第二十二章 ~ 観音様 ~
その人は、まるで、何かを、完全に集中して観察するかの様な瞳で、雄紀を見つめていた。
雄紀は、見世物になっている様な気持ちになって、少し嫌悪感を抱いた。
そのとたん、その人は話し始めた。
「それは、やめた方が良い・・。 命取りになる。 心は、常に波1つない、海の様に保っておくのが良い。 」
キウは、海を見たことが無い・・。
そう思ったとたん・・。
「そうか・・。 海とは、地平線の向こうの異国まで広がる池である。 」
その人は、身動き一つ、瞬きもせず、相変わらず観察するように、キウを見つめた。
「誰だ!? 」
キウは、心の中で思った。
「人は、私を、龍頭観音とか、騎龍観音菩薩とか、読んでおる。 」
「観音様!? 」
キウは、声を上げた。
「そうだ・・・・。 」
相変わらず、その観音様は、キウを観察していた。
「・・ど、どうして、そんな風に見るんだ? 」
「お前が、面白いからだ。 」
「面白い!? 」
キウは、ちょっと、戸惑った。
「それも、やめた方が良い。 命取りになる・・。 」
「・・・・。 」
キウは、何をして良いのか分からなくなった。
心を読まれている。
何も感じることも出来ない!?
「あ! 龍は!? 龍! 」
キウは、辺りを見回した。
観音様と入れ替わるように、龍が消えた。
「龍は、隠れておる。 」
「隠れてる!? 」
「龍は、怒っておるんだ。 」
「怒ってる? 」
「そうだ・・。 」
「そうなの!? 」
「お前は、何でもひそみに倣うのぅ・・。 」
「龍は、何を怒っているの? 」
「さぁな・・。 お前が、心も体も強くなったら、龍自身が教えてくれるであろう・・。 」
観音様は、少し目線を下げて、遠い目をした。
「観音様は、何でここに来たの!? 」
「龍に呼ばれたからだ。 」
「何で、龍は隠れてるの? 」
「・・・・。 」
「龍に、何をして怒らせたの? 」
「・・・・。 」
「・・・・。 」
「は~・・。 私が、龍の言うことを聞かなかったからだ。 」
「どんなこと? 」
「・・・・。 」
「それから、話してないの? 」
「そうだ。 」
「・・でも、龍から呼ばれたの? 」
「そうだ。 」
「なんで、龍は、観音様を呼んだの? 」
「お前が、婆さんの夢を見たからだ。 」
「鶯? 」
「鶯。 」
観音様は、笑った。
「龍! どこにおるんだ! な~んだ、人を呼んでおいて・・。 」
「・・観音様って、人なの? 」
キウは、観音様に聞いた。
「人だよ。 」
観音様は、キウに答えた。
キウは、川の中の奥の方に、キラッと光るのをみた。
川の中に入って行って、その光るものを手で触った。
すると、ギロッと目が現れて、龍になった。




