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2.

翌日・・・


「グレイス様、おはようございます。お支度に参りました。」


いつもの調子でメイドが声をかけ、扉を開け部屋に入る。


グレイスはベッドから動く気配がない。


カーテンを開けると、陽の光が部屋全体を包み込んだ。


机の上には、普段は丁寧に閉じられているはずの魔本が埃をかぶった古めかしい魔本から、真新しいものまで、様々な魔本が開かれていた。


熱心に書き込まれたであろうメモが数枚、丸めて床に転がっている。


グレイスは、何か気になることでもあったのだろう。


「んもーっ。起きて、く・だ・さ・い!!!」


「ヨーピ…、起きるから待って・・・」


メイドのヨーピが声をかけると、グレイスは布団の中で背伸びをし、ゆっくりと起き上がった。


目を擦りながら、おはよう、と言う。


「グレイス様、しっかりなさいませ。今日は大切な日ですよ」


ぼんやりとした瞳でヨーピを見つめた後、グレイスは微笑んで頷いた。


すぐに目を覚ましたかのように体を動かしてベッドから出る。


グレイスは少しだけ伸びをしてから、いつもの元気な笑顔を浮かべた。


「ありがとう、ヨーピ。さあ、急がないとね。」


グレイスは急いで支度を始めながら、ミシェルの結婚式に向けた自分の役目を思い描いていた。


姉を支え、国のためにできることを精一杯する。


それが今、自分にできることだと感じている。


他の使用人が魔本を片付けているのを見ながら、グレイスは心の中で静かに決意を固める。


今日は大切な日だ。


最高の形で姉を祝ってあげるためにも、しっかり準備を整えないと。



・・

・・・



身支度の終わったグレイスが食堂に向かっていると、前のほうに歩いている人を見つける。


「おはようございます、ミシェルお姉様!」


「おはよう、グレイス。」


グレイスとミシェルのドレスの胸のあたりには代々継承されているダイヤモンドのブローチを付けている。


今日のような特別な日に身につけるのが習慣となっているのだ。


「お姉様におかれましては今日も見目麗しく…!眼福です!」


「私もこんなに大好きな妹にそう言ってもらえるなんてうれしいわ。」


そうしているうちに食堂へ着いたので、扉を開けると中にはラピスとアレックスの姿があった。


「2人とも、おはよう!」


楽しそうにしているグレイス。


「おはよう、グレイス」


「おはようございます、グレイス様」


一緒に来ていたミシェルの姿を見るとラピスが近づいて行き、


「今日はもうすでに最高の一日だ」


と声をかけた。


「あら、まだ今日は始まったばかりなのに」


扇子で顔を隠しているが、ミシェルがとても嬉しそうにしているのがグレイスに伝わり心が弾んでいる。


ちょうどその時、扉が開くと王様とお妃様が入ってきた。


「おはよう、みんな。朝食にしようか。」


王様の一言でみんなが席に座ると、食事が運ばれてくる。


グレイスは朝から夢心地な気分で朝食を口に運んでいた。


ミシェルもその様子をみながら、ふふふ、と微笑んでいる。


皆で朝食を終えた後、これからが本番である。


自室に戻ったグレイスは用意してあった式典用のドレスに着替える。


鏡の前でメイクを施してもらい、全身を確認する。


「うん。良い!みんな、お疲れ様」


ヨーピや他の使用人に声をかけた。


すると、扉の外からアレックスの声がした。


「グレイス様、お迎えに参りました」


アレックスである。


彼は今日、グレイスの護衛を任されているのだ。


グレイスは扉を開けてアレックスの姿を見ると、顔が少し赤くなった感覚になる。


式典用の衣装に身を纏ったアレックスは容姿端麗どころでは無い容貌であった。


「今日は、しっかりとお願いしますね?」


グレイスは恥ずかしさを隠しながら、アレックスに声をかける。


「勿論です、我が姫」


2人は式典が行われる大聖堂に向かう。


大聖堂の巨大な扉が開かれると、息をのむほどの光景が広がっていた。


高くそびえる石柱


色鮮やかなステンドグラス


そして無数の装飾が、神聖な雰囲気を醸し出している。


そこには華やかな衣装を身にまとった1000名近い貴族たちが、ザワザワとしていた。


グレイスは一番前の席へ行き、母の隣に座る。


アレックスは近くの壁に控えている。


「お母様、緊張するわ……」


「グレイスが緊張してどうするんです?」


と母は微笑みながら答える。


グレイスの頭に付いているティアラを見ながら…懐かしそうに目を細めた。


「ミシェルが生まれた時を思い出すわ。

 あなたと同じデザインのティアラ。

 女の子だと分かってから中央の飾りにピンクダイヤモンドを付けたのよ。

 それはあなたが生まれた時も同じだったけれど…

 どうしてか、グレイスには絶対イエローが似合うと思ったの。

 だから、あなたのティアラの飾りはイエローダイヤモンドなのよ」


そう、この国は代々受け継がれているものがある。


それは7つのダイヤモンド。



レッドダイヤモンド

ブルーダイヤモンド

イエローダイヤモンド

グリーンダイヤモンド

ピンクダイヤモンド

ホワイトダイヤモンド

ブラックダイヤモンド



この7つのダイヤモンドが存在する。


1000年前にこの国が建国された時に、原初精霊(世界が生まれる前から存在している精霊)からの贈り物としていただいたものだ。


それぞれ精霊の力がコピーされているダイヤであり、


レッドは炎、ブルーは空、イエローは愛、グリーンは海、ピンクは心、ホワイトは光、ブラックは闇

の力を持っている。


「あなたが愛の力を受け継ぐなんて、いつかきっと素敵な人と過ごしていく事になるのかもね?」


母はニコッと笑い、正面を向く。


グレイスは嬉しそうに頷いた。


入り口に立つ灰色のローブの人物が、じっとこちらを見ていた事に気づかずにーー。


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