第三章 ~ 旬魔京 ~
三月程、時が過ぎた。
キウは、ようやく立ち上がれるようになった。
まだ、骨の折れていた所が痛い。
でも、無理にでも動いた。
掃除も、巻き割も出来るようになったし、囲炉裏で、だご汁の作り方も覚えた。
キウは、おじいさんから、一時でも早く、魔封士について、キウの知らない事を聞きたかった。
そして、修行をして、波旬だろうが何だろうが倒せるくらいに強くなりたかった。
だから、早く力持ちになりたくて一日中、無理にでも体を動かした。
その夜、
おじいさんは、キウの心を知ってか知らぬか、こう話を切り出した。
「キウ、いくつになった? 」
「13です。 」
「そうか。 わしや、おまえの婆さんが修行を始めたのも、そのくらいじゃったかのう・・。」
キウの瞳が輝いた。
「明日から、お前に稽古をつけちやろう。 じゃがな、その前に、話さんばならんことがある・・。 」
「魔封士についてなら、婆ちゃんから聞いた。 」
「『魔』については、聞いたか? 」
「人が違う世界に旅立つ時、光る魂は天国にいって、暗い魂は地獄に落ちるんでしょ。 時々、暗い魂は、何かの力で、この世界に降りて来て、悪さをする。 それが、『魔』なんだって婆ちゃんが言ってた。 」
「大体そんなとこじゃのう。 人の魂は、乗り物である体から離れると、“優しさ”やら、“いつくしみ”やらの、『愛』の部分と、“恨み”やら“嫉妬”やらの、『非離』」の部分に分かれる。 『愛』の部分はお釈迦様やら神様のところに行くんじゃ。 その後、お釈迦様やら神様の所に留まるものもおれば、この世にまた生を頂いて降りて来る者もおる。
『非離』の部分は地獄に行くのが通りじゃった。 だがな、近頃、何故か、この世に留まって人を襲うものが増えて来ちおるらしいんじゃ。 そいつらは、お互い集まって固まって、力を増し 城を作った。 お前も見たじゃろう。 黒い門をくぐった所にある、あそこにあるんじゃ。 あの薄黒い、毒を吐く地平線の向こうに城が建っちおるらしい。 本当か嘘かは知らんのじゃが、何か強い恨みを持った魔術師が、『魔』を集めて作った世界じゃ無かっち言う氏もある。 が、わしには分からん。 」
キウは、唾をのんだ。
おじいさんは、続けた。
「あの世界は、旬魔京ち言ってな、『魔』の気が集まる所に、あの門が現れる。 あの門をくぐらなければ行けん場所なんじゃ。 そしち、あん門が、いつ、何処に現れるんかは、わしら人間にはわからん。 」
「・・・。」
「それから、あん門は、ただの門じゃない。 あれは、波旬の暗羽烏の式神が集まって出来ちおるんじゃ。暗羽烏と言う鳥は、烏よりも魔を乗せやすい。それを、首から下を土に埋めち、三月の間、飲まず食わずにさせる。 生き残った者の首を刎ね、骸を木に吊るし、野ざらしにする。 恨みの念が一番強くなった時、呪文で再びこの世に式神として降ろすんじゃ。 それが、厄烏じゃ。 『魔』は、厄烏を飛ばして人の世の様子を監視したりもするんじゃ。 厄烏は一見、烏と見分けがつかないが、見慣れると、その羽から暗黒の欠片と煙が出ているのが見えるようになる。 それに、やつらは、旬魔京の匂いがする。 」




