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3.

大聖堂に一人の男性が入ってくると、ざわざわしていた貴族達はしんと静まり返る。


その男性は祭壇に立つと、一番前にいるグレイスに気付きニコッと笑いかけた。


いつもの教会の神父様であった。


グレイスも微笑みを返すと、すぐにラッパの音が鳴る。


そして、パイプオルガンの音が鳴ると入り口からラピスが入ってきた。


絹のように滑らかな白のタフタ生地に金の刺繍がしてあるタキシードを身に纏っている。


堂々とバージンロードを歩いている姿に、来賓達は目を奪われているようだ。


祭壇の前に立つと、シュッと背を伸ばして入り口を見据えている。


内心緊張しているのだろうが、そのような事を他人には見せないように振る舞っている。


グレイスがふとクリスの方を見ると、キラキラとした目でラピスを見ていた。


『クリスは本当にラピスお兄様が好きね』と思い、口元が緩まないように気をつけた。


再びラッパの音が鳴り、華やかなパイプオルガンの演奏に合わせて入り口の扉が開く。


ミシェルの登場だ。


光沢のある純白のシルクサテンのドレスで、胸元や袖、ヴェールには銀糸の繊細なレースがあしらわれている。


ミシェルがたくさんの時間をかけて選び抜いた衣装なのだろう。


来賓も今度はミシェルに目を奪われていた。


『お姉様、本当にお美しい……』


とグレイスは思った。


父である国王と腕を組んで歩いているその姿に、皆の視線は釘付けである。


するとミシェルの周りが急にキラキラと輝き始めた。


昨日、教会で出会った精霊達がミシェルの上から光のシャワーを浴びせていたのである。


光の精霊たちの祝福である。


そして、違う色の深緑の光のシャワーも降りてきた。


それは海の精霊たちの祝福。


ミシェルは海の精霊にも気に入られていたのである。


その事は全く知らなかったグレイスはとても喜んだ。


そして、ラピスを愛しい眼差しで見ながらミシェルは長いバージンロードを歩き切った。


国王である父の腕から、ラピスの腕へとミシェルが移動するときに


「娘を頼みます。…この国の未来も」


と国王の口からコソッとラピスに言うと、


ラピスは静かに頷いた。


そして2人は祭壇の前にいる神父様の正面に立った。


「太陽が祝福を運び、月が未来を照らすこの日。

 神々と精霊の御前にて、ふたりの魂がひとつに結ばれんとしています。

 今ここに、ラピス・カイリス殿、ミシェル・ディアリス姫を迎え

 聖なる誓いの儀を執り行います」


神父様の言葉がシンとした大聖堂の中に響く。


そして、ラピスの方を向き、誓いの言葉を言い始める。


「ラピス・カイリス殿。

 あなたは、この方を喜びと悲しみの時に共にし、

 光の中でも闇の中でも、その手を取り、

 心を寄せ、愛し抜くことを誓いますか?」


「はい、誓います。」


ラピスの強く凜とした声が大聖堂に響いた。


「ミシェル・ディアリス姫。

 あなたは、この方を祝福と試練の中で支え、

 その笑顔を守り、想いを分かち合い、

 永遠の時を共にすることを誓いますか?」


「はい、誓います。」


ミシェルの優しい声が大聖堂に響く。


「世界の精霊よ、神の祝福よ。

 このふたりの心に光を注ぎたまえ。

 風は優しく頬を撫で、水は澄んだ絆を映し、

 炎は揺るがぬ意志を照らし、大地は揺るぎなき歩みを導かん。

 今、ここに神々と精霊、ここに集いし者たちの祝福のもと、ふたりは魂の契約を果たしました。

 ラピス・カイリス、ミシェル・ディアリス。

 今日というこの聖き日が、この世界の歴史に刻まれました。

 今、ふたりを“真なる夫婦”として宣言いたします。」


神父様の締めの言葉が終わると同時に大聖堂は大きな拍手に包まれた。


そして、父である国王が前に出てきた。


国王の表情は厳かでありながら、温かい眼差しがラピスに注がれている。


そして祭壇の隣にある神聖な台座の上に置かれた、特別な小箱を手に取った。


その小箱をラピスの前で静かに開くと中には煌びやかな金の装飾が施され、中央には、代々受け継がれてきた王家のブルーダイヤモンドがあった。


それは、ディアリス王国の象徴であり、王位継承の証となる神聖な宝物。


並外れた輝きを放いていた。


「ラピスよ」


国王の声は、 大聖堂全体に低いながらもはっきりと響いた。



「今日、そなたは愛するミシェルを妻とし、新しい道を歩み始めるのだ。

 そして今、ディアリスの未来を託す証として、このブルーダイヤモンドをそなたに託す。

 この“偉大なる石”に宿る“古の力”と共に、民を愛し、この国を揺るぎなき意志で守り抜け。

 この輝けるダイヤと共に、揺るがぬ誓いを胸に抱き続けよ。」


国王は、王家の記憶を秘めた小箱を、ラピスの手に固く託した。


ラピスは、深くひと息吸い込み、唯一無二のそれを手にすると、まるで時が止まったかのように、その重みと輝きを静かに見つめると、


「謹んでこれをお受けいたします。このブルーダイヤモンドに誓いましょう――。

 民と国のため。

 愛するミシェルと共に、我がすべての生涯。

 揺るがぬ意志をもって捧げることを。」


ラピスの言葉は、揺るぎない決意に満ちていた。


ミシェルは、彼の横で、その力強い横顔を誇らしげに見つめている。


参列者たちから温かな拍手をおくられた。


その音は静かに広がり厳かな空気の中に柔らかな祝福を添えていた。


神聖な青いダイヤモンドは、新たな王の決意を象徴するように、静かにきらめいていた。


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