最悪な出会い
成也さん。あなたとの最初の出会いは最悪だった。
浮気した元彼を咎めていると、怯えたように逃げ出す元彼。
当然、追いかける。だが、裏路地を出た瞬間に、ヒョロガリにぶつかった。
そのせいで、元カレは綺羅びやかに光る繁華街のネオンの中へ姿を消した。
怯えるヒョロガリの髪を掴み、裏路地に引き摺り込む。
そして、元彼への恨みをぶつけるように、この男に罵声を浴びせる。
ただ、震えて怯えながら謝るこの男にイライラが止まらず。
気付けば包丁を握っており、男の左腕を刺していた。
「もし、このことを警察に言ったらどうなるかわかる? 家族も友達も皆死んじゃうよ」
痛みに醜く歪み、怯えた顔がたまらなかった。
まるで、B級映画の主人公。
その怯えた表情を俯き隠そうとするので、無理やり髪を引っ張り隠させない。
あの時の表情は今でも覚えている。
唯一の後悔はあの顔を写真に収めなかったこと。
もう会うことは無いと思っていた。
——だが、運命の再会を果たす。
ある日駅に向かっていると、しつこいナンパ男たちに捕まった。
あまりのしつこさに裏路地で刺殺してやろうかと思った。
すると、突然——知らない男が私を守るように立ちはだかる。
彼の小さな背中が大きく見えて。我かんせずに足早に去っていく、周りの大人と違って見えて。
私を守ろうとする、その背中がかっこよかった。
しかし、なぜ助けに来たんだと思うほど弱かった。
ナンパ男たちにボコボコにされる小さな背中。
正直、幻滅していた。あのかっこいいと思った気持ちを返してほしかった。
パトカーのサイレンが鳴り響き、逃げていくナンパ男たち。
一応、お礼を言っとくかと顔を覗き込むと、以前に刺したヒョロガリ。
思わず後退りしてしまう。
「大丈夫ですか? あなたが殴られなくてよかった」
気付いていないのか? だが、聞くと思い出されそうで聞けなかった。
腫れた頬を歪ませて笑う顔が印象的で。照れくさそうにしているのが可愛くて。
この瞬間——心を奪われていた。
連絡先を聞くと思い出されそうで怖かった。
それでも、我慢出来なかった。
“間 成也” 。気づけばあなたのことばかり考えていた。
お礼を兼ねた初めての食事。
ずっとモジモジしている彼が可愛くて。守ってあげたいと思って。
家に帰るとまたデートに誘ってしまう。
デートプランを考えておくと、メッセージでは強気になるあなたが可愛かった。
けど、それから連絡が来ない。
以前聞いた、あなたの家の最寄り駅で1日中あなたを待った。
見つけた時は嬉しかった。
ずっとあなたを見つめて。また、連絡してくれると信じて。
すると、あなたは深夜に路上で怪しい薬を買っていた。
フードを被った店主に尋ねると、ニヤリと笑って始まる “嫌なことを忘れる薬” の説明。
ショックだった。刺されてもなお、愛してくれる男だと思っていた。
けど、あなたはただ、薬によって忘れているだけだった。
それでも、あなたは私の心の中に居続けた。
——もう、あなた以外の男に興味はなかった。
11/22~11/24で全話投稿されます。
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