表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キウ   作者: Dariahrose
修行
7/24

第六章 ~ ”気のせい” ~

蝋燭の火を凝視する修行が始まって、3日目になった。


今日から、修行用の蝋燭が少し太くなった。

蝋燭が太くなったと言う事は、それだけ蝋燭に火がついている時間が長くなると言うこと。


おじいさんは、蝋燭を持って来た。

キウは、部屋の真ん中に座り、蝋燭の前に鎮座した。


大分(だいぶ)、目が慣れて来た気がする。 』


さすがに、3日目ともなると、恐怖感が薄れて来た。


『今日は、大丈夫。 』


キウは、昨日の天井まで長くなった火を思い出していた。

今日は、怖くないので昨日の様に、おじいさんの家を危険にさらすようなことは無いと思った。


後ろで、おじいさんが戸を閉める音がした。

再び、耳を塞いでいるような静けさだ。

キウは、少し太くなった蝋燭の太さを指で確かめながら持ち上げた。

それを、火の方に持って行き、芯に火をつけて 小さな皿の上に固定した。


しばらくすると、再び左手の辺りに冷たい風が左手に絡まり始めた。

そして、おじいさんが言った言葉を再び思い出していた・・。


『お前は恐怖を火に転嫁しちおるんじゃ。 火は火じゃ。 火自体は(なん)にもせん。 しかし、火は簡単に念の乗り物になるんじゃ。 』


『火が、“念”の乗り物になるのであれば、きっと“風”も乗り物になる・・。 』


キウは、自分自身の恐怖を押さえる力がまだ足りないからだと思った。


しばらくすると、冷たい風は再び後ろの方に移動して、後ろで、カサカサと音をたて始めた。

キウは、音には全く気を取られずに、蝋燭の火に集中した。

今日は、蝋燭の火をうまく操作出来ていると、自信すら湧いて来ていた。


ふっと、音が止んだ。

気配が、ぬ~っと天井の方から、蝋燭の向こう側に降りて来た。

その、何かは、そこでじっとしてる?


ばちん!!


「しまった!!! 」


蝋燭の火がはじけた。

キウが、ちょっと気を抜いた瞬間、恐怖が心に入って来たからだ。


蝋燭の向こう側の、“キウの気のせい“が、す―――っと、近付いて来た。

近付いて来たと感じるだけだと、キウは自分に言い聞かせた。


ぬ――――――・・・。


火を見つめる、キウの視界の端に、人の手の様な形が、2つ入って来た。

ごつごつした、節張った大人の男の手のような形だ。

それらは、音も立てず、す―――っと、ゆっくり近付いて来る。

まるで、何かを掴もうとしているかの様だ。


キウの、再び額から冷や汗が流れ始めた。

キウは、心の中で自分に、”気のせいだ、気のせいだ・・。”と、言い聞かせていた。


『捕まれる! 』


と、思った瞬間、それは、再び天井を伝って、後ろの方に降りた。

また、カサカサと音がし始めた。

だんだん、音が大きくなる。

カサカサ、ではなく、まるで猫が木を引っ掻いているような音になった。


どん!!!


急に、戸が大きな音をたてた。

す―――っと、静かに戸が開いた音がした。


『おじいさんだ・・。 』


その何かの気配は、おじいさんの気配と共に消えていった。


それ以来、その“気のせい”が、蝋燭の修行中に、再び現れることは無かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ