六.エピローグ
山中はぼんやりと車から湖岸を眺めていた。ルアーが故障していたのか、幸い彼女は軽傷で済んだ。しかし、完全に壊れたそれは以前のようには機能しなくなっていた。
「でも、なんであんなものが琵琶湖に沈んでたんっすかねぇ。飛行機から落っこちたとか」
岸本が隣でぼんやりとつぶやいた。
「馬鹿が、そんな事あるわけないだろ」
「でも、どっかから入ってきたのは事実っすよ。幽霊みたいに突然現れるわけないっすから」
岸本の意見に山中も首をひねった。
「まあ、確かにそうだな。誰かが持ち込んだことには変わりないが。いったい……あ!!」
ふと、ある可能性に気づいてぞっとした。岸本が訝しそうな顔をして山中を見た。
「どうしたっすか? 原因がわかったんすか」
ああ、山中は苦しそうな表情で答えた。
「一年前、あのガイドにルアーの説明を受けた後、何かを言っていたのを思い出した。プレゼントがどうかとか。ガイドには荷物の管理も任せていた。もしかして、知らない間に俺の鞄に忍ばせていたのかもしれない。帰国後、アメリカで購入したルアーを知り合いに配った。誰かが釣りで使って、引っ掛かってそのまま捨ててしまったんじゃ」
「まじっすか……まあ、大きな事故にならなくて不幸中の幸いっすね」
そうだな。情けない自分に山中は頭をかいた。
※
岸本はルアーをじっと眺めていた。
(まさかこれにそんな秘密があったなんて)
山中からもらったバスクラシックのお土産。一つはすぐに木に引っかかってそのまま捨ててしまった。あの少女が持っていたルアーとそっくりだった。だが、まったく同じタイプがもう一つあったのを思い出した。こちらはまだ新品。大事に使えばまだまだ充分もつはずだ。
「一回優勝すれば5千万円。こんなうまい商売はないな」
岸本は大事そうに枕の上に置いて、電気を消した。その夜、ぐっすりと寝込んだ岸本の頭上がぴかぴかと光った。
〝Attention、Attention.It will explode automatically……〟