第二十一章 ~ 鶯? ~
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キウは、再び飛び起きた。
「あれ・・? 」
キウは、川の辺りで、仰向けに大の字に転がっていた。
しばらく、何が起きたのか分からない。
キウは、敷布の上で、婆ちゃんと話していた。
婆ちゃんは・・・・、蝋燭が、ジッと音を・・・。
キウは、急いで、提灯を見た。
蝋燭は、まだ、長さがある。
と、言うことは、そんなに時間が経っていないはず・・・・。
キウは、傍に立ち尽くしている、龍に気が付いた。
「・・何が起きたんだ? 」
「絶入したんだ。 」
「絶入? 」
「気絶して、ひっくり返ったんだ。 」
「・・・・ そうなの? 」
「婆さんには、会えたか? 」
「え? ・・鶯。 」
「鶯!? 」
「ほ~ほけきょう・・。 婆ちゃんが、鶯って・・。 」
「あぁ・・、法華経か・・。 婆さんめ・・。 」
龍は、下を向いて、頭を左右に振りながら笑った。
「また、観音を呼ぶのか・・。 」
「観音? 観音様の事? 」
「そうだ。 お前の婆さんは、観音を連れておった。 」
「婆ちゃんは、神様を連れてたのか!?」
「大義を果たす者には、大概、観音やら、“王”が付くのやらが、付いておる。 」
「そうなんだ。 」
「大義を果たすと言うことは、並大抵では出来ない。 命を落とすかも知れない様な状況を、何度も潜り抜けなければならん。 だから、お守りが付くんだ。 」
「そうなんだ。 」
「他に何か言っておったか? 」
「“ほけきょう”と、心の中で唱えながら、薬指で、目と目の間を触るって。 」
「ああ・・。 私の上に、お前が乗るんだ。 」
「どういうこと? 」
「これからは、もっと厳しくする。 お前は、一時でも早く、私と、同化しなければならない。 」
「はぁ。 」
「いずれにしても、早く直せ。 ひどい毒気だ。 臭くてかなわん・・。 」
「ごめんなさい。 」
龍は、だまって、キウの傍に来た。
そして、キウの頭のてっぺんを舌の先で舐めた。
すると、キウには、周りが金色に光り始めた様に見えた。
「龍! 今度は、何が起きているんだ!? 」
金色の光は、辺りを包んで、周りのものが何も見えなくなった。
しばらくすると、光は、少しずつ、落ち着いて行った。
やがて、元に戻った。
キウは、龍が居たところを見た。
すると、そこには、龍では無く、美しい、光る布を纏った、光る人がいた。
その人からは、炎の端に現れるような宙で消える、小さな、金色の粉が待っているように見えた。
「・・・・! 龍は? どこですか? 」
その人は、にっこり微笑みながら、キウを見つめた。
そして、ゆっくりと歩いて、キウから少し離れたところに立った。




