表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の閃光レイ  作者: ゆっちん先生
第1章
4/8

第3話 執念に生きる男

突然変異者(ミューテスター)】がこの世に生まれるようになったのは、今からたった78年前のことらしい。 

 第七次世界大戦が終結を迎えたのも…ちょうどその頃だった。

 

  ——


 首の皮で刃を弾いて見せた少年が、拳をクエンサーの腹へと叩き込む。10歳ほどの少年が繰り出した一撃だったのに、ドゴッと鈍い音が響いて、クエンサーは体をくの字に曲げて膝をついた。

 拳が灰色に変色している。

(物体を【強弾性】にする、あるいは【強弾性系統の体】に変質する【突然変異者(ミューテスター)】だったら、刃は弾けない。むしろ、強弾性の肉体には刃は弱点だ。生身より通る。——推測がまるで違った…)

「君は…【弾性変質】——物体の弾性をコントロールできる能力の【突然変異者(ミューテスター)】だね?」

「……」

 少年は答えない。一切見向きもせず、膝をつくクエンサー目掛けて拳を振り下ろす。

 僕は、灰色に変色した拳がクエンサーの頭頂部に直撃する寸前、自動式拳銃(オートマチック)の引き金を引く。…打ち終えると同時に、横っ飛びしていた。

 少年の首がガクンと、不自然なほど向こう側に引っ張られ…引き戻される。二倍の速度となった弾丸が射出されるも、僕はすでにその場を大きく退避している。

 振り下ろされた拳は、先ほどのような威力は発揮せず、子気味いい音を響かせたのみであった。拳の色は——肌色。

「やっぱりだ…。君の【弾性変質】の力は、物体の弾性を自在にコントロールする。弾性を『強めれば』ゴムのようにしなやかに、弾性を極限まで『失くせば』鋼鉄のように強固になる。けれど、変質できるのは一度に一か所のみ。それも狭い範囲だ。その証拠に、君は三度とも、肌の狭い範囲しか変質させていなかった」

「仲間は——やらせねぇ‼」

 少年の(まなじり)が、キッと引き絞られる。

 だらんと垂れた右腕の袖から、鞘入りの短剣が飛び出した。銀色の刃が引き抜かれ、陽光を反射する。

「なるほど……体は小さいくせに、やるね!」

「——っ!!」

 僕は自動式拳銃(オートマチック)を5連射させつつ、横へ素早く回避行動をとった。

 少年が顔をかばう様に構えた左腕が、弾丸三つを跳ね返し、僕の頬と左腕、右足をかすめていく。さらにもう一つの弾丸は、少年の頬をかすめ——最後の一弾が左足の皮を抉った。

 少年の体は一瞬大きく傾くも、勢いを殺さず、歯を食いしばって短剣を振り上げる。

 僕は——ニタリ、と頬を釣り上げた。

「僕さ——戦争も殺しも、嫌いなんだ」

「うるさい!」

 銀の刃が接近する。

 僕は自動式拳銃で受け止め、同時に蹴りを繰り出す。

 お互いの足が衝突した。

 金属音——そののち、鈍い痛みが走り抜ける。鈍器を蹴ったような衝撃だ。骨にヒビが入ったかもしれない。

「戦場で笑顔を見せるやつが——戦争嫌いなワケないだろ‼」 

「……憧れてる女の子がいるんだぁ」

 少年が離れた位置から、袈裟切りを繰り出す。短剣の斬撃が届くわけもない遠距離。しかし——刃がしなるように伸びた。【強弾性】を付与したのだ。

(そうくるよね!)

 予測通りだった。

 素手の左腕を、思い切り振りかぶる。袖からはじき出されるのは、鞘入りの短剣。柄を握りしめると、勢いそのままに鞘が飛んで、銀色の刃が日の元に晒される。

 一閃——。

 伸びた【強弾性】刃の、3分の1から先を切り払った。

「憧れの【金色の閃光】に近づきたい。そう思って、今日まで鍛錬を積み重ねてきたからね!」 

「黙れッ——!」

 飛び上がった少年の拳が灰色に染まる。

 短剣で受ける。

 回し蹴りが迫る。

 自動式拳銃(オートマチック)で受け流す。

「弾丸も刃も通らない君の能力は、確かに厄介だ。けど…武器で受け流せる」

「お前の攻撃だって、僕には通らない‼」

「うん」

 距離を無くしての苛烈な連撃。能力で全身が武器になりうる少年に対して、僕は短剣と自動式拳銃(オートマチック)のみで防御をとり続けなければならない。

 戦闘の技量が上であっても、手数の差で防戦一方に陥る。

 いずれ先に一撃をもらう側は、明確だった。

 けれど——少年は目の前の敵に夢中になるあまり、背後への警戒を怠っている。

「——⁉⁉」

「しッ——‼」

 少年が振り返ろうとしたときには、もう遅い。

 音もなく走るクエンサーが、アサルトライフルを振り上げる。——その先に取り付けられた銃剣が閃いた。


「まっ…一対一だなんて、誰も言ってないからね。これ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ