言葉を聞いても妹を心配してか、気を許してくれない。

 でも、妹を心配してるからこそ、わかっているのだろう。

 ここがいかに良くない場所かを。


「もしついていけば、ルルを大切にしてもらえますか?」

 

「ああ。俺の妹のように大切にしよう。――まだ、俺の名前を名乗ってなかったな。俺はミフォイ領主代行ライムだ」


 その言葉を聞いて驚いた表情をする。

 でも、領主という立場に不信感があるのも確かだろう。

 だが、それ以上に妹を大事にする姉が隠せない。


「私はシュシュです。ライム様、よろしくお願いします」


 よし。これで、新たな従者候補は得られたな。

 この子の才能は計り知れないものもあるし、dexもレベルの割には高い。

 いいメイドさんになってくれるかな?


 俺は遠い道のりを帰っていく。

 ただ、ルルはまだ6歳。

 俺とサリーマの2人で交互におんぶしたりして、連れ帰る。


 ただ、帰るまでの周りの目は痛いね。

 こんな見窄らしい子がいるだけで、変な目で見られるのに、最近ついたばかりの領主が、女を屋敷に連れ帰ろうとしている。

 あまり、言葉にするといい状況ではないな。


 生活苦を通り過ぎようとした時、ある女性が見える。


「お疲れ様です、領主代行様。――この子が私の後釜でいらっしゃいますか?」


 トレスはシュシュを吟味しているが、あまり気に入ってはないと様子だな。

 それは人としてではなく、この子が務まるのかという不信感だろうね。


「ああ。この子の教育を頼むよ。――それと、トレスは戦闘できるよね?」


「は、はい。それなりには」


「なら、この子を鍛えてやって。後レベル上げも5までしてあげて。それまでなら簡単だろ?」


 レベルは5まで上げるのはそう時間はかからない。

 何故なら経験値量も少なく済むし、まず他の5の倍数より、4レベルあげればいいだけだからだ。


「かしこまりました。すぐにでも成果を出しましょう」


 やっぱ、戦闘できるだなー。

 ステータス見た時に、かなりレベル高そーだったから、もしかしてと思った。

 それに、こんな前領主が色々あった場所に普通のメイド送るはずがないよな。


 俺たちは家へと帰る。

 その途中サリーマは、


「アタシこの後合コンあるから、ここで失礼するわ。またねおぼっちゃまくん」


 うーん。いつものサリーマに戻ったなー。

 ま、どっちでもいいけどね。

 根が悪いやつじゃないってことは知れたし。


 そして、領主の家についた。


「――私たちはここに住むのですか?」


「ごめんな。領主邸と聞いてもう少し大きいのを期待しただろうに」

 

「いえ! 私たちはそもそも家すら無かったですから、それだけで本当に感動なんです」


 その言葉は俺の胸を抉る。

 こういう子達を少しでも減らせるように、変えていかないとな。


「シュシュとルルはお風呂に入りましょう。レディーに言うことではありませんが……」


「トレスさん。大丈夫です。ルル、水浴びしようか?」

「――うん」


 シュシュは物分かりのいい子だな。

 ルルは、何か緊張しているのか? それとも気の弱い子なのか?

 どうも怖がっている。


 トレスは2人を連れて、風呂場に連れていく。

 一応、この世界では、魔法石というものを使ったお風呂がある。

 まっ、魔法石もそこそこのねだんするからね、この子達にとっては本当に久しぶりの湯だったりするかも知れない。


 女の子のお風呂を覗きたい気持ちはあるが、子供には興味はない。

 それにトレスは覗いた瞬間気づくだろうからね。


 大人しく自室に篭っときますか。

 その間に何か、ルルの緊張をほぐす方法でも考えとくか?


 1時間ほど考えても、正直何も成果は得られませんでした。


 3人がお風呂を上がる。


「じゃあ、俺も入ってきますか」


 ひとまず、俺も今日一日中歩き回った汗を流そう。



 翌日、トレスはシュシュを連れてどこかに向かって行った。

 多分、修行のためだろう。


「家のことは帰ってから教えますので。その間、領主代行様は、ルルをよろしくお願いします」


 うーん。

 確かに、俺がその特訓について行っても邪魔になるだけだからな。


 それに、この領地のことでしっかりとできることもないから、子守りくらいしか確かにすることはない。


「ルル。何して遊ぼっか?」


「………………」


 あー。

 俺はすごく警戒されてますね。


 でも、弟のキノでそーいうのは慣れてるし、キノに至っては目の敵みたいなのだった。

 本当にそれに比べたらマシだな。


 よし、それならやり方を変えてみるか。


「シュシュは、お姉ちゃんは凄いね。君を守りながらここまで生活してたんだから」


 その言葉で耳をぴくぴくとさせる。

 ん? これは効いてるか?


「それに可愛い。あっ! ルルも似てて可愛いよ」


「――そーなの。お姉ちゃんはスゴイの!」


 よし! かかったぜー

 固かった口からやっと言葉を聞く事が出来た。


「そーだね。でもこれからもっとすごくなるんだ! 俺が保証してあげるよ」


「ほんとなの? お兄ちゃん!?」


 おー!

 キノからも一度も呼ばれたことのないお兄ちゃんを聞けるなんて。

 いいものだねお兄ちゃんって言葉!


「うん。ルルもお姉ちゃんに負けないように頑張らないとね」


「――でも、ルルは何も出来ないの」


「大丈夫さ、ご飯をいっぱい食べて、いっぱい遊んで、いっぱい寝て、お兄ちゃんと一緒にいたら、立派なレディーになれるさ」


 それだけで?

 みたいな可愛い顔をしている。


 そー、それだけさ。

 お兄ちゃんと一緒に遊んで暮らそう!


 と、盛り上がり過ぎないよう自制しといて。


「よし! じゃあお話を聞かせてあげよう!」


 ルルは目を輝かせて、ワクワクしている。


 それは俺も昔された勇者と魔王の物語。

 ルルはその中でも、勇者の仲間のお姫様が好きらしい。


「お姫様はお姉ちゃんで、お兄ちゃんが勇者様!」


「じゃあ、ルルは何なの?」


「ルルはねー。まおうさま!」


 2人でゲラゲラと笑い合う。

 あー、こんな生活がずっと続けばいいのになー

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